IgG4関連疾患

 IgG4関連疾患は涙腺や唾液腺、膵臓や腎臓といった全身諸臓器のいずれか腫大や肥厚、硬化をきたす原因不明の慢性疾患です。免疫グロブリンGのサブクラスであるIgG4が血清中で増加すること、また罹患臓器にIgG4陽性の形質細胞の浸潤を認めることから、IgG4関連疾患と命名されました。しかし、臓器の腫大や肥厚、硬化といった病態と、IgG4の増加がどのように"関連"するのかはまだ詳しく分かっておりません。ミクリッツ病とは涙腺や唾液腺に対称性・無痛性の腫大・硬化をきたす疾患で、以前はシェーグレン症候群の亜型と考えられておりましたが、当教室では世界で初めてミクリッツ病患者の涙腺・唾液腺にIgG4陽性の形質細胞浸潤が認められることを発見し、ミクリッツ病はIgG4関連疾患の一臓器病変であり、シェーグレン症候群とは独立した疾患であることを示しました。IgG4関連疾患は一般的にステロイドが奏功する疾患ですが、ステロイド中止後の再発率が高いため長期の維持療法が必要となります。また一部のステロイド抵抗例や、副作用によってステロイドの忍容性が低い症例における治療法は確立していません。

 札幌医科大学附属病院には400人を越えるIgG4関連疾患患者さんが通院されており、世界的にも有数の症例数を誇ります。IgG4関連疾患はさまざまな臓器に病変をきたす可能性があるため、耳鼻科、消化器内科、腎臓内科、呼吸器内科など院内さまざまな診療科と協力して診療に当たっております。私たちはIgG4関連疾患に対するその豊富な臨床経験をもとにIgG4関連疾患の診断と新規治療戦略に関する研究を推進しております。現在私たちは神田真聡講師を中心に、IgG4関連の耳管腺病変 (Nagahata K, Kanda M, et al. Ann Nucl Med 2022)、デュピルマブを用いた新規治療 (Kanda M, et al. RMD Open 2023)、IgG4関連疾患患者の血中アミノ酸濃度分析 (Nakamura H, Kanda M, et al. Clin Exp Rheumatol 2024)、IgG4関連腎症や胆嚢炎の画像所見、IgG4関連疾患に擬態する疾患群との鑑別法など多くの臨床研究を行っております。また同時にIgG4関連疾患モデルマウスを用いた病態解析研究も行っています。