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研究内容

札幌医大皮膚科学講座では、メラニン合成の生化学的および分子生物学的研究、システアミニールフェノール・マグネタイトナノ微粒子によるメラノーマの実験治療、色素性乾皮症の遺伝子診断と病態の研究、悪性黒色腫(メラノーマ)の細胞遺伝子と増殖制御機構の研究、などの基礎的研究から、メラノーマおよび非メラノーマ皮膚癌の診断と治療、ウイルス性皮膚疾患の臨床研究、イミキモドによる皮膚癌診療、創傷治癒の遺伝子治療などの臨床的研究まで幅広い研究を行なっている。

毎年、日本皮膚科学会総会、日本研究皮膚科学会、日本色素細胞学会、国際研究皮膚科学会総会などに多くの演題を発表しており、国際的なジャーナルにも論文を発表している。

基礎的研究

1. メラニン合成の生化学的および分子生物学的研究

メラニンは有害な紫外線を吸収し皮膚を保護する重要な機能を担っている。メラニン色素は、メラノソームと呼ばれるメラノサイト内の小器官に貯蔵され、メラノサイトから周囲のケラチノサイトへ転送され、紫外線防御に働く。
当教室では、メラニン合成酵素チロシナーゼ、TYRP-1、TYRP-2、gp100が、ゴルジ体からメラノソームへ、さらには、メラノサイトからケラチノサイトへ輸送される分子機構を、免疫組織学や遺伝子導入実験を駆使して研究している。同時に、これらメラニン合成蛋白質のもつ細胞死誘導および抑制活性の分子機構や紫外線によって誘導されるメラノソーム遺伝子の機能解析を進めている。1) チロシナーゼ遺伝子は各種細胞に細胞死を誘導するが、TYRP-1あるいはTYRP-2はチロシナーゼの細胞毒性を抑制する (Exp Cell Res 2004; 298: 317-328)。2) TYRP-1、TYRP-2の細胞内輸送には、Rab7の発現が必要であり、Rab7はgp100が早期メラノソームへの集積にも関与する (J Invest Dermatol 2002; J Invest Dermatol 2008 128: 143-50; J Dermatol 2011:38:432-441)。3) メラニンは黒〜茶色を呈するユーメラニンと赤〜黄色を呈するフェオメラニンとして合成される。これらのメラニン産生スイッチングにはcAMP非依存性シグナルが必要であることを明らかにした(Pigment Cell Melanoma Res 2009: 22: 623-634)。

細胞内におけるTyrosinaseとTRP-1 (Tyrosinase Related Protein-1)の局在 Green : tyrosinase Red : TRP-1 Yellow : co-locarization 細胞内におけるTyrosinaseと
TRP-1 (Tyrosinase Related Protein-1)の局在
Green : tyrosinase
Red : TRP-1
Yellow : co-locarization

2. システアミニールフェノール・マグネタイトナノ微粒子によるメラノーマの実験治療

メラノーマは悪性かつ治療抵抗性の皮膚癌で、進行例に対する治療成績はここ20年間大きな進歩がない。近年、BRAF阻害薬やc-kit阻害薬が進行期メラノーマの治療に用いられるようになったが、それぞれBRAF、c-kitに変異のある腫瘍に限られる。メラノーマの腫瘍抗原ペプチドを用いたペプチドワクチン療法がこの20年間盛んに行われたが、単独治療の奏功率は10%以下である。そこで、厚生労働省神保班では、他施設共同研究により、N-propionyl-cysteaminylphenol(NPrCAP) の抗メラノーマ作用と磁場照射によって発熱するマグネタイトを結合したナノ微粒子(NPrCAP/M) を用いたメラノーマの実験的治療および臨床研究を行って来た。

