(2) 情報公開と最近のトピックス
2-2 HRV最近の知見、文献紹介等

谷口孝喜 (藤田保健衛生大学)


  HRVの最近の知見について、ワクチン、病原性、疫学、増殖、免疫に分けて簡単に紹介する予定です

1. ワクチン
  RRV4価ワクチンが、重症の下痢(脱水)を防御する上で高い効果を示すことが確認され、製造・販売、米国内での使用が承認される。米国におけるHRV予防接種計画の費用効果分析がなされ、保健医療費の面からは、ワクチン1回あたりの価格が9ドル(社会的観点からは51ドル)まで下がる必要性があると結論づけられた。また、HRV弱毒生ワクチン候補株 89-12 株やRV3株の第1相試験が良好な結果のもと、終了している。動物実験の段階では、バキュロウイルス発現系により得られるウイルス様粒子やDNAワクチン(VP4,VP6,VP7)の検討も進められている。さらに、QS21、コレラトキシン、E.coliトキシンといった各種アジュバントの効果も検討中。

2. 病原性
  下痢症以外に、1型糖尿病、脳炎、急性節炎、胆道閉鎖との関連が、症例としてあるいは実験動物レベルで示唆されている。NSP4のエンテロトキシン活性に関しては、その普通性について、肯定あるいは疑問視する報告がある。

3. 疫学
  異なるG血清型聞でのVP7遺伝子のリコンビネーションの検出、インドではP8[11]G9,ブラジルではP1A[8]G5,P2[6]G2,P3[9]G1やP3[9]G3といったユニークな血清型を有するHRVの検出や混合感染例が多い(21%)など、RVの多様性についての報告は依然として多い。食品、汚水からのHRVの検出として、コスタリカにおいては、レタスから直接HRVが検出されている。

4. 増殖
  VP4のLys150とGly187がシアル酸依存の細胞吸着に関与すること、VP4のArgZ47が、fusion from withoutに必須であること、VP2のN末端がVPIとVP3とのコア形成に重要であることなど、増殖段階での各ステップについて研究が進行している。特に、まだ判然としないレセプターに関しての報告が多くなった。

5. 免疫
  RV研究のなかで、最近免疫(特に粘膜免疫)に関する報告が非常に多い。特に、CXCとCCケモカイン、各種サイトカインと感染防御の関係、各種ノックアウトマウスを利用した解析、CTLエピトープの解析などが進行している。

←Back   抄録目次   Next→

トップページへもどる