7.カリシウイルスに関するトピックス

札幌医科大学医学部小児科 中田修二


 カリシウイルス科に属する胃腸炎ウイルスには、ノーウオークウイルス(NV)とサッポロウイルス(SV)がある。この2つのウイルス種は2000年夏に、国際分類命名委員会により正式に認められた。カリシウイルスに関するここ1年間のトピックスを、いくつかの研究分野に分けて話題を提供したい。

 2000年の3月にアトランタにおいて開催されたInternational Workshop on Human Calicivirusesのproceedingsが、JID 181(Suppl 2)に掲載された。ヒトにおけるカリシウイルス研究の歴史、分類と命名、遺伝子構築の解析と各種蛋白質の発現、感染免疫、診断法の進歩、最新の診断法による分子疫学、食品媒介NV感染症の重要性、NVワクチン開発などがまとまって記載されいる。

 International Journalにおけるカリシウイルスの表記に関しては、NLVとSLVが最も多く使用され、NVとSVを使用するものはまだ少ない。また、多くはないがhuman calicivirusも依然として見られる。NVとSVの場合は株名とウイルス種名の鑑別が問題と考えられることや、これまでの歴史からNorwalk-like virusesという表現に違和感がないことが影響していると思われる。しかし、本年中には新しい属名が提案される予定であり、NLVとSLVという名前は分類上存在しなくなる。

 診断法に関しては、これまで主流のRT-PCR法による核酸検出に加えて、再び免疫学的方法による検出法に目が向けられてきている。単クローン抗体によるNVの検出とgenogroup型別、バキュロウイルスで発現された構造蛋白質によるELISA系、大腸菌で発現された構造蛋白質によるELISA系がある。

 Zoonosisの可能性に関する論文も増えつつある。 NVとSVに属するウイルスがこれまで考えられていた以上に動物から検出される可能性がある。Vesivirusに属するFCVやCaCVが下痢症を起こすという報告もある。 これら動物由来のウイルスが種を越えてヒトに感染するのか、動物の中で変異しつつあるウイルスがヒトに感染性を持つようになりうるのか興味深い。

 NV/GIIウイルス間のrecombinant virusが自然界に存在するという報告があった。ネコカリシウイルスにおける構造蛋白部位のキメラウイルスの作成は、ウイルス学的な機能解析のみならず、将来のワクチン株作成に係わってくるものであり興味深い。RHDVのVLPをepitope carriersとして応用し、外来抗原をVLP上に発現した報告がある。

 食品関連の話題としては、多くの非細菌性食中毒の報告の他、NVの感染源の追跡、排水中からのNVの検出、カキ以外の食品からのNVの検出法がある。

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