情報伝達制御医学専攻:生体構造情報学領域 |
分子病態生物学 |
スタッフ 教授 澤 田 典 均 講師 小 海 康 夫 |
The other side of the coin |
病理実習で顕微鏡を見ることがとても退屈だった君に伝えたい。病理って顕微鏡を見て病気の診断をすることを出発とします。けれど、それは病理学の片面なのです。病理は臨床と基礎のつなぎ目をします。様々な病気について、組織レベル、遺伝子レベルで、そのメカニズムを解明するのです。大学で学んだ病理のthe other side を、大学院で学ぶのです。そこでは、ダイナミックで、とても面白そうなことをやっています。 |
研究テーマ |
1 生体バリアの分子病理学 2 血液脳関門の分子病理学 3 タイト結合の新しい機能分子7H6抗原(Barmotin)の分子生物学 4 ギャップ結合と肝細胞の分化 |
研究内容の具体例 |
1 | タイト結合機能分子の制御 |
タイト結合は、すべての臓器組織に存在する。その分子機構を理解し、その生理的、病理的役割の解明を目指して、研究を行っている。教室で見い出した7H6分子は、タイト結合に特異的に存在し、そのバリア機能に関わることが示唆される。本分子の発現クローニングによって、新しい分子モーター Barmotin が見い出された。この分子を中心としたタイト結合の分子構造の解析を行っている。また、テトラサイクリン依存性転写因子とタモキシフェン依存性 cre リコンビナーゼを組み込んだF9細胞を用いて、タイト結合機能の解析を行っている。 | |
2 | 生体バリアの分子病理学 |
タイト結合の異常が原因と考えられる種々の病態が存在する。例えば、浮腫、下痢、黄疸、癌の転移などである。また、種々の炎症疾患(炎症性腸炎、多発性硬化症など)でもタイト結合の異常が推定されている。私達は、肝とBBBのタイト結合に絞って、その調節機構を解析している。肝では、ギャップ結合がタイト結合を制御していることを明らかにし、その機構を解析中である。 |
大学院での研究生活について |
大学院生はもう大人です。本人の意思がなにより尊重されます。研究の技術を伝えることはできますが、研究の喜びは自分の実験の中にあります。いかに良い実験をするか、どのように疑問にアプローチするか。作業仮説を立て、その先にある光明を最初に見る特権こそが、研究者冥利です。自分で考える生活は、自由でもあり厳しくもあるのです。 |
大学院修了後の進路 |
大学院修了後の進路は、本人の希望次第であるが、通常は留学を進めている。 |
情報伝達制御医学専攻:生体構造情報学領域 |
生体情報形態学 |
スタッフ 教授 辰 巳 治 之 講師 二 宮 孝 文 |
解剖学のルネッサンスに向け、来たれよ、向学の徒よ! |
解剖学の進歩は、観察装置の進歩に依存するところが多く、肉眼観察による解剖学、複合顕微鏡による組織学、電子顕微鏡による超微形態細胞学が確立され、解剖学は著しく進歩してきた。さて電子顕微鏡の次には何が来るだろうか?巷では、インターネット、マルチメディアと騒いでいるが、これら情報ツールを形態学研究にどのように活用できるのであろうか?この様なことを考え、解剖学のルネッサンスを目指し研究・開発を進めている。 |
研究テーマ |
1 消化管の超微形態学的及び三次元的解析 2 NOS,Mn−SOD等、免疫組織化学による組織及び細胞内分布についての解析 3 ネフローゼ自然発症(ICGN)マウスの形態学的解析 4 インターネットを活用した統合化三次元再構築システムの開発とその応用 5 神経培養による神経細胞の特性の解析 6 解剖学、形態学の情報を基にした医学一般のマルチメディア情報の統合化システムの開発と構築(URL http://www.sapmed.ac.jp) 7 Multi−language Digital Anatomical Database(情報G7サブプロジェクト8) |
