最近のトピックス

ロタウイルス研究の現状


藤田保健衛生大学医学部ウイルス・寄生虫学  谷 口 孝 喜


 ロタウイルス研究の現状について、昨年の下痢症研究会での報告以後に出版された論文から抜粋して報告する。要点は以下の通り。

1.ワクチン   RotaShieldと腸重積との関連に関して、肯定、否定さまざまな報告が多数ある。しかし、ロタウイルスワクチンの必要性については、異論はない。
 腸重積は腸管関連リンパ組織の肥大、肥厚と関連すると言われている。マウスを用いたサル−ヒト、ウシ−ヒトロタウイルスリアソータントの経口投与試験ではそれらは見られないが、パイエル板、腸間膜リンパ節に感染性ロタウイルスを検出(サル−ヒトリアソータント)した。
UK-ヒトリアソータントを用いた第1相試験が行われ、抗体レスポンスは3回投与後全例にあるものの、中和抗体はUKに対して95%と高いが、HRVに対しては約30%である。
サルモネラ−VP2/6では、 血中、ミルク内の抗体産生はあるが、防御能はない。
コレラトキシンB and A2サブユニット融合エンテロトキシンを植物(ジャガイモ)に発現させ、マウスへの経口投与によりTh1系の免疫応答が見られた。
VP6 DNAワクチン、Lactococus lactis へのVP8の分泌発現、粘膜アジュバントとしてCT-E29Hなどのトキシンの利用などの報告がある。
ヒトでは、血中IgAが防御に関連するデータがある一方、IgAノックアウトマウスでは、防御にIgA関与しないとの報告がある。

2.疫学  混合感染(21%)が多く、自然界でのリアソートメントでそれほど稀ではない。
インドでは、G9:が17%検出されるなど、ユニークな株の検出が多い:G8P[8]、G1P[6]、G9P[6]。インドでのB群ロタウイルスの突然の出現と突然の消失。
成人の急性下痢症例におけるロタウイルスの検出率14%で、それ以外では5%であり、季節性がない。
食品(マグロあるいはチキンサラダサンドイッチ、大学生)を介した集団発生がある。

3.増殖 侵入過程は多段階で起こり、複数の分子が関与するが、シアル酸が関与であることには変わりなし。Glycosphingolipidが有力。
α2β1、α4β1、αXβ2、αvβ3もレセプターとして作用。
NSP2:ヘリカーゼ活性、VP7の結晶化が進行中

4.病原性 胆道閉鎖:生後12時間のマウスへのRRVの腹腔内接種により、コレスタシス(胆汁分泌停止)と胆道閉鎖を起こす。
1型糖尿病:マウスでの実験で、ロタウイルス感染とランゲルハンス島に対する抗体の出現に関連ある。
脳症で髄液からRNAを検出(コンタミの可能性は否定せず)。
HIV感染と下痢の関連:サイトメガロウイルス感染が主である。
死亡例:心筋炎と肺炎併発症例が散見される。
全身感染例での死亡例:心臓、中枢神経系でのロタウイルスRNAの検出。
SIVのenvelope protein (surface unit; SU)がロタウイルスNSP4と類似のエンテロトキシン活性がある(Virology 277:250-261, 2000)。
ハトロタウイルスPO-13株が実験的にマウスに感染する。


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