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分子・器官制御医学専攻:器官機能治療学領域

放射線治療診断学

スタッフ 教授 晴 山 雅 人  助教授 坂 田 耕 一
           講師 藤 森 研 司

放射線に秘められた夢を求めて
  レントゲン博士によるX線の発見、ベクレル先生による放射能の発見以来100年余りが経過しました。今や、放射線医学は、工学、技術の進歩と共に医療の最先端を走っています。
  しかし、放射線と生物との関わり合い、放射線を応用した様々な技術革新等、まだまだ解明しなければならない多くの課題があります。素朴な疑問と新しい発想を持って、放射線の謎と夢に挑戦しようではありませんか!


研究テーマ
1 薬物動態の解析        5 Interventional Radiology(IVR)におけるステントの開発
2 腫瘍核医学           6 定位放射線治療
3 画像ネットワーク        7 放射線抵抗性の発現機序
4 MRスペクトロスコピー


研究内容の具体例
 マルチコンパートメントモデルによる薬物動態の解析と、臓器機能の推定。特に肝切除に際して肝予備能の評価。
 悪性腫瘍の検出能に関与する各種因子を分析して、理論モデルによるシュミレーションによる各因子の寄与、更に改良点を探る。
 インターネットを利用した遠隔画像診断の実用化に向けて、画像フォーマットの統一化、経済性、臨床情報並びに診断報告書の転送、さらに、暗号化によるセキュリティの確保の研究。
 MRSの鑑別診断への応用、さらに、放射線治療、化学療法後の効果判定、経過観察への有用性の検討。
 血管内及びその他の管腔内の狭窄部の拡張に用いるステントの開発、安全性の検討。
 細いビームを用いて病巣部に線量を集中させ、周囲の健常組織には障害を与えずに行う治療法と、さらに、生理的運動のある臓器の病巣部の照射では、生理的運動にビームを同期させて、健常組織の障害を防ぐ治療法の研究。
 放射線誘発アポトーシスを究明して、放射線障害の修復機構、放射線抵抗性獲得の機序を解明して放射線治療への応用を研究する。


大学院での研究生活について
  1年目は、臨床を中心にした放射線治療診断学を学んで、2年目から研究を中心とした活動を行っている。将来は両者を両立することができるよう頑張って行きたい。


大学院修了後の進路
 大学院修了後の進路は、治療・診断・核医学・IRVを選択し、放射線科専門医を目指すとともに、研究を希望する場合は継続することができる。また、留学を希望する者に対しては留学先を紹介している。




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分子・器官制御医学専攻:器官機能治療学領域

消化器機能治療学

スタッフ 教授 平 田 公 一  講師 桂 巻   正  浦   英 樹

外科学は患者の人権と尊厳を大切にしたいと考える
           若人へのメッセージであるとともに真の医療実践学
 分子生物学や合成工学分野の発展に伴い、その臨床応用を最も期待されているのが外科領域です。治療法とその手技(鏡視下手術、ロボット手術、臓器・細胞の修飾化など)に注目が集まっていますが、鏡視下手術以外は研究レベルとしては、登山口に着いたばかりのものです。研究途上の移植・遺伝子操作・人工臓器などが適応となる疾患としては、当講座で治療すべく義務付けられている疾患が多いことも実状です。固型癌治療など、直接人命に役立つ研究を目指す若人を募ります。


研究テーマ
1 遺伝子治療及び幹細胞操作による代謝疾患・固型癌治療
2 既成概念から脱却した新手術法の開発(乳腺・肝・胆・膵癌)
3 細胞・臓器移植と温阻血障害・免疫抑制・免疫寛容誘導・遺伝子操作治療
4 乳管・胆管・膵管内癌の悪性度に関する分子生物学研究
5 癌転移機序の解明とその臨床応用
6 人工臓器を目指した正常上皮細胞(肝・膵)の長期培養