これまで、NPrCAP/Mは、1) チロシナーゼの基質となり、2) 色素性メラノーマ細胞に高率に取り込まれ、3) B16F1メラノーマ担癌マウスに腹腔内投与により移植腫瘍に集積することを報告し(J Invest Dermatol 129: 2233-2241、2009)、さらにモデルマウスを用いた実験より、4) 43℃治療が2次移植の拒絶に最適であり、抗メラノーマ作用には、5) 腫瘍細胞におけるHSP70の発現誘導を伴い、6) 免疫応答の主役はCD8細胞であることを示した (J Biomed Biotechnol 10: 1155、2009; Cancer Science 101: 1939-1946、2010)。NPrCAP自身が有するメラノーマ細胞にたいするアポトーシス祐dぷ活性は、細胞内の活性酸素に似よる事が示唆されている (Melanoma Cell Pigment Cell Res、2011)。

3. 色素性乾皮症の遺伝子診断と紫外線発癌の研究

当科では、大学の倫理委員会で承認された色素性乾皮症と結節性硬化症の遺伝子診断を行っている。

色素性乾皮症は、ヌクレオチド除去修復に関わる蛋白質、あるいは乗り越え修復に関わるDNAポリメラーゼイータをコードする遺伝子に変異があり、露光部に色素沈着をきたし、やがて皮膚癌を多発する常染色体劣性の先天性疾患である。日本では、神経症状を伴うA群が多いが、バリアント群とその他の群もみられる。教室では、7つの相補群とバリアント群の蛋白質をそれぞれ発現するアデノウイルスベクターのセットを揃え、色素性乾皮症の疑われる患者さんの線維芽細胞に発現させ、紫外線感受性の回復より相補群を診断する簡便な診断法の確立を目指している。とくに、乗り越え修復に関わるDNAポリメラーゼイータ遺伝子異常によるバリアント群では、他のA〜G群に比べ、紫外線感受性の検出が困難である。当科では、遺伝子クローニングとDNA診断に加えて、色素性乾皮症バリアント群の紫外線感受性を簡便に検出する実験系の確立を目指している。また、色素性乾燥皮症患者に発生した皮膚癌における細胞遺伝子変異の解析を行っている。

4. 悪性黒色腫(メラノーマ)の細胞遺伝子と増殖制御機構の研究

メラノーマの細胞遺伝子変異はNRAF/BRAF/MEK/ERK経路とPI3-K/Akt経路が重要であるが、日本人に多い末端黒子型メラノーマの細胞遺伝子変化の詳細は不明である。当科では、分子生物学講座、薬理学講座、微生物学講座との共同研究によって、インターフェロンによるメラノーマ細胞のアポトーシス誘導、SIRT1の抑制によるメラノーマの転移抑制、メラノーマの浸潤と転移に関わる新しい細胞遺伝子の同定と、研究成果をメラノーマの診断と治療への応用を目指している。

メラノーマの多くはp53が野生型でp53はメラノーマ細胞にアポトーシスを誘導しないが、同じp53ファミリーメンバーであるp63はメラノーマ細胞に対し強力なアポトーシス誘導活性を有する (J Invest Dermatol 117: 914-919、2001)。そこで、p63誘導性アポトーシスに伴って転写誘導される細胞遺伝子をマイクロアレイで解析し、アポトーシス関連遺伝子の同定を試みている。メラノーマの術後補助療法に使用されるインターフェロンー・・・IFN・・・・は、免疫応答の活性化に加えて、メラノーマ細胞にアポトーシスを誘導する。IFN・・によるメラノーマ細胞のアポトーシス誘導はcaspase 2の活性化を伴う (J Interferon Cytokine Res 30: 349-357、2010)。 Diacylglycerol kinaseー・は、メラノーマ細胞において、NF-kBの活性化によりTNFー・誘導性のアポトーシスを抑制する (Biochimica Biophysica Acta1771: 462-474、2007)。これらの細胞因子はいずれもメラノーマの増殖と細胞死に直接関与するが、治療への応用の可能性について、異なる細胞遺伝子変化を有するメラノーマを用いて解析する必要がある。

 

