衛生微生物技術協議会第24回研究会は平成15年7月10日(木)〜11日(金)九州大学医学部百年講堂にて開催された。下痢症のシンポジウムは2日目に3題のテーマについてディスカッションされた。
1.カリシウイルスの分子疫学 感染研ウイルス2部 片山 和彦
ヒトカリシウイルスであるNorovirus及びSapovirusは実験室内でのウイルス増殖系がないために、ウイルス検出にはRT-PCR法による遺伝子増幅による検査法が使用されている。
増幅された遺伝子はその配列を明らかにすることによって更に詳細な分類、感染経路の追求等に使用できるので、衛研においても遺伝子解析が出来るようにと、簡単な解析方法について紹介された。
解析には国立遺伝研(DDBJ)のホームページを利用し、Freeのソフトウエアを使用した方法が紹介された。解説内容は懇切丁寧で、クラスタリングについてその決定のための基礎的な解説があった。
2.Alphatron type NV について 大阪市大神経ウイルス感染症学 勢戸 祥介
NVはG1とG2の2つのGenogroupに分類され、さらにいくつかのサブグループに分類されているが、既存のG2のサブグループ間よりも大きく離れたAlphatron Typeと呼ばれるグループの存在が報告されていたが、大阪市内の集団食中毒事例から我が国では初めてAlphatron Type のウイルスを検出したとの報告があった。
3.リアルタイムPCR法を用いたNV検査について 堺市衛研 内野 清子
リアルタイムPCRを用いて2002年8月から2003年4月にかけて河川水9定点及び下水の流入水と放流水からNVの検出及びウイルス量の測定を試みた。
河川水では8月は検出されなかったが、10月〜2月にかけて検出され、最もウイルス量が多かったのは2月の2.7×104コピーであった。定点別には住宅の多い都市部の定点から高頻度に検出された。
下水からは流入水では2月〜3月が最も多く、4.3〜6.6×104コピーのウイルスが検出され、この時期には放流水からも200〜300コピー検出された。下水処理場はかなり古いもので、放流水の消毒には塩素を使用し、紫外線照射装置はなく、浮遊物の除去施設も充分ではないとのことであった。