研究内容の具体例
 大動物(主として豚)や小動物を使用して肝移植・小腸移植を実施し、新しい再灌流障害抑制法やトレランス誘導の研究を行っています。サイトカイン、免疫担当細胞上の蛋白発現とその制御に関わるgene、転写因子の消長を研究手法としています。臓器移植後の拒絶反応の治療法として、我々は細胞接着分子を介した副シグナルと呼ばれる情報伝達をブロックすることによって移植片特異的な免疫寛容の誘導に挑戦しています。人工血液を用いた特殊な灌流液によって体外で肝臓そのものを常温で灌流し、長時間機能を維持させながら保存することに成功しており、近い将来、臓器培養法を開発したいと考えています。
 乳房・胆道・膵臓・肝臓の臓器・組織温存療法が進歩した一方、組織・臓器内再発もあり、その主因としては、管内癌の遺残とリンパ節転移が指摘されています。教室では細胞・組織学的因子と共に様々なparameterを用いて癌発生の機構と病態を研究し、その結果として、より適切な縮小手術法の開発を行っており、本邦で指導権を発揮しています。
 癌転移は複雑な過程を経て成立しますが、その詳細な機序はいまだに解明されておりません。本講座では、独自に作成した動物実験転移モデルを用いて転移機序の解析と転移の阻止に関する分子生物学的研究を進めており、DNAチップによる解析など臨床例においても癌悪性度の評価や予後予測診断に利用しております。


大学院での研究生活について
 1年目を臨床に、3年間を基礎研究・高度手術手技修得に当て、将来の指導者となることを期待されて教育されます。シャープでやさしいエキスパートとして育つべく、厳しくも楽しい研究生活をできるシステムを作っています。生活上の経済的な心配は全くありません。研究成果は教授ほか指導教官の助言により、国際的雑誌に発表されています。


大学院修了後の進路
  大学院修了後は外科医として本学医学部附属病院第1外科、もしくは第1外科関連施設において臨床研修を行う。同時に、世界の最先端を行く施設での海外留学を推奨している。




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分子・器官制御医学専攻:器官機能治療学領域

呼吸循環機能治療学

スタッフ 教授 安 倍 十三夫  講師 森 下 清 文  小 松 幹 志
        〃 森 川 雅 之

胸部心臓血管外科の新時代を切り開くのは君だ!
  近年の胸部心臓血管外科の進歩はめざましく、10年前には治療が不可能だった症例に対しても、新しい手術法周術期の技術の革新によって、外科治療が可能となってきている。この飛躍の時代に胸部心臓外科領域の臨床、研究に打ち込みたい熱血漢の諸君、来たれ。君の求めるものが、ここにある。


研究テーマ
1 移植免疫反応の機序解明とその抑制移植臓器や同種弁の保存
2 開心術時の心筋保護
3 虚血再灌流による臓器障害における発生機序の解明とその抑制
4 大動脈瘤手術時の脳脊髄保護
5 心拍動下CABGのための手術器具(スタビライザー)の開発
6 補助循環による重症心不全の治療
7 先天性心疾患の外科治療
8 胸腔鏡による低侵襲呼吸器外科


研究内容の具体例
 肺移植における急性拒絶の抑制
 フォルスコリン誘導体、NKH477はアデニレートサイクラーゼ活性化剤として細胞内cAMPの上昇に働く。これにより細胞内の情報伝達が阻害されIL−2などのサイトカインの産生が抑制されると考えられる。そこで、ラットの同所性同種肺移植を用いた急性拒絶の系でNKH477の免疫抑制効果およびその機序を検討している。
 肺移植における慢性拒絶の抑制
 慢性拒絶の一型と考えられている閉塞性細気管支炎のモデルとしてマウスの同種気管移植後に発生する気管内腔の閉塞性病変が知られている。このモデルを用いて閉塞性病変の発生機序を解析している。また、B7−CD28、CD40−CD40Lの相互作用を阻止することにより閉塞性病変の抑制が可能か否かについて検討している。
 hANPによる虚血再灌流障害の抑制
 ヒト心房性(hANP)は細胞内カルシウムの過負荷を抑制することにより心筋細胞の虚血再灌流障害を軽減するとされており、hANPは開心術に伴う心臓の虚血再灌流障害に対しても抑制的に作用することが期待される。ラットの摘出心や単離心筋細胞を用いた虚血再灌流モデルでhANPの障害抑制効果及び細胞内カルシウム動態に与える影響を検討している。


大学院での研究生活について
  大学院生としてではなく、ある程度の臨床能力を得るために、最初の2年間は関連病院にてトレーニングを受ける。この間、実験研究班と緊密に連絡を取り、実験テーマを決定し、3年目以降に実験を開始し、卒業論文を書き上げる。この間、十分な収入が得られるように配慮されており、実験に専念できる。


大学院修了後の進路
(例1) 大学院修後の進路は様々であるが、留学を希望する者に対しては留学先を紹介している。
(例2) 内科医として本学医学部附属病院総合診療科及び第2内科での臨床研修が待っている。同時に、世界の最先端を行く施設での海外留学を推奨している。