臨床的研究

1. 悪性黒色腫の診断と治療

悪性黒色腫 (メラノーマ) はきわめて転移しやすく、高率にリンパ節および遠隔転移を起こす。 腫瘍の厚さ (深度) が1mm未満の病期Iメラノーマは、切除により治癒し5年生存率は95%以上であるが、所属リンパ節転移のある病期III、遠隔転移を起こした病期IVの5年生存率はそれぞれ50%前後、10%前後へ低下する。 従って、症例ごとの転移の可能性と早期診断が重要である。

当科では、悪性黒色腫患者の末梢血中に少数存在する腫瘍細胞を、メラノーマ細胞に特異的に発現する分化抗原を得意的に検出するRT-PCR法を確立した (J Dermatol Sci 33: 169-179、2003)。われわれのRT-PCR法では、リンパ節転移のない早期のメラノーマ患者10〜20%の末梢血からメラノーマ細胞特異的蛋白質のmRNAが検出される。最近、一部の細胞遺伝子変異のみを有する早期の原発腫瘍から、すでに血行性の全身転移が起こるという「平行転移モデル」が提唱されており、RT-PCRの結果はこの説に合致する。現在、末梢血中のメラノーマ細胞を特異抗体によって検出する方法を用いて、札幌ジェネテイックラボ社と共同で、メラノーマ患者の予後予測の研究を行っている。

2. メラノーマ(悪性黒色腫)のセンチネルリンパ節生検

当科には道内各地から多くのメラノーマ患者さんが入院し加療されている。メラノーマ診療は、皮膚悪性腫瘍ガイドラインに沿った標準的診療を基本に行われるが、原発腫瘍の部位と病期、基礎疾患、腫瘍細胞の組織学的および遺伝子的背景、のみならず、患者さんの年齢、家族関係、人生設計、闘病意欲などを多くの臨床的、社会的要素考慮して患者さんごとに治療計画を立て、個別的な治療を行っている。とくに生検に頼らないダーモスコープによる術前診断とセンチネルリンパ節生検によるリンパ節転移の診断と治療の進展は特記すべきレベルにある。

メラノーマは高率にリンパ節転移を起こすため、これまで長いあいだ所属リンパ節の廓清が行われて来た。当科では7年前より、同定率の高いRI法と色素法によるセンチネルリンパ節生検を開始し、昨年より蛍光色素 (ICG) を組み合わせてさらに検出感度を高めた方法を採用している。これまで、50例以上の経験があるが、中には、腫瘍の厚さ<1 mmでセンチネルリンパ節に転移が会った症例、逆に>4mmで転移が無かった症例もあり、正確な病期診断と予後予測が可能となった。

3. イミキモドによる皮膚癌治療 (臨床研究)

自然免疫を担うトール様受容体7 (TLR7) を活性化するイミキモド外用剤は、現在、外陰部のウイルス性疣贅である尖圭コンジローマと露光部皮膚の表皮内癌である日光角化症に適用されている。欧米では日光角化症に加えて、表在型基底細胞癌の治療にも使用されている。当科では、大学の承認を得た上で、臨床試験として、高齢者で手術不適応の皮膚癌患者を選択して、イミキモド外用による皮膚癌の治療を行っている。これまで、日光角化症、ボーエン病、ボーエン様丘疹症、有棘細胞癌、基底細胞癌,乳房外パジェット病の計16症例の悪性腫瘍をイミキモド外用(1日おきに4週間〜16週間)で治療し、12例に完全消失を確認している。治療経験から、紅斑、びらん、あるいは潰瘍が出現しても、副作用というより治療効果であり1週間の治療中止で上皮化し、再開後は反応が出なくなる事が多かった。なお、欧米では、臨床試験として顔面の悪性黒子 (メラノーマin situ) にも使用され優れた臨床効果が報告されている。

