4.アイチウイルスの血清疫学(国内数地域)

山下 照夫1、中田 修二2、長谷川 斐子3、福田 伸治4、大瀬戸 光明5、浦沢 正三2

1愛知県衛研、2札幌医大、3国立感染研、4広島県保環センター、5愛媛県衛所


はじめに
 アイチウイルスはピコルナウイルス科に属する新型ウイルスで、生カキが原因の胃腸炎 患者の糞便から分離される。愛知県内に住む人の抗体保有率は年齢の上昇とともに高くな り、30歳代で80%近くになる。この数値が全国的なものか否かを確認するため、国内各地 のアイチウイルス抗体保有状況を調べた。

材料と方法
 北海道105名、栃木・埼玉・新潟県275名、愛知県1,184名、広島県260名、愛媛県290名の血清を用いた。年齢階層は0歳から60歳以上まで、各地区ともほぼ均等に集められた。4倍希釈血清を非働化し8倍から2倍階段希釈した。Vero細胞を用い100TCID50/25オlの アイチウイルスを中和する血清希釈値を求めた。

結 果
 0歳から4歳の抗体保有状況は北海道(0〜3歳)22%、栃木・埼玉・新潟県20%、愛知県10%、広島県5%、愛媛県8%で平均12.5%であった。5歳から9歳では北海道(4〜10歳)69%、栃木・埼玉・新潟県20%、愛知県35%、広島県10%、愛媛県20%で平均27%であった。11歳から19歳では北海道50%、栃木・埼玉・新潟県40%、愛知県55%、広島県28%、愛媛県42%で平均42%であった。20歳代の平均は59%(45〜80%)、30歳代の平均は66%(43〜90%)、40歳代で83%(60〜100%)、50歳代で89%(75〜100%)、60歳以上で96%(85〜100%)であった。
愛知点で1973年、1988年、および1998年に採血された血清を用いて年代による違いを比較した。0歳から4歳の抗体保有状況は1973年が8%、1988年が7%、1998年が10%であった。5歳から9歳の抗体保有状況は1973年が36%、1988年が18%、1998年が35%であった。10歳から14歳の保有状況は1973年が55%、1988年が32%、1998年が41%であった。15歳から19歳の保有状況は1973年が62%、1988年が50%、1998年が65%であった。20歳以上では何れの年代も60%を超えていた。

考 察
 低年齢層に若干の抗体保有状況の違いがみられるものの全体的に地域差は少なく、低年 齢層の抗体保有率は比較的低く、年齢の上昇とともに保有率は上昇し40歳代以上で何れの 地域も60%以上の高い抗体保有率を示すものと思われた。また、本ウイルスは1973年以前から存在し、毎年同じような感染がおこり全国各地に分布しているものと考えられた。

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