情報伝達制御医学専攻:生体機能制御学領域 |
細 胞 機 能 情 報 学 |
スタッフ 教授 當 瀬 規 嗣 助教授 嵯 峨 賢 次 |
生命の躍動の源に迫る |
我々が"生命の息吹"を感じるのは、その生命体が"動いている"ことを認知したときに他ならない。この“動き”の原動力はイオンチャネルによってもたらされる。すなわちイオンチャネルは生命の息吹の主座である。本講座は、このイオンチャネルを構造、機能、発生にはじまり、組織での分布や病態での役割まで、広く検討を加えている。この研究領域は全ての医学領域に貢献するものであり、広く研究者を募っている。 |
研究テーマ |
1 イオンチャネル構造の発生学的変化
4 生理的機能でのイオンチャネルの役割 2 イオンチャネル機能のノイズ解析 5 発生期心筋細胞のカルシウム動態の変化 3 疾病の原因としてのイオンチャネル機能異常 |
研究内容の具体例 |
1 | イオンチャネル構造の発生学的変化 |
発生期は各器官の形態や機能がダイナミックに変化し、これは遺伝子の発現や改変によって制御されると考えられる。イオンチャネルは蛋白質であり、その情報は遺伝子にコードされているので、発生期にはダイナミックな変化が観察されると期待されるが、その研究は少ない。我々は発生学的知見が集積し、なおかつ、イオンチャネルを豊富に持つ心筋に注目し、その発生学的変化とイオンチャネル遺伝子の変化の関連を解明している。現在、カリウムチャネルとカルシウムチャネルの変化に注目しており、構造の変化と機能分化の関連を解明しつつある。 | |
2 | 疾病の原因としてのイオンチャネル機能異常 |
先天性疾患の一部はすでに、ある種のイオンチャネルをコードする遺伝子の変異が疾病の原因であることが解明されつつある。我々は現在、先天性致死性不整脈に関連する遺伝子がイオンチャネルをコードしていることから、この異常なイオンチャネルの機能を正常なものと比較検討している。また、遺伝的でない慢性病の病的環境下でのイオンチャネル機能の変化が、病態を如何に修飾しうるかについて、様々なモデル動物を用いて検討している。 | |
3 | 発生期心筋細胞のカルシウム動態の変化 |
心筋細胞の興奮収縮連関では、T管系と小胞体が重要な役割をしているが、これらの小器官は胎児期の心筋には存在しない。そこで、胎児期の心筋収縮力発生のメカニズムについて、共焦点レーザー顕微鏡を駆使して解明を行っている。 |
大学院での研究生活について |
講座のテーマはイオンチャネルということであるが、イオンチャネルに関連すれば、具体的テーマは基本的に各研究者が独自に考え、研究を遂行するものと考えている。研究の基本的手技、思考法、論文講読法、論文作成技術はその都度、指導教官との対話の中でなされる。したがって、時間は基本的に拘束しないが、教室の抄読会、セミナーへの参加が最低の義務であり、年に1〜2度の国内国外学会などでの発表、1〜2年に1編程度の英文論文の執筆が目標になる。 |
大学院修了後の進路 |
大学院修了後、希望する者には海外留学先の斡旋を行う。また、修了後に臨床研修を希望する場合は、希望する研修先との間での交渉、斡旋を行う用意がある。もちろん、研究者の道を進む者が多くなることを一番希望しているし、そのための最大限の助力をする用意がある。 |
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情報伝達制御医学専攻:生体機能制御学領域 |
分 子 機 能 制 御 学 |
スタッフ 教授 黒 木 由 夫 講師 相 馬 仁 坂 根 郁 夫 |
生命の本質から分子病態へ、ともに学ぼう。 |
遺伝子・蛋白質・脂質の緻密な高次構造と特異的な個別の機能が有機的に統合されて生体の生理機能が発現するが、その分子構造、あるいは、分子間相互作用の異常が様々な病態を形成する。本講座では、生体における統括的な代謝調節を分子レベルで解析するという基礎的命題に加えて、遺伝子工学的及び細胞生物学的手法を駆使して病態形成の医化学を分子レベルで探究する。将来、臨床医を目指す人も、「分子レベル」の研究の経験が必須の時代となった。ともに学ぼう。 |
研究テーマ |
1 生理機能発現の分子機構−蛋白質分子の構造及び遺伝子制御の関わり 2 生体防御−自然免疫の分子機構 3 脂質代謝動態の制御機構 4 細胞内小胞の移動、分泌の分子機構 5 病態生化学 |
研究内容の具体例 |
1 | CD14/Toll様受容体の関与する自然免疫生体防御機構 |
