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「衛生微生物技術協議会、地衛研からの話題」
学校におけるNLV感染事例の再検証


堺市衛生研究所   田中智之


 NLVの感染原因は、食品由来によるものが高頻度である。また、それに関連して病院、老人保健施設、学校などの施設内感染が生じている。

 これまで、院内感染として植木(宮城県保健環境センター)ら、老人保健施設として斎藤(秋田衛研)ら多数の報告があるが、今回は学校での感染様式について、興味ある感染経路を今までの報告と併せて紹介する。

  1. 斎藤博之(秋田県衛生研究所)ら の発表によるもので、感染患児の嘔吐物を長時間放置していたためエアゾルによる空気感染が示唆される事例。
    吐物現場から離れるほど教室内の感染率が72%, 50%, 19%と減少した。
  2. 原 みゆき(神奈川県衛生研究所)らの報告によるもので、患者が多発した教室とそれに続いた3クラスではトイレと水飲場が近接し、廊下が汚れていたなど教室周辺の環境汚染がNLV胃腸炎の拡大を示唆する事例。
    掃除当番と当番以外の児童の感染率を比較すると全体に当番児童が高く、感染経路に一考を与えた
  3. 東方美保(福井県衛生環境研究センター)らの報告によるもので、学校での給食当番児童が感染児でそれによるNLV感染が見られた事例。
    当番児は嘔吐などの胃腸炎症状を呈していたにもかかわらず当番役を務めていた。そのクラスでは64%もの感染率を示した。検出されたNLV遺伝子は全て同一の塩基配列を示した。

 NLV感染に感受性の高い学童が、教室(学校)という限られた場でかつ活発なコミュニケーションをすれば、池に投げられた小石の波紋のごとく、感染拡大は目に見えている。感染予防には児童の健康状態のチェックや調理従事者、食品取扱者の衛生管理の徹底、学校環境のチェックなどが大切である。そして、何よりも教諭がウイルス性下痢症の初発症状や感染様式などについての知識をもつことが感染拡大を予防する基本と考える。我々にもその啓発の責務の一端はあるのではないだろうか。


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