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分子・器官制御医学専攻:器官機能治療学領域

感覚・運動機能治療学

スタッフ 教授 石 井 清 一  助教授 山 下 敏 彦
                                              和  田  卓  郎

21世紀のクオリティー・オブ・ライフの向上をめざして
 人間がより質の高い生活をおくる上で、良好な感覚・運動機能を保つことは欠くべからざる条件である。疾患や外傷により損なわれた感覚・運動機能を回復させることだけでなく、スポーツ医学をはじめとする、正常な機能をより向上させるポジティブな医学も21世紀に向けて求められている。当講座では、生体工学、電気生理学、分子生物学などの先端科学を駆使して、人間のクオリティー・オブ・ライフを向上するための研究を多角的に推進している。


研究テーマ
1 関節・脊椎のメカノレセプター          5 組織再生医学
2 四肢の複合組織移植              6 骨代謝
3 骨・軟部腫瘍の免疫学・分子生物学        7 関節軟骨のイオンチャネル
4 靱帯・腱のバイオメカニクス          8 骨・関節の退行変性



研究内容の具体例
 1 関節や脊椎のメカノレセプター
 メカノレセプターとは、関節や脊椎に対する機械的刺激や位置感覚、運動感覚などの情報を感受し中枢へと伝える受容器である。当講座では、電気生理学的手法を用い、メカノレセプターの分布や特性を分析している。この研究により得られるデータは、四肢・脊椎からの疼痛発生機序の解明や、スポーツ医学における運動制御機構の解析などに有用である。
 2 複合組織移植
 マイクロサージャリーのテクニックを用いた四肢の骨・関節等の複合組織移植を行っている。この手法により、骨肉腫などの悪性腫瘍に対する患肢温存療法が可能になっている。当講座では、複合組織移植をさらに推進するために、移植免疫などの基礎的研究を行っている。
 3 骨・軟部腫瘍の免疫学・分子生物学
 骨肉腫をはじめとする骨・軟部腫瘍の治療成績をさらに向上させるために、様々な方向から研究を進めている。
 主な研究課題として、骨肉腫・軟部肉腫の腫瘍抗原の同定、転座遺伝子産物を標的とした滑膜肉腫の免疫療法、接着分子ワクチンを用いた骨肉腫の遺伝子療法などがある。


大学院での研究生活について
 大学院生の研究は、当講座の教官あるいは基礎医学講座の教官の指導のもとに行われる。研究の経過や成果は、毎週火曜日朝に行われる研究カンファレンスで順次発表され、教授をはじめとするスタッフによる方向づけや助言が行われる。大学院生は、研究を本分とするのはもちろんだが、臨床的な勉強も平行して行うことができる。すなわち、週1回程度の関連病院での臨床研修の機会が与えられている。大学院での研究生活中の生活費は、関連病院での臨床研修などの手段で保証されている。


大学院修了後の進路
  大学院修了後、臨床研修を希望する場合は、本学医学部附属病院を含む整形外科学教室の教育関連施設で研修をすることができる。海外留学あるいは国内留学を希望する場合は、留学先を紹介している。




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分子・器官制御医学専攻:器官機能治療学領域

泌尿生殖器・内分泌治療学

スタッフ 教授 塚 本 泰 司  助教授 遠 藤 俊 明  伊 藤 直 樹

泌尿器科の時代なのだ
  泌尿器科学は外科学である。外科学は肉体と頭脳のfusionの結晶である。当教室の主要研究テーマは大きく3つに分けられる。尿路性器腫瘍、尿路感染症、臨床男性科学(Andrology)の3つである。高齢化社会に突入した現在、尿路性器を含めた腫瘍学、さらに、生活の質を重視する新しい概念の下での性機能障害の原因の解明、治療ならびに尿失禁の治療さらには、尿路・性器機能の再生・再建医学などが重要な問題である。


研究テーマ
1 泌尿器科内分泌学
2 男子性機能・男子不妊症の成因と治療の研究
3 泌尿生殖器腫瘍学、特に浸潤・転移とその抑制の研究
4 前立腺肥大症の発生機序と尿水力学の研究
5 尿路感染症の発生機序と治療の研究、特に尿路粘膜免疫学
6 性感染症の疫学、発生機序、治療学
7 泌尿器再生・再建医学
8 腎移植