CD14/Toll様受容体は、外界からの病原微生物の侵襲に対して菌体成分の受容体として働き、生体反応を惹起し、感染から生体を防御する。これらの受容体と菌体成分との相互作用及びそのシグナルが、いかにして受容体の細胞外ドメインから細胞内ドメインへ、そして細胞内シグナル経路へ伝達されるのか、その分子機構を解明する。 | |
2 | レクチンによる感染防御機構 |
血中に存在するマンノースレクチン(MBL)、肺に存在するサーファクタント蛋白質SP-AとSP-Dは糖質結合能をも つレクチンであり、種々の細菌、インフルエンザウイルスやHIVを認識する感染防御の初期急性期反応物質として重要である。細菌菌体成分やウイルス蛋白質に対する、これらのレクチンの認識機構を明らかにし、レクチンによる病原微生物に対する直接的な防御作用及び感染時における抗炎症作用の分子機構を解明する。 | |
3 | 細胞とリガンド蛋白質との相互作用の解析 |
遺伝子工学的手法を用いてMBL、SP-A及びSP-Dと上皮細胞、マクロファージ系細胞に発現する受容体との結合動態を解析し、受容体分子を蛋白質及び遺伝子レベルで同定解析する。 |
大学院での研究生活について |
助教授、あるいは、講師がスーパーバイザーとして大学院生の指導に当たります。自分自身で実験の計画と実行ができるようになるまで、特に、最初の1年間は、実験とその結果に対する討論をほとんど毎日行います。研究成果を月に1〜2回の教授とのミーティングで報告し、今後の研究方針を決定していきます。大学院生の自主性を尊重し、各自のスケジュールに合わせた研究が可能です。 |
大学院修了後の進路 |
大学院修了後の進路は様々であるが、留学を希望する者に対しては留学先を紹介している。 |
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情報伝達制御医学専攻:生体機能制御学領域 |
細胞機能制御学 |
スタッフ 教授 加 納 英 雄 講師 和 田 郁 夫 |
オリジナリティのある研究をやろう |
私達は膜脂質のシグナリングと脂質合成両者を制御するジアシルグリセロールキナーゼとホスファチジン酸ホスファターゼのcDNAクローニングに初めて成功し、興味ある構造を持つ、新しい機能分子を発見しました。ホスファチジン酸ホスファターゼは予想外に細胞の移動、分化にも関与していることが明らかになっています。このほか分泌蛋白質の品質管理機構(カルネキシン、カルレテイキュリンの作用分子機構)の研究でも、最先端の成果を挙げています。 |
研究テーマ |
1 膜脂質シグナル系の制御機構 2 ジアシルグリセロールキナーゼ 3 ホスファチジン酸ホスファターゼ 4 分泌蛋白質の品質管理機構 5 分子シャペロン(カルネキシン、カルレテイキュリン) |
研究内容の具体例 |
当研究室で初めて発見し、現在研究中の新しい機能分子(ジアシルグリセロールキナーゼとホスファチジン酸ホスファターゼ) |
大学院での研究生活について |
自由にのびのび実験・研究してください。研究費は充分です。 |
大学院修了後の進路 |
大学院修了後の進路は様々であるが、留学を希望する者に対しては留学先を紹介している。 |
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情報伝達制御医学専攻:生体機能制御学領域 |
生体分子解析学 |
スタッフ 教授 賀 佐 伸 省 助教授 能 野 秀 典 |
生体成分の形を視よう! |
生体を構築し、生理機能を発現する物質は支持組織などの無機化合物を除いて、すべて有機化合物である。生体内には、いまだにその化学構造が未同定の微量物質があるが、微量であるから生理機能も微弱であるとは限らない。微量であるが故に構造解析が見逃されている物もあり、近年の構造解析機器の高分解能化や高性能化はその壁を破りつつある。基礎や臨床にとらわれない医学領域における、最新の機器分析による業績を是非知っていただきたい。 |
研究テーマ |
生体反応の分子機構を理解するための生体構築分子の解析ため、直接的な方法論の理解を目指す。すなわち、生体機能に関わる蛋白質、脂質、複合糖質、核酸の一次及び高次構造について、数種の最新機器分析装置(核磁気共鳴装置、質量分析装置など)を用いた解析法を講義し、必要に応じて実習する。 (1)蛋白質、糖質、オリゴヌクレオチドの各配列の解析法。 (2)蛋白質及び糖質の高次構造の解析と生体反応との関連。 (3)生体分子の構造解析のためのその他の機器分析法。 |