研究内容の具体例 |
従来の手法、古典的解剖学を基盤に、各種研究機器・情報機器を統合し、ミクロ解剖学に重点を置きつつもマクロ解剖学の情報をも連結した新しい解剖学研究・教育方法の確立を目指しながら、それらを活用して上記のテーマについて具体的事例に取り組み研究を進める。これらの基盤になる活動を図で示す。 |
大学院での研究生活について | |
与えられたことだけを行うのではなく、自ら積極的に種々の問題に取り組み、探求心、向学心に燃えた人を希望するとともに、与えられた種々の条件下でフルに能力が発揮できるように指導したい。基本的には週休2日で、9:00〜17:00であるが、やる気のある人には無制限一本勝負ということになるであろうが、そのサポートはできるだけしたい。 |
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大学院修了後の進路 | |
大学院修了後の進路は様々であるが、留学を希望する者に対しては留学先を紹介している。 |
情報伝達制御医学専攻:生体構造情報学領域 |
生体機能構造学 |
スタッフ 教授 村 上 弦 助教授 伊 東 英 樹 講 師 本 間 賢 一 |
マクロ形態と発生・進化そして臨床医学との接点を求めて |
肉眼的あるいは実体顕微鏡レベルで直視下に3次元的に把握できる形態をマクロ形態と呼びます。形態を把握する様々な手法の中で、人為的な処理を受けないマクロ形態ほど、発生・進化そして臨床医学について多くのアイデアを与えてくれるものはありません。私達はマクロ形態を大切にし、さらに顕微鏡から分子発生学・分子進化学まで様々なアプローチを援用して、生物のマクロ形態の持つ原則を解析する集団です。 |
研究テーマ |
1 人及び脊椎動物のマクロ形態学、並びに人体解剖学の臨床応用 2 我が国最大規模の人類学標本を擁する研究拠点として、特に北方モンゴロイドとアイヌ 3 催奇形物質や奇形マウス群を用いた器官形成の解析、特に四肢形成における遺伝子発現> |
研究内容の具体例 |
1 |
人体マクロ解剖学の臨床応用 この2年間にまとめられた研究としては鼻泉門の変異、腓骨の栄養動脈、十二指腸の小動脈、肝静脈分布の相補的関係、骨盤神経叢のマクロ組織化学的検討、足関節の加齢変化などがあります。 今後は、爬虫類両棲類の比較解剖や形態形成遺伝子ノックアウトマウスの解剖など基礎的な課題も、展開したいと考えます。 |
3 |
マウス四肢奇形の発生メカニズム解析 足の腹側が背側化したmeromelia、合指症の hammer-toe という2種のミュータントマウスを系統維持している他、5−FUやカドミウムなどの薬剤投与によって引き起こされる多指や欠指などの四肢奇形についても、分子発生学的解析を進めています。皮膚紋埋観察法(図)は独自のもので、見過ごされてきた異常を次々に発見しています。 |
2 | 形態と分子からみる日本人の起源 アイヌ人骨、オホーツク海を囲む地域の先史人骨そして、北海道続縄文人形態的検討から、我々は、それぞれの関連を明らかにしてきました。これらの研究が日本人の二重構造仮説に果たす役割は計り知れません。現在も道内の遺跡から人骨の発掘が続いており、近年は、骨のDNA解析も進めています。 |
図:Shh/Msx-2トランスジェニックスマウス前肢 |
大学院での研究生活について |
1年目は研究の他に学部実習に参加。2年目以降は、講座内の謝金枠などを生かして大学院学生の学外研修を行います。また、当講座で行われている研究の性格上、大学院学生にも研究課題に関連した内容で臨床研修を行わせ、次世代のマクロ解剖学指導者を養成するつもりです。 |
大学院修了後の進路 |
大学院修了後の進路は様々であるが、留学を希望する者に対しては留学先を紹介している。 全国の解剖学教室の助手としての進路は、医師で臨床解剖学を修練した者には、まだまだ開かれていると考えている。 |