ロタウイルス研究の現状について、昨年の下痢症研究会での報告以後に出版された論文から抜粋して報告する。要点は以下の通り。
1. ワクチン、免疫
世界ワクチン機構(GAVI)とワクチン基金が300万ドル(3年間)のロタウイルスワクチン開発プロジェクトを採用した。
RRVおよびUKのsingle gene (VP4 geneがP1AあるいはP1B由来) reassortant が調製された。
VP7がヒト由来G5, G8, G9, G10の単一リアソータントがRRVとUKの間で作成された。
人工粒子(VP2/6)と免疫刺激複合体(ISCOM)の経口投与は、弱毒Wa株でのプライミング後の防御に有効である(ブタ)。
人工粒子(VP2/6)とQS-21、CT、LT-R192Gの接種は、有効である(マウス)。
コレラトキシンBサブユニットとNSP4の融合タンパク質のジャガイモでの発現(オリゴマーの形成)。
大豆由来トリプシンインヒビターは下痢を防御する(マウス)。
不活化RRVと脂質アジュバント(MPL, L3)の筋注は防御能ある(マウス)。
低体重新生児に対する抗ロタウイルス免疫グロブリン投与は、無効である。
下痢症患児にNSP4に対する広い抗体反応がある。
2.疫学
非定型のロタウイルス株の検出:G6P[14](ハンガリー)、G12(インド)、G1P[4](米国; 41%)、G8 (ナイジェリア、ギニア)、G2P[6]、G8P[1] (ナイジェリア)、G6P[6] (ベルギー)、non-G2P[4]、P[6] (韓国)、G3(韓国、ヤギ)
G9の地球規模での分布の拡大(イタリア、ギニア、ガーナ、)があるが、地域により異なる。G9P[6](アフリカ)
G4、G3とG9の間に交叉反応(RT-PCR)がある。
B群ヒトロタウイルスの検出(バングラデシュ)
C群ヒトロタウイルスの検出(スペイン
ピコビルナウイルスの検出(ブラジル、ウシ)
無症状での成人からのロタウイルスの排泄が院内感染に関与する。
老人病棟でのロタウイルス感染の集団発生がある。
3.増殖
シアル酸を含む分子にVP8が結合し、次いで、インテグリンα2β1と関係し、さらに、インテグリンαvβ3、Hsc70と相互作用し、吸着、侵入が成立する。
NSP4のアミノ酸No.85-123は、ER 停留に関与する。
亜鉛イオンがVP9の集合と安定性に関与する。
ロタウイルス遺伝子の翻訳後制御は個々のmRNAの翻訳効率による。
siRNAによるVP4遺伝子の特異的阻害がある。
NSP5がVP2と相互作用し、パッケージングに関与する可能性がある。
Rab5とPRA1がVP4の局在と輸送に関与する。
4.病原性
ロタウイルス抗原、牛乳由来カゼインと網膜S抗原(PDS)の間に、交叉抗原があり、自己免疫疾患である網膜炎の原因となり得る。
インターフェロン誘導能欠失のStat1ノックアウトマウスの実験系で、成熟マウスでの免疫反応は劣るが、乳飲みマウスでの下痢誘導やウイルスの増殖には影響はなかった。
髄液中にロタウイルスRNAを検出する。
ロタウイルス下痢症児に、IFN-γが有意に高い。TNF-αが下痢の重症度と関連する。