リウマチ性疾患診療ネットワークの構築について

 私たちは日本リウマチ学会で推進している「診断未確定リウマチ性疾患の病診連携モデル構築プログラム」に関するプロジェクトに携わっております。診断未確定リウマチ性疾患とは、既にリウマチ性疾患を発症しているにも関わらずリウマチ専門医の診療を受けられないため適切に診断・治療を受けることができない状態を含んでいます。特にリウマチ専門医の絶対数が不足しており、かつ専門医のいる札幌や旭川など都市部までのアクセスが悪い北海道の地域医療においては重大な問題と考えられます。

 関節リウマチとは、代表的なリウマチ性疾患の一つで、多関節の痛みや腫れを特徴とし関節の破壊・変形から機能障害を引き起こす炎症性疾患です。本邦における関節リウマチの有病率は0.5~1%程度と言われており、比較的高頻度に日常診療で遭遇する可能性のある疾患であるにも関わらず関節リウマチは見逃されている可能性のある疾患の一つです。関節リウマチは関節内の炎症に留まらず、ときに全身性の炎症へと進展し、患者の関節機能予後のみならず生命予後にも影響を及ぼします。有効な治療法のなかった時代において、関節リウマチ患者さんの寿命は、一般人口の寿命より約10年短いと言われていました。近年、関節リウマチの病態が明らかになっていくにつれ、いくつかのサイトカインをターゲットとした分子標的治療薬が開発され、関節リウマチの制御に大きな効果を示しております。また関節リウマチを早期に診断し、有効な薬剤を用いて関節リウマチを早期に寛解させることによって、関節リウマチの予後は劇的に改善しました。しかし現在でもなお、関節リウマチが適切な時期に診断されず治療介入が遅れた場合には、関節の破壊や変形が進行し、関節ならびに生命予後の悪化をきたしてしまいます。

 札幌医科大学は道立の大学として北海道の地域医療を担っており、私たち免疫・リウマチ内科では札幌医科大学附属病院の位置する札幌中心部のみならず、北海道全体のリウマチ性疾患診療の質の向上のため、以下にお示しします3つの活動を行っております。1つ目は患者さんおよびプライマリケア医の先生方にリウマチ性疾患について知ってもらい、患者さんの受診とプライマリケア医の先生方からリウマチ専門医への紹介を促すため本プロジェクトについてのWebサイトを制作し、また積極的に市民公開講座や教育講演を開催しております。2つ目として、関節リウマチ患者さんの早期発見のためにセルフチェックアプリの作成を行い、3つ目に診断未確定リウマチ性疾患のオンライン診療相談システムの構築をプロジェクトとして進めています。このプロジェクトを通じて、北海道の地域医療を担う先生方の支援や必要な医療を受ける機会が得られない患者さんや家族を支援し、ひいてはリウマチ性疾患患者の早期診断・早期治療介入を実現し、予後の改善に寄与していければと思っています。