平成21年度の動き
(1)知性教育の取組@Ai+病理解剖の症例収集
(ア)学内協力体制の構築
Ai+病理解剖の実施に当たっては、@)死亡時画像撮影を実施する附属病院放射線部技師スタッフとA)ご遺族にAi+病理解剖をお願いする各診療科の主治医の双方の理解が不可欠であった。
附属病院放射線部技師との間では、24時間実施体制をとることを前提に、労働条件、施行対象患者の範囲、具体的な実施方法などについて、打合せを繰り返した結果、最終的に、理事長と労働組合執行委員長との間で確認書の取り交わしを行った。
また、主治医の理解を得るに当たり、各診療科において橋渡しの役割を果たすCPC(臨床病理検討会 (Clinico-pathological conference))委員からの意見を受け、「ご遺族からの想定Q&A」を作成し、病院の医療情報統合システムからいつでも参照できるようにするとともに、各診療科に啓発パンフレットを配布し、ご遺族への説明の際に使用していただけるよう配慮に努めた。
(イ)学生を含む24時間オンコール体制の構築
本学におけるAi(死亡時画像診断)実施の基本ルールとして、当面は病理解剖にご同意いただいたご遺族にAiの同時施行を打診することとした。本学においては、病理解剖について、原則24時間オンコール体制を実施しており、Aiについても、同様な体制を構築した。
また、放射線部及び病理部において臨床実習中の医学部5、6年生にPHSを携帯させ、夜間においてもAi+病理解剖の立ち会いを希望する学生の参加を可能とした。
(ウ)Ai+病理解剖の症例実績
平成21年度中にAi+病理解剖が行われた症例の実績は7症例であり、学生の立ち会いは延べ約20名の参加があった。
A院内CPCの実施
本学附属病院では、毎月1回臨床医、病理医及び研修医が参加し当院で実施された病理解剖例についてCPCを開催し検討を行っているが、平成22年1月19日の院内CPCにおいて、初めてAiを含んだ症例を採用した。
今後も、Ai+病理解剖が行われた症例の採用を予定しており、院内でその有用性への理解を深めることは、ひいては各診療科の主治医への普及宣伝となり、より広範な診療科の症例の確保につながるものと期待している。
(2)感性教育の取組
@学生CPCでの新たな取組
本取組の柱のひとつである感性教育における重要な手法として、学生CPCに遺族及び主治医の面談の導入を進めることとしている。Ai+病理解剖の導入後は、解剖等についてご遺族から同意を得る際に、事前にお手紙を渡し、学生による遺族面談のため後日の連絡の可能性をお知らせしておくこととした。
遺族面談については、平成21年度の学生CPCにおいても、実施を試みたが、この時点では、上述のような遺族との事前の接触は何もなく、1例について面談の同意をいただくところまでいったものの、結局日程の調整がつかず残念ながら実施には至らなかった。
主治医面談については、病理的な経過については、以前から実施されていたものの、感性教育の側面から、神経内科ALS症例において、長期慢性の経過をたどる患者および家族とどう接するべきかについて、主治医と学生との討論を実施し、その結果報告を学生CPCに導入した。感性教育の面からのオブザーバーとして、緩和医療学講座の岩本喜久子特任助教に参加いただいた。
A学生アンケートの実施
医学部5、6年生を対象に、死生観等についてアンケートを実施した。特に、末期患者やその家族を思いやることと、実際にコミュニケーションをとることとのギャップがあるなどの課題が浮き彫りになり、本教育プログラムの今後の参考としていく。
B教育GP啓発講演会
学生アンケートにもあるように、末期患者とのコミュニケーションは感性教育の重要なポイントであり、既に現場にいる医療関係者にとっても切実な問題である。
平成22年3月3日、末期患者の精神的ケアの専門家である六甲病院緩和ケア病棟チャプレン・カウンセラー沼野尚美先生をお招きし、「末期がん患者の心のケア〜患者とのコミュニケーション〜」と題して講演会を開催した。
感性教育をテーマの中心に据え、医療人として、末期患者の心のケアと、患者とのコミュニケーションについてご講演いただいた。
本学学生、病院職員、学外医療関係者の100名を超える参加があり、医療人を志す者として末期患者やその家族との心の関わり方を学び、学生が医療人として豊かな感性を育成する契機とした。
(3)推進体制の充実
事業の円滑な推進を図るとともに、今後の事業拡大を見据えて、企画推進グループに、保健医療学部看護学科から新たなメンバーを加えた。