(1)ウイルス性食中毒 −食品衛生法の改正に伴うこれからの課題−
1-3 食中毒様胃腸炎患者からのSRSVの検出状況と遺伝子解析

○池田義文 阿部勝彦 桐谷未希 山岡弘二 荻野 武雄(広島市衛研) 野田 衛(現:広島市食肉衛検)


 1997年5月、食中毒の病因物質に小型球形ウイルス(SRSV)が追加指定さたことに伴い、食中毒等のウイルス検査体制の強化および検査法の確立を目的に、1997年1月~1998年2月の期間に発生した有症苦情、食中毒及び集団発生計10事例の患者糞便58検体について、電子顕微鏡法(EM)および逆転写遺伝子増幅法(RT-PCR)を用いて検査した。プライマーはNV35(35')/36[1st]:NV81/82/SM82[2nd] およびMR3/4[1st]:Yuri22F/R[2nd]を使用した。逆転写反応と1st PCRは汚染防止のためシングルチューブで行った。

 EMは5事例の15検体 (25.9%)が、RT-PCRでは10事例、49検体(84.5%)がSRSV陽性と判定された。なお、EM陽性の1検体はRT-PCR陰性であった。RT-PCRで陽性となった12検体については、マイクロプレートハイブリダイゼーション又はダイレクトシーケンスにより確認した。その結果、7検体中5検体はG2プローブで陽性となった。ポリメラーゼ領域の塩基配列は全てGenogroup2に属す るSRSVであったが、ハイブリダイゼーションで陰性の2検体は、これらとは異なっていた。一方、感 染症発生動向調査事業の胃腸炎患者由来株並びに過去の陽性事例を含めた遺伝子解析の結果、1992/93年のシーズン以降、広島市においてはGenogroup2のSRSVが主流であったが、これらの遺伝子は年毎に少しずつ変異しており、いくつかのグループに分けられた。

 今回の調査で、冬季の食中毒様胃腸炎はSRSVが主要な病因物質として関与していることが再確認されるとともに、遺伝子解析法はSRSVの確認および疫学解析に有用な方法であることが明らかとなった。

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