(2) 情報公開と最近のトピックス
2-1 WHO報告 HRVのワクチンについて

中込治 (秋田大)


  米国NIHのKapikianらが開発したRRV-TVワクチンが1997年12月にFDAにより認可され、ロタウイルス下痢症制圧のためのワクチンが実用化した。これに先立ち1997年1月に ジュネーブのWHO本部で、発展途上国の子供をロタウイルス下痢症から守るために、 どのようなロタウイルスワクチン、あるいはどのようにロタウイルスワクチンを使っ ていくべきであるかということに関するワークショップが開催された。 ウイルス性下痢症研究会の会員であれば、ロタウイルス下痢症のため発展途上国の小 児が年間10万人近く死亡しており、そのインパクトが非常に大きいことは承知されて いると思う。そこでワクチンの必要性が了解されるわけであるが、失礼ながら、では ワクチンができたとしてそれをどう役立てるのか、またWHOの主要戦略であるEPIとど う整合性をもって導入していくのかなどとなると頭の中は白紙(博士の誤変換ではな い)同然の人が多いのではなかろうか。少なくとも私自身はこの会議に参加するまで よく考えたことはなかった。

 さて、会議は2日間にわたり、第1日目には全体会議の中で (1) ロタウイルスワクチンの背景としてのウイルス感染症、 (2) 最も進んでいるRRV-TVワクチンの最新情報、(3) ロタウイルスワクチンの野外試験を行う場合の一般的問題点と発展途上国での 問題点、さらに開発中の新しいロタウイルスワクチンについての最新情報、 (4) 新しいワクチンをEPIの中にどう取り入れて行くかという観点からの議論 について、世界各地から集まった専門家の発表と討論が行われた。 第2日目には本人の希望をもとに20人程度のワーキンググループが作られ、(1)サーベイランスの問題点、(2)ワクチンの野外試験に関する問題、(3)ロタウイルスワクチンをEPIに組入れることにより派生する問題、(4)ワクチンの必要性、供給、品質管理 などをどうするかという問題について午前中討論が行われた。この討論を座長が昼休み中にまとめ上げ、午後の全体会議で発表し、これをまた討論し、コンセンサスを得 ていくという非常にプラクティカルなものであった。 上述のごとく会議の大部分は発展途上国にロタウイルスワクチンを導入するに際して のWHOの立場からのテクニカルなディテイルであり、ほとんどの会員には関心が低い 内容である。また、私自身不慣れな分野の議論の中に放り込まれたので思い違いやバ イアスも多いと思われる。そこで、会議の結論を公式の抄録に残すのは差し控えさせていただき、私の個人的感想を中心とする印象記という形で報告させていただく予定である。

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