6.ヒトロタウイルス(HRV)の最近の知見および文献紹介
谷口孝喜(藤田保健衛生大学医学部)
前回の下痢症研究会以降発表されたロタウイルス研究で重要と思われる報告について列記する。今後の研究に特に影響力が高いと判断される場合については、引用文献を示した。
- 1.ワクチン
- RRV-TVについては、現在解析中のためか、報告がほとんどない。
- 2.病原性
- 下痢以外の疾患との関連:過ナトリウム血症、ギランバレー症候群、1型糖尿病、ライ症候群、良性の痙攣
エイズ感染児の下痢におけるロタウイルス感染は有意に高くない。
- 3.疫学
- 血清型
G9 (ヒト:UK, オーストラリア、米国、マラウィ、フランス、バングラデシュ;ブタ:ブラジル)、G9P[6]、G8 (オーストラリア、マラウィ、南アフリカ、イギリス)の検出。P[9] (米国)、 新しいP type (タイ)の検出。
C群ロタウイルス抗原の検出(ブラジル)、イヌ(ドイツ)および抗体の検出(南アフリカ: 34.4%; スウェーデン:38%、日本)。
環境中の汚染:貝類(フランス):カキ;NLV(23%), RV(27%), ムラサキ貝;NLV(35%), RV(52%)および飲料水(フランス)(Appl. Environ. Microbiol., 66:2690-2692, 66:3241-3248, 2000)
-
4.増殖
- 腸管神経系がロタウイルスの下痢に関与する(Science 287(5452); 491-495, 2000)
- レセプター:
- ウイルス増殖を抑えるMA104細胞に対する単クロン抗体の調製。
複数のステップが関与する。VP8およびVP5が関与する
インテグリンα2β1, α4β1が細胞吸着に関与する
(J. Virol., 74, 228-236, 2000)
VP3がメチルトランスフェラーゼ活性を有する。
VP5の疎水性領域は膜透過性に関与する。
VP4が細胞膜に存在し、微小管と相互作用する。
NSP2がNTPase活性を有する。
NSP3はmRNAとeIF4Gに結合する。
NSP4のC末端が一重殻粒子のレセプターとして働く。
- 5.免疫
- VP6は中和抗体応答のプライミング効果を有する。
タバコにVP6を発現し粒子形成した。
VP8はミルクを介する防御に関与する(マウス)。
防御にIgAは不要である(J. Virol., 74:4102-4109, 2000)。
IL-6は、IgAの産生およびTh1関連の防御に関与しない。
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