札幌医科大学附属病院 病理診断科・病理部
 
研究内容

1. 病理診断における免疫染色とFISHの役割

 免疫染色とfluorescence in situ hybridization (FISH)は今や病理診断に不可欠な検査手技です。病理診断は顕微鏡による組織観察に加えてこれらの手技を併用することでより正確になります。以下に免疫染色、FISHについて概説します。

1-1. 免疫染色

 免疫染色は免疫組織化学とも呼ばれ、組織中に発現しているタンパク質などの抗原を特異的な抗原抗体反応を用いて検出する方法です。特異的なタンパク質の検出は病理診断に有用であるため、免疫染色は多くの病理検査室において日常的に行われている補助診断手技です。

1-2. FISH

 FISHは蛍光色素標識した特異的DNA配列(DNAプローブ)を細胞の染色体DNAとハイブリダイズさせ、染色体ゲノムDNAの異常を検出する方法です。FISHにより染色体転座、特定遺伝子の増幅や欠失、また多倍体などの染色体異常が解ります。FISHは特に骨軟部腫瘍領域において特異的キメラ遺伝子を有する転座関連肉腫の確定診断に威力を発揮します。

2. 札幌医科大学医学部病理診断学における外科病理学的研究

 病理診断医は患者様から採取された多種、多様な組織を顕微鏡で観察することで病理診断を行っています。現在は顕微鏡による組織観察のみならず免疫染色やFISHなどの補助診断手技も用い、免疫組織化学的、分子生物学的な検討も行った上で病理診断を行っています。病理診断を主軸に据え、疾病の研究を行う学問を外科病理学と呼びます。当教室では日々の病理診断に通して診断技術の向上や疾患概念の提唱などをテーマとして外科病理学的研究を行っています。

2-1. 骨軟部領域の転座関連肉腫におけるFISH用プローブの開発と診断応用

 当教室では主として整形外科医が治療する肉腫についての研究を行っています。また、肉腫は四肢以外の全身諸臓器にも発生し、外科医、産婦人科医、泌尿器科医、脳神経外科医、皮膚科医、形成外科医が治療を行います。肉腫の発生頻度は低く、世界的にその研究や治療が遅れているのが実情です。現在、私たちは肉腫をテーマに臨床病理学的研究を行っています。肉腫の約25%は特異的なキメラ遺伝子を有し、転座関連肉腫と呼ばれています。特に転座関連肉腫の病理診断にはFISHによるキメラ遺伝子の検出が不可欠であり、正確な病理診断は早急な治療開始に大きく寄与します。当教室では既知の分子病理学的知見を基にFISH用のプローブを開発し、日常の診断業務に役立てています。

2-2. 胃腸管間質腫瘍 (gastrointestinal stromal tumor, GIST)

 当教室では消化管に発生する間葉系腫瘍であるGISTの再発・転移の危険度を予測する因子について研究を行っています。私たちは免疫染色によりpotassium channel tetramerization domain-containing 12 (KCTD12)の発現と予後との関連について明らかにしました。さらに、画像解析によるKi-67値がGISTの再発・転移のリスクを予測する因子として優れていることも見出しました。

3. 患者様へのお願い

 私たちは札幌医科大学附属病院病理部で保管されている病理資料を対象として、個人情報を匿名化した上で、上記のような外科病理学的研究を行っています。これらは既存の病理試料を対象とした後ろ向き研究であるため、患者様に新たなご負担は生じません。研究へのご理解とご協力をよろしくお願いいたします。また、研究で得られた新たな成果を患者様の診断・治療に役立てたいといつも考えています。研究に関するお問い合わせは下記連絡先までご連絡ください。

連絡先:札幌医科大学医学部病理診断学  
札幌医科大学附属病院病理診断科
電話: 011-611-2111 (代表)


 
滑膜肉腫の組織像
免疫染色でcytokeratinが陽性

SYT Split-Signalプローブを用いたFISH解析
SS18プロープを用いたFISHでsplit signalが検出

 

 
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