4. 乳房外Paget(パジェット)病におけるCK19(サイトケラチン19)の免疫染色とCYFRA21-1(シフラ)値についての後方視的研究

乳房外Paget病は非常に稀な皮膚がんです。外陰部(性器の回り)に多く、発見から受診するまでの期間が遅くなりがちで、進行してから受診されることが多いです。転移がなければ標準治療は手術治療ですが、腫瘍マーカー(がんが増えるとあがる検査値)などの検査法は確立されていません。サイトケラチン19(CK19)という物質は上皮系(皮膚、気管支、汗管など)由来のマーカーであり、乳がん、肺がんなどで発現していることが判明しています。 乳房外Paget病についてはわかっていません。 CK19は血液から測定することができます。乳房外Paget病でCK19が発現していることがわかれば、腫瘍マーカーとしての有用性が期待できます。乳房外Paget病の患者さんの転移の有無、腫瘍マーカー、腫瘍細胞(がん細胞)におけるCK19染色の関連を検討することで、今後の経過観察(フォローアップ)に有用な情報が得られると考えています。 ○方法・研究対象: 2013年1月1日から2016年3月31日に札幌医大皮膚科において乳房外Pagetと診断されて治療をうけられた方々の診療録(カルテ)を対象とし、治療内容、腫瘍マーカーの値、転移の有無についての情報収集を試みます。また、過去に行った皮膚生検または手術時の腫瘍組織を用いてCK19(サイトケラチン)の染色を行います。 情報収集の作業に当たる人員は医師をはじめとする医療知識のある研究者です。この作業で収集した情報を通じて、乳房外Paget病のCK19の染色性、腫瘍マーカーの有用性ついて検証します。 ○個人情報保護に関する配慮: 閲覧する診療録には個人情報が含まれますが、患者さん個人が特定されないやり方で情報を収集します。対象となる患者さんの識別は本研究専用に別途割り振られた研究番号を使用して管理し、個人情報が外に出ることはありません。患者さん等からのご希望があれば、その方の診療録は研究に利用しないようにしますので、次の連絡先まで申して出てください。照会先 〒060-8556 札幌市中央区南1条西17丁目 札幌医科大学 皮膚科   加藤潤史 平日 TEL 011-611-2111 内線 3455(教室) 夜間休日 TEL 011-611-2111 内線 3462 (9階北病棟看護室)

5. 有棘細胞がんのPD-L1(ピーディーエル1)とCK19(サイトケラチン19)染色と悪性度の関連についての後方視的研究

○研究の背景・目的 有棘細胞がんは皮膚のがんの一種です。転移する率は転移がなければ標準治療は手術治療です。転移する率は5-10%と報告されています。 他のがん腫では、転移がおこったがんと、転移していないがんでPD-L1という蛋白や、サイトケラチン19(サイトケラチンとは、細胞骨格に必要な分子)発現の程度が異なっていると報告されています。有棘細胞がんにおいては、まだわかっていません。これらの染色の程度で、転移しやすいかどうかがわかれば、今後の経過観察(フォローアップ)に役立つ情報が得られると考えています。 ○方法・研究対象:2008年1月から2016年6月の間に札幌医大皮膚科において有棘細胞がんと診断されて治療をうけられた方々の診療録(カルテ)を対象とし、治療内容、転移の有無についての情報収集を試みます。また、過去に行った細胞検査または手術時の腫瘍組織を用いてPD-L1ならびにCK19の染色を行います。情報収集の作業に当たる人員は医師をはじめとする医療知識のある研究者です。この作業で収集した情報を通じて、染色の程度で、有棘細胞がんの悪性度(転移するリスク)が異なるかどうかについて検証します。 ○個人情報保護に関する配慮: 閲覧する診療録には個人情報が含まれますが、患者さん個人が特定されない方法で情報を収集します。対象となる患者さんの識別は本研究専用に別途割り振られた研究番号を使用して管理し、個人情報が外に出ることはありません。患者さん等からのご希望があれば、その方の診療録は研究に利用しないようにしますので、次の連絡先まで申して出てください。照会先 〒060-8556 札幌市中央区南1条西17丁目 札幌医科大学 皮膚科 加藤潤史 平日 TEL 011-611-2111 内線 3455 (教室) 夜間休日 TEL 011-611-2111 内線 3462 (9階北病棟看護室)

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