最近のトピックス

カリシウイルスについて(ELISAについての話題もまとめて)


堺市衛生研究所 田中智之


 カリシウイルスのトピックスについて、次の三点について述べる。日米ウイルス専門部会でのカリシウイルスについては、中込先生が述べられる。また2)のZoonosisについては、話題提供の恒光 裕先生がより詳しく述べられると思われる。3)については、昨年の本研究会で武田直和先生が詳しく報告されているが、その後の話題を提供する。

1) 診断方法
Norovirusの診断方法には、電子顕微鏡観察、抗原検出ELISA法、RT-PCR, Real time PCR法などがあり、感度、特異性、経費, 測定時間、測定検体数などには一長一短がある。" Laboratory diagnosis of norovirus: which method is the best ? Rabenau HF et al" によると、
  Sensitivity: PCR 94.1%, TEM 58.3%, ELISA 31.3%
Specificity: TEM 98.0%, ELISA 94.9%, PCR 92.4%
で、どの方法も疫学検査などに適しているが、診断には少なくとも二つの方法の同時使用を推奨している。我々の開発したELISA法の現状・進行状況についても述べる。

2) Zoonosisとしてのカリシウイルス
ブタ、牛のnorovirus(NLV)はすでに報告されている。bovine enteric caliciviruses(BECs)では、Jena, NA-2がNorovirusに、NB-BECsがSapoviruses/Lagovirusesに遺伝子学的に近いとされている。RT-PCR法を用いた検出方法の構築とヒトカリシウイルスとの相関についてSaif, LJらの報告、また、Bridger, JCらの報告があり、この結果ウシカリシウイルスはヒトGI/GII genogroups に次ぐgenoroup Ⅲとして分類されている。Clarke, INらはJenaウイルスに対するウシ抗原/抗体疫学をドイツで行い、抗原保有率8.9%, 抗体保有率99.1%と言う結果を報告している。

3) ABO-H型物質のその後について
(1) Norwalk virus が血液型によって感染性が異なるデータ(左半分)。

NV noninfectedNV infectedSe+Se-
AsymptomaticSymptomatic
O431/50/ 65/50/29 (%)75O
A2211/53/67/47/4253O
B4060/87/0/13/2643O
AB1000/ 0/100/ 0/3OND
Estes/MacDonald/OursBaric R. et al

(2) secretor(Se+), non-secretor(Se-)の状態によるNorwalk virus感染状況 
(上の表右半分)

4) その他
(1) Norovirus の予防には、VLPsのワクチン、ORF2組み込みtransgenic potato等がある。マウスノロウイルスを用いたKarst SMらの報告では、シグナル伝達性転写因子(signal transducer and activator of transcription 1;STAT l)依存性の自然免疫がノロウイルス感染抵抗性に必須であるが、T,B細胞依存性免疫はそうではないことが分かった。STAT1分子の同定はまだであるが、同定されれば、ヒトの感染予防にも情報をもたらすかも知れない。
(2) ノロウイルスのORF 1にtrans activity があるかもしれないという報告がある。 以上の点について、話題提供いたします。


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