最近のトピックス

カリシウイルスに関するトピックス


札幌医科大学医学部小児科 中田修二


 カリシウイルス科に属するウイルスは、Lagovirus、"Norwalk-like viruses (NLV)"、"Sapporo-like viruses (SLV)"、Vesivirusの4つの属に分かれる。NLVとSLVの正式な属名については、現在、ICTVのECにおいて検討中である。カリシウイルスに関するここ1年間のトピックスを、いくつかの研究分野に分けて話題を提供したい。

 ここ1年間におけるInternational Journalにおけるカリシウイルスの表記に関して見ると、LagovirusとVesivirus属に関しては RHDV(42)、EBHSV(2)、FCV(45)、VESV(3)と、ほとんど全てで種名が用いられている。NLV属(35)では、NLVが66%と最も多く使用されているが、日本を中心に23%がNVを使用している。 human calicivirusはほとんど見られない。SLV属では論文数(7)は少なくSLV(4)がSV(3)よりも多いが、SLVの2つの論文は遺伝学的にかなり離れている動物由来の株に関する報告である(後述)。

 NVの検出法に関しては、RT-PCR法による核酸検出が主流である。特異抗体で感作されたmagnetic beads(3編)を用いてその検出高率を高める試みと、短時間に多数の検体をこなせる方法としてPCR-ELISA法(Appl Environ Micro 67:742-9, 2001)とliquid hybridization assay(J Virol Methods 91:119-30, 2001)の報告がある。また、ネコに上気道感染症を起こす多数の病原体(FCV、FHV-1、Chlamydia psittaci)を一度に診断するため、multiplex RT-PCR/PCR法が開発されている(Vet Microbiol 81:95-1087, 2001)。糞便懸濁液の前処理にFreonに変わるものとしてVertrel XFの有用性が示された(J Virol Methods 90:59-67, 2000)。

 SLVに属する動物由来のカリシウイルスが報告されている(JCM 39:1487-93, 2001、Arch Virol 146:479-93, 2001)。ブタ由来のPorcine enteric calicivirus Cowdenとminkenteric calicivirusで、共に臨床的には下痢を引き起こす。下痢をきたさないmink non-enteric calicivirusはVesivirusに属した。

  NVに関する基礎的な話題としては、NV/GII/Uenovirus/JPを用いたNV receptorに関する論文(J Virol 74:11589-97, 2000)、in vitroで産生されたNV genomic RNAとウイルスの翻訳に関連している細胞内蛋白質との関係に関する論文(J Virol 74:8558-62, 2000)、NV/GI/SHV/UKの2C helicaseに相当するp41蛋白質の役割に関する論文がある(J Virol 75:1611-9, 2001)。

 疫学的話題としては、ミネラルウオーターからのNVの検出、NV胃腸炎がEHEC検出commercial kitでSTECと誤診されたもの、VTECとNVの混合感染の存在などがある。また、NVのair-born transmissionを示唆する論文がさらに追加された(2編)。


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