研究内容の具体例
 尿路性器腫瘍は尿路性器癌の浸潤及び転移のメカニズムを分子生物学的に分析しており、得られた成果の一部は実際の臨床にも応用されている。尿路性器腫瘍に対する外科治療に関してはQOLを重視した尿路変更術や神経温存手術を行っている。さらに腹腔鏡手術も数多く行っている。高齢化社会に伴い問題視されている排尿困難に対しては、前立腺集団検診を全道各地で行い、前立腺肥大症や前立腺癌の早期発見に努めている。
 尿路感染症は感染免疫、院内感染、尿路感染症に対する化学療法に関する研究を推し進めている。特に、院内感染の問題は古くから検討しており、本院の院内感染防止に貢献している。さらに、性感染症に関する臨床的研究にも力を入れている。
 臨床男性科学は精子発生機構やストレス、男性ホルモン、神経伝達物質が性中枢に与える影響等を中心に研究し、臨床的には顕微鏡下での精子吸引術あるいは精路再建術、勃起機能不全症例に対する外科的治療といったSurgical Andrologyを現在積極的に取り入れている。


大学院での研究生活について
 大学院へは、通常4〜5年の臨床経験を積んだ上で入学することを基本としている。動機付けのない研究は無意味だからである。したがって、自分の研究の計画、実行は当然の事ながら自ら行うことが必要とされる。我々は求めたときのみアドバイスを与え、さらに、月1回の研究報告の義務を与えるのみとしている。あくまで自主性を尊重し、研究者の独創的な研究をサポートしていくことを方針としている。


大学院修了後の進路
 大学院終了後の進路は様々であるが、泌尿器科外科医としての修練をさらに重ねつつ、留学を希望する者に対しては留学先を紹介している。
 大学院終了は、あくまでも泌尿器科としても第1ステップであり、さらなる飛躍は、本人の意志によるところが大きい。




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分子・器官制御医学専攻:器官機能治療学領域

口腔機能治療学

スタッフ 教授 小 浜 源 郁  助教授 田 中 信 幸
                   講師 永 井   格   野 口   誠

顎顔面口腔領域の最先端の研究
 歯科界では8020運動と称して、80歳まで20本の歯を有し、終生食物摂取が充分に可能ならしめようと必死である。口腔外科領域では、口腔顎顔面領域の腫瘍、骨折、奇形などダイナミックな疾患を扱い、従来は疾患の切除、修復に専念していたが、ここでも術後の機能回復が広く求められている。このような環境の中、各疾患に対する、これまで以上の適切な診断が求められ、それらに対する研究は社会の急務である。


研究テーマ
1 口唇口蓋裂の術後の機能回復に関する研究
2 口腔癌の転移機序の解析
3 口腔癌における癌遺伝子及び癌遺伝子治療の研究
4 口腔癌の治療経過における細胞性免疫に関する研究
5 口腔腫瘍、骨折、奇形症などの術後の咀嚼機能の回復に関する研究
6 口腔周囲筋の生理機能に関する研究


研究内容の具体例
 口蓋裂の各種手術法において、術後の口腔粘膜、骨がどのように変化するかを組織学的に検索し、機能回復に最も適した術式を選択できるようにする。本研究では動物実験並びに骨膜細胞や口腔粘膜細胞由来の培養細胞も分析している。
 当科で考案した口腔癌の組織学的悪性度指数に対し、口腔癌の術後成績の更なる向上を目指し、これに付加すべき因子に関し分子生物学的アプローチを行い検討している。具体的には、細胞接着に関与するラミニン、コラーゲン、p53やp130などの癌遺伝子、アポトーシスについての検索である。
 また、これらの因子が口腔癌の浸潤、転移にどのように関与するかについても検討中である。口腔癌に対する新しい治療法としてサイトカイン療法を念頭に置き、細胞性免疫の口腔癌治療過程における変化を検討している。
 口腔疾患の術後の咀嚼機能の回復のために当科では、インプラントを用いているが、これの使用により、その機能回復がどのように図られるのかを咬合の変化による口腔周囲筋の生理機能の変化をまじえつつ検索している。


大学院での研究生活について
 口腔外科講座大学院の研究生活で必要なことは、探求心の継続と体力、そして行動力です。絶えず臨床に接点を持ちながら研究生活を続け、学問の追及のみが求められます。自活の方法も大学院生に必要な研究テーマであり、独自の研究となります。研究者としての成長度とその生活レベルが研究成果を表しているように思います。


