6.ヒトロタウイルス(HRV)の最近の知見および文献紹介

谷口孝喜(藤田保健衛生大学医学部)


1.ワクチン
 1998年8月31日に米国FDAによって認可されたRRV-TVワクチンは、その後、1999年6月までに約150万の投与が実施された。しかしながら、15例の腸重積の報告がなされ、CDCは本年11月までの投与延期を勧告した。さらに、認可の過程での疑義が提出され、調査が加えられる見通しで、本ワクチンの将来は多難であるかもしれない。
 ウシロタウイルスUK株を基本とし、VP4あるいはVP7をヒトロタウイルス由来としたリアソータントワクチン、HRV 89-12株の投与試験が進行中。
 たばこ、じゃがいもでのVP6の発現、乳酸菌でのVP8の発現、赤痢菌でのVP4の発現、サルモネラ菌でのVP7の発現が行われている。
 バキュロウイルス発現系でのVLP (VP2/6, VP2/6/7,VP2/6/7/4)の経口投与、鼻腔接種、筋肉内接種における粘膜アジュバント、各種アジュバントの併用が検討されている。
 DNAワクチン(VP6, VP4,VP7)の粘膜免疫 (Th2タイプの反応を誘導、防御能あり)、微粒子に包埋しての経口投与が試みられている。

2.病原性
 NSP4:WaとM (group A), Cowden (group C)の強毒株と弱毒株間でアミノ酸の相違がみられるなど、NSP4と下痢発症の関連論文多い。
 下痢以外の疾患との関連:Gianotti-Crosti syndrome, poliomyelitis-like syndrome, neonatal hypocalcaemia、胆道閉鎖など。2年間のretrospective studyではCNS(脳炎、髄膜炎、痙攣)との関連はない。

3.疫学
 下痢患者便中のHRVの排泄は4?57日と長い。
 非定型HRVの検出:G9P2A[6], G3P2A[6]:英国、および米国、G8P[6](42%), G8P[4](9%):マラウィ、G8, G10:ブラジル、P[14](PA169, HAL1166):南アフリカ共和国、イタリア、Super-short P2[6] :日本など。
 インドでB群ヒトロタウイルスが分離された:中国での分離株ときわめて類似。
 環境中の汚染:PCRでの検出(体温計、遊戯用マット)、フローサイトメトリーを利用した検出の報告。

4.増殖
 レセプター:動物(トリを含む)RVはシアル酸依存、ヒトロタウイルスはシアル酸非依存と報告されてきたが、多くはともにシアル酸非依存であるらしい。RRVにおいて、シアル酸非依存変異株の分離(VP4に3アミノ酸置換)。RVのレセプターは複数ないし複雑であるとも予想される。
 NSP5とNSP2との相互作用がある、NSP3は二量体をなし、RNA結合能およびeIF4GIと結合するなどの知見。プロスタグランジンAによる成熟の阻止。
 ER内のシャペロン:BiP(GRP78) とendoplasmin (GRP94)がロタウイルス感染に伴い上昇、シャペロンCalnexinがNSP4と反応。
 VP1, VP2, VP3のうち、VP1のみが塩基配列特異的結合。
 VP6のX線解析も行われている。

5.免疫
 血清IgA, 腸管IgA, 腸管IgGが防御と関連する、VP7上のCTLエピトープの同定など。 IFNは下痢、増殖の阻害剤ではない。


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