話題提供

感染症サーベイランスにおけるウイルス下痢症の患者情報と病原体情報


齊藤 剛仁 (国立感染症研究所感染症情報センター)


 1999年4月に施行された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」に基づいて定められた新たな感染症発生動向調査事業では、感染性胃腸炎は4類定点報告疾患とされ、全国約3,000の小児科定点医療機関からの患者が報告されることにより、動向が把握されている。感染性胃腸炎という診断名は、多種多様の原因によるものを包含する症候群であり、多くの細菌、ウイルス、寄生虫が本疾患の起因病原体となりうる。サーベイランスのための症候群名という色彩が強く、報告のための基準において病原診断は必ずしも必要とされていない。最近10年間の発生状況は感染症情報センターHP http://idsc.nih.go.jp/kanja/weeklygraph/gastro.htmlに随時更新されている。年によって疫学パターンは異なるものの、例年初冬から増加し始め、12月頃に一度ピークができた後、翌年の2月または3月頃にもう一度ピークができ、その後緩やかに減少するというパターンをとっている。

 一方、感染性胃腸炎からの病原体検出は、小児科定点の約10%が検査定点とされ、一部の患者から検体提供を受けた地方衛生研究所(地研)において病原検索が行なわれ、陽性例が当感染症情報センターに報告されている(病原微生物検出情報:IASR)。検出報告は、ウイルス性、特にSRSV、ロタウイルスが多く、一シーズンにSRSVが1,000件超、ロタウイルスが約500〜600件報告されている。SRSV、ロタウイルスの検出状況は当センターHP http://idsc.nih.go.jp/kanja/weeklygraph/gastro.htmlに随時更新されており、初冬はSRSVの検出報告が増加し、年明けより遅れてロタウイルスの検出報告が増加し始め、春先にロタウイルスがSRSVの報告数を上回り、以後減少していくというパターンが多い。

 感染症サーベイランスにおける発生動向調査の患者情報と、IASRに寄せられた病原体情報の把握状況について説明する。また病原体情報については、SRSV、ロタウイルスを中心として、年齢、臨床症状等ウイルスごとの特徴を比較する。


←Back   抄録目次   Next→
トップページへもどる