大学院修了後の進路
1 本学医学部附属病院歯科口腔外科並びに関連病院での臨床研修を行う。
2 世界の最先端の研究、臨床を学びたい者は、海外留学先を紹介する。




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分子・器官制御医学専攻:器官機能治療学領域

中枢神経機能治療学

スタッフ 助教授 田 辺 純 嘉  講師 八 巻 稔 明

21世紀は脳の時代
 脳は人類に残された最後の Black Box とされ、近年その関心が世界的に高まっている。自分の存在認識、意識の形成、感情や情動の発生、行動様式の解明等、脳を科学したいという欲求は人類が古代より持っているものであるが、今こそ、それが可能であり、また、するべき時代である。そして、神経科学の発達により、従来では不可能とされていた神経脱落症状の回復が神経移植療法や遺伝子療法の開発によって可能となりつつある。特に、成熟脳における神経幹細胞の発見により、神経系の発達、正常脳の維持機構(cell turn over)及び神経系の各種疾患に対する認識が相当変化した。神経幹細胞の抽出・培養技術の確立により、神経幹細胞が脳機能再生における新たな治療法開発のbreak through になることは、今や世界中の科学者、医師、患者が期待するところである。細胞生物学、分子生物学、神経科学のめざましい進歩により、近い将来、神経機能再建のための新治療法の開発は、夢から現実のものとなるであろう。人生の一時、この時代の激流の中に身を置いてみたい人は、中枢神経機能治療学を専攻して欲しい。


研究テーマ
1 神経移植       2 神経幹細胞      3 遺伝子解析・治療


研究内容の具体例
 神経移植療法
 失われた神経機能の回復には、残された神経細胞による代償よりも、必要な細胞を新たに移植した方が神経ネットワークを再形成させやすいことは既知の事実である。近年の神経細胞抽出・培養方法、神経栄養因子の発見に伴い、ホストの損傷状況に応じた適切な移植細胞の選択が可能となってきており、臨床応用への期待も高まっている。従来では不治とされていた脳梗塞や脊髄損傷が治療可能となる日が必ず訪れることであろう。
 また、必要に応じて、遺伝子工学的操作により新たな機能を細胞に持たせた後に移植を行うことも可能である。本専攻領域では適切な神経再生療法に向け、ノックアウトマウスやトランスジェニックマウスを駆使した神経移植の基礎的研究とともに、様々な神経損傷モデルに対して多種の神経移植が試みられている。
 神経幹細胞
 中枢神経系細胞の源である神経幹細胞は、自己増殖能と多分化能を同時に保持した未分化な細胞である。ヒトを含め、哺乳類の脳は多種多様な細胞によって構成されており、脳神経疾患後遺症に対する機能回復(神経回路の修復)を目的とした治療戦略に置いて、multipotential である神経幹細胞をドナー細胞として用いた細胞移植療法は非常に希望が持たれている。
 哺乳類成熟脳においては、嗅球及び海馬以外では新たな神経細胞の産生は無く、中枢神経系が損傷を受けた場合、神経の再生は期待できず、自己修復は不可能と考えられていた。ところが、発生初期の神経管の管腔を覆う多列上皮が、正常脳では subventricular cells と総称され、生涯にわたって分裂、増殖の能力を持つ細胞、つまり神経幹細胞として成熟脳に存在し、分離・培養が可能であり、移植によって神経機能の回復が期待できることが判明した。
 中枢神経機能治療学では、ヒト成熟脳における神経幹細胞を分離培養・遺伝子組み換えを行い、種々の疾患モデル(脳梗塞モデル、頭部外傷モデル、脊髄損傷モデル)へ移植し、機能的な神経組織の再構築を試みている。
 遺伝子解析・治療
  遺伝子解析・操作が容易に可能となった現代では、遺伝的要因が示唆される疾患も急増し、遺伝子治療の対象となる疾患が数多くある。中枢神経機能治療学では、血管性病変(脳動脈瘤、脳梗塞、脳出血)、腫瘍性疾患、機能性疾患(てんかん、慢性神経痛)、外傷を問わず、遺伝子診断の方法の確立と遺伝子療法の開発を行っている。


大学院での研究生活について
 一口に研究をするといっても、たった一人で全てを遂行するのは非能率的で、しかも多大な精神的ストレスを伴います。本講座では、研究設備はもちろん、充実したスタッフが揃っており、自然に研究生活に入っていける準備が整っています。また、個人の創造力を最大限に引き出すことが良い研究に結びつくと考えており、充実した研究生活を保証します。言うまでもないことですが、経済的心配は無用です。


大学院修了後の進路
 大学院修了後の進路は様々であるが、希望により、脳神経外科医として本学医学部附属病院脳神経外科での臨床研修、または、世界の最先端を行く施設での海外留学を推奨している。