研究内容の具体例 |
(1) | 最新型質量分析装置(MALDI−TOF−MS)によって蛋白質(増殖因子やサイトカイン)の分子量測定とアミノ酸配列、糖鎖(糖脂質、糖蛋白質、グリコサミノグリカン)の単糖配列、オリゴヌクレオチドの配列を解析し、新たな物質を種々の組織より検索する。 |
(2) | 核磁気共鳴装置(NMR)やX線解析装置による蛋白質(カルモジュリンなど)及び糖質(各種オリゴ糖)の高次構造を解析し、抗原抗体反応などの生体反応との関連を追究する。 |
(3) | 生体新奇成分の構造解析のため、その他の機器分析法(GC−MS、円二色法など)を利用する。 |
大学院での研究生活について | |
経済的な支援は公的資金に委ねる。研究体制の特徴は、研究の基礎的な物質の調達や物質の有機合成、化学修飾を当教室のスタッフが支援することであり、また、国内外にもそのための幅広い
connection を持っていることである。 |
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大学院修了後の進路 | |
留学先:(1) | Chairman,Prof.R.K.Yu,Neurobiology,Institute
of Molecular Medicine
and Genetics,Medical College
of Georgia,Augusta,Georgia,U.S.A. (糖脂質と関連蛋白の解析 : 業績の有無は不要) |
(2) | Prof.S.Kornfeld,Div.of Hematology and Oncology,School of Medicine,Washington University,St.Lous,Missouri,U.S.A.(リソゾーム酵素関連蛋白の動態と遺伝子解析 : 留学にはかなりの業績を要する) |
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情報伝達制御医学専攻:生体機能制御学領域 |
分子細胞生物学 |
スタッフ 助教授 森 谷 常 生 高 橋 延 昭 講師 宮 下 洋 子 |
細胞機能のダイナミズムを分子生物学的アプローチで探求しよう |
生体反応の分子機構を理解するための生体構築分子の解析ため、直接的な方法論の理解を目指す。すなわち、生体機能に関わる蛋白質、脂質、複合糖質、核酸の一次及び高次構造について、数種の最新機器分析装置(核磁気共鳴装置、質量分析装置など)を用いた解析法を講義し、必要に応じて実習する。 |
研究テーマ |
1 遺伝子の転写調節と肉腫の発生機序に関する研究 2 皮膚の光センサーに関する研究 3 海洋天然物を用いてのがん細胞機能制御に関する研究 |
研究内容の具体例 |
1 | ETS(Etwentysix)と呼ばれる転写因子はDNA結合性の細胞核タンパクであり、遺伝子の転写を調節して細胞の分化や発生に関わる。一方で、染色体転座による遺伝子融合の結果、腫瘍に特有の転写因子に豹変し、ヒト白血病やEwing肉腫の原因となる。我々はこの転写因子が制御する遺伝子を培養細胞のレベルで同定し、肉腫原因遺伝子を導入したマウス実験系を用いて肉腫発生機序の生体内解析を目指している。 |
2 | アフリカツメガエル幼生の体表に存在する色素細胞は光応答性を示し、光存在下で色素顆粒は凝集し、暗黒下で拡散する。この細胞には光受容物質として、ロドプシンとメラノプシンが存在している。ヒトを含む一般の動物の体表に存在する色素細胞における光応答性についても、その分子反応機構を明らかにしていく。 |
3 | 褐藻類の酸性多糖フコイダンの酸性分解によるオリゴフラクトースが紡錐形のがん細胞を偏平な正常形態へと復帰誘導する。その細胞形態制御機構の解析を遺伝子レベルへと推し進めつつある。 |
大学院での研究生活について |
細胞培養、動物実験、免疫組織化学、核酸や蛋白の分析などの基本的な手技を習得するとともに、新しい技術や方法の把握をすすめる。スタッフとのDiscussion、論文などの講読、研究の記録や発表などの日常活動を通じて研究の基本を身につける。 |
大学院修了後の進路 |
基礎医学系、臨床医学系、他学部出身者など、大学院生により様々な進路が考えられる。留学を希望する者には留学先を紹介するなど、具体的に対応する。 |