最近のトピックス

ロタウイルス研究の現状


藤田保健衛生大学医学部ウイルス・寄生虫学  谷口孝喜


 ロタウイルス研究の現状について、昨年の下痢症研究会での報告以後に出版された論文から抜粋して報告する。要点は以下の通り。

1.ワクチン
ヒトロタウイルスRV3がphaseII試験終了:抗体レスポンスは46%と低いが、heterotypic protection はみられる。
Wa x UK(P1A[8], G6) とWa x (DS-1xUK) (P1A[8], G2) のphase I臨床試験
UK-single gene reassortants (VP7がHRV由来)のphase I臨床試験:
    中和抗体レスポンス:UK (95%)、G1 (37%), G2 (32%), G3 (32%), G4 (32%)
弱毒ヒトロタウイルスWa株の経口投与とVP2/6の経鼻接種(ブタ)
トランスジェニックじゃがいもにVP6の発現

2.疫学 
G3P[4](ブラジル)、G2P[6] (ブラジル)、G12P[6](米国)、G12P[9](タイ)
米国で成人でのロタウイルスの集団発生ではすべてG2が関与。
G8P[6] (マラウイ)
G9の地球規模での分布の拡大(リビア、ケニア、キューバ、アルゼンチン)
VP4, VP6, VP7はともに独立してリアソートする。
C群ロタウイルスの検出:アルゼンチン、マラウィ、ナイジェリア
C群ロタウイルス(Bristol株)の全塩基配列決定

3.増殖
VP4がRaftsに結合し、アセンブリーを促進し、極性を有する細胞でのターゲッテングに関与する。
初代膵臓細胞でも増殖する。
NSP1はIRF-3に結合し、インターフェロン産生を阻害する。
NSP3がpolyA binding proteinと類似の機能を示す:mRNAの3'末端と結合し、eIF4GIとの相互作用でmRNAを環状化する。
NSP3は宿主細胞の蛋白質合成をシャットオフする。
NSP3が腸管以外への拡散に関係する。
NSP3は心臓形の二量体
NSP5はNSP2と協同し、RNAのパッケージに関与する。
VP6に対する抗体は、細胞内でVP6三量体のコンフォーメーションを変化させ、転写活性を阻害する。
DNAマイクロアレイ法で38,000の遺伝子発現パターンが調査された。
VLA (α2β1)インテグリンはロタウイルスの細胞への侵入を促進するが、吸着に必要ではない。

4.病原性
リポポリサッカライドとの併用でマウスのロタウイルス感染による胆道閉鎖を誘発できる。
フィンランドでの調査では、ロタウイルス感染は糖尿病と関連ない(β細胞自己抗体の引き金にはならない)。
中枢神経系の疾患、心筋炎、肺炎との関連。
トリのNSP4もマウスに下痢を誘発する。
腸管神経系の下痢発症への関与。
ラットでの感染系も有用である。


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