北海道大学・理学部・形態機能学講座I
私たちの研究室は,大学院重点化までは植物形態学講座と言われていたところです.93年4月に形態機能学講座という名の大講座になり,谷藤先生が94年4月に退官された後,米田が後を継ぎ現在に至ります.いち早く植物の分子生物学を研究開始された前任の谷藤先生主宰の研究室でしたので,設備などかなり豊富な研究室でした.大講座になって小講座時代の1-1-1ははかなく消え,1-0-1あるいは1-0-0で研究グループを組織することになりそうです.ただありがたいことに形態学講座時代の歴史をまだひきずっていて,現在のスタッフは加藤敦史助教授・高橋卓助手と一緒に研究できます.大学院生,卒業実習生を加えて,更に10名(程度)とともに研究しております.形態機能などという良く分からない名称ですが,英語で言うと,Laboratory of Molecular and Developmental Biology of Higher Plantsを目指しております.実験材料としてはシロイヌナズナを用いて,(分子)遺伝学の手法で高等植物の発生・分化を解明することを目指しております.高等植物というと一般には被子植物が思い当たりますので,その特徴である「花」の出現過程に大変興味を持っております.シロイヌナズナでは花が出現する時になって初めて花茎が伸長するという特徴を持っています.したがって,この花茎伸長と花芽出現という過程に関連した突然変異体を多数収集しています.次に,それぞれに対応した遺伝子を単離して,その機能や遺伝子間の相互作用を明らかにしたいのです.花芽出現・花茎伸長に関連した突然変異体収集によって,花茎が伸長しないacaulis変異体群,花茎の先端成長様式が変化したerecta, corymbosa変異体群,を単離し,詳細な研究をしています.
具体的には,以下のテーマで行っています.シロイヌナズナは,花茎についた花のつき方で,分類・形態学的には「総状花序」という呼ばれますが,突然変異により広義には総状花序の一種ですが特に「散房花序」と呼ぶ形態を示す一群の突然変異体を単離しました.その解析が1.2.です.また,伸長しない変異体を3.で解析しています.
1. ERECTA遺伝子の発現制御機構の解析.
「散房花序」変異体であるerecta変異の野生型遺伝子を単離することができ,遺伝子DNA配列からロイシンリピートと膜貫通領域を先頭に持ったセリン・スレオニン型のプロテインキナーゼであると推定しています.この遺伝子の機能を解析しています.その前提の大腸菌での大量発現で苦労している段階です.この遺伝子の発現調節につき,mRNAの存在が花茎出現に対応して調節されていることを明らかにしました.さらに,酵母細胞を借りる方法で発現制御を担当して遺伝子群を明らかにしつつある段階です.
2. corymbosa突然変異体の解析.
1.の遺伝子が得られたので,その関連過程に関係した遺伝子を明らかにする目的で,同様な「散房花序」的変異体を単離しました.この遺伝子の解析も含めて,形態形成の遺伝子調節を明らかにしたいところです.
3. acaulis遺伝子群突然変異体の解析.
花茎伸長に欠損のある突然変異遺伝子の解析・その野生型遺伝子単離も重要な研究です.これらの変異体では,花茎伸長に欠損があるとそれ以上花が完成しないか,花がどんどんできないから必要ない花茎が伸びなくなるのか,いずれかのために,花茎伸長と花芽形成が密接な関係があることがわかります.その原因を遺伝子レベルで知るために,これらの遺伝子単離は最も重要な研究テーマで,遺伝子歩行などによってクローン化しようと努力中です.
0. その他,実験技法開発的研究も行っています.
例えば,突然変異体で調節されている下流の遺伝子群をごっそり明らかにするための研究や熱をかけると遺伝子発現が起こるシステムの開発などです.
これらの研究を通して,(分子)遺伝学に基礎をおく植物発生学を展開していきたいと願望しています.巷ではやっているインターネット・ウエブページも一応作っていて(なかなか更新しないのですが),住所は,http://bio.bio.hokudai.ac.jp/bio/keitai1/Welcome.htmlとなっております.