5.カリシウイルス研究に関する最近のトピックス

田中智之(和歌山医大 微生物学教室)


 Human Calicivirus(HuCV、旧称SRSV)に関して今年になって3つの大きな学会があった。その1、International Workshop on Human Calicivirus(3/29-31, Atlanta, USA)、その2、33rd US-Japan Cooperative Medical Science Program(6/28-7/1, Washington DC, USA),その3、International Virological Congrress(8/8-13, Sydney, Australia)である。各々について簡単に内容、トピックを報告します。

I]Atlanta学会でのCalicivirusについて。  この会では5つのOral Sessions, Poster sessionが設けられていた。Oral 1) ではEpidemiology, 2) Virology, Immunology and Pathogenesis, 3) Diagnostic Developments, 4) Foodborne Calicivirus Disease, 5) Prevention and Controlである。1)ではHuCVは相変わらず下痢症のなかで高頻度を占めていること、例えばDr. Colomina J (Spain)ではGastroenteritisの原因としてBacteris 29%、Rotavirus 30%、Adenovirus 6%、Unknown 35%(内HuCV 18%うち13%が入院)などを報告している。さらにこのSectionでDr. Koopman (UK)はHuCV reservoirの存在を指摘しNV?bovine, pig, SLV?porcineを報告、Rotavirusと同じような人獣共通の感染症としての位置付けを報告している。
 2)の最大の焦点はHuCVのTaxonomyについてDr. K. Greenのまとめの報告があった。Order, Family, Sub-family, Genus, Speciesについて、この会に同席した中込教授から詳しい報告がなされる。また千葉教授からSapporo virusの、Dr. KapikianからNorwalk virus発見の歴史についての講演がなされた。3)ではPCR, RT-PCRを中心に色々なPrimer使用によるHuCVの検出、Clusteringの検討が報告された。中でもDr. Vinje (UK)が開発したRT-PCR-Biotinylated primer (RLB)→Dot hybridizationはNLV, SLVいずれにもSensitivity 93%、Specificity 100%に検出という興味ある報告があった。
 4)では色々な食品、魚貝類などからNLVの検出が積極的に行われていた。Dr. Schwab (USA)はTRIzol reagentという試薬使用にてham, salami, roast beefなどからNLVの検出を行た(2/20に陽性)。またBosmiaからQuebeckに輸入されたRapsberyからcaterer, restrauntでHuCVの流行の報告(Dr. Gaulin, Canada)、さらにFoodbone diseases Active Surveillence Network (FoodNet)による監視(Dr. ?)など欧米では魚貝類以外からのHuCVの検出により積極的な試みが行われていた。5)では飲料水からNLVの検出や、Military, 特にNavyでのNLVの発生頻度の報告があった。特にこのsessionでNorwalk virus vaccines (Dr. Estes, USA)についての現状報告があり、これについては本研究会で概要を報告する。ポスターsessionでは日本からも多数の発表があった。

II]US-JapanではGI sessionで11の発表がみられ、うちNV-related presentationは5つであった。4つがNLVの検出方法の工夫や検出頻度の報告であったが、その中でPrimer 289-290を使用すればGI, GII, SLVすべてを100%検出できるというDr. Xi Jiang (USA)の報告があり非常に興味がもたれた。またVirus-overlay protein-binding assayという方法でNLVのsurface receptorを同定する試みが発表され(Dr. Tamura)、110kDa moleculeがreceptorかも知れないという結果であった。この点について今回の本研究会で武田直和先生(国立感染症研究所)から直接お話して頂けると思う。Norwalk-like virusが未だ細胞培養されない事実から興味あるお話と考える。

III]国際ウイルス学会は都合にて参加出来なかったので、参加された依田知子先生(大阪府立公衆衛生研究所)にNLV, SLVの最新の知見を教えて頂く予定です。

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