Division of Cancer Biology Research, Sunnybrook Health Science Centre
ヘパラン硫酸プロテオグリカンファミリ−の一つであるOCI-5(glypican-3)はSimpson-Golabi-Behmel syndromeという特異的な奇形を伴う小児期のovergrowthを特徴とする疾患で mutationが生じていることが報告され,その原因遺伝子として注目されてきている.1)Simpson-Golabi-Behmel syndromeの患者ではしばしばmultiple nippleが観察される 2)乳癌細胞株ではOCI-5 mRNAの発現がない 3)ヒト乳癌組織では正常部位と比較してOCI-5 mRNAの発現が低下していることからOCI-5は乳癌細胞の分化,増殖に対し抑制的な機能を持つことが予想される.OCI-5の発現していない乳癌細胞(MCF-7)を用いてgrowth supression assayを行うとOCI-5遺伝子を導入することにより,コロニ−数が著名に減少する.この結果は,OCI-5が乳癌細胞の分化,増殖を抑制することを意味するが.transient transfection法を用いた遺伝子導入後のELISA assay法の結果から,この分化,増殖の抑制はOCI-5のapoptosisの誘導によることが判明した.このOCI-5のapoptosis誘導能はinducible transfectantがOCI-5遺伝子の発現誘導後1)Hoechst stainingにてDNAのfragmentationを示す,2)PARP cleavadeを起こすというapoptosisの際の特異的な現象を示すことからも確認された.Simpson-Golabi-Behmel syndromeはBeckwith-Wiedeman syndromeというovergrowthを引き起こす他の疾患と臨床的にoverlapがあると報告されている.Beckwith-Wiedeman syndromeはIGF-2 のoverexpressionが原因と考えられており,OCI-5はIGF signalingのnegative regulatorである可能性がある.実際,OCI-5のにより誘導されるapoptosisはIGF-2により抑制される.さらに,OCI-5は,IGF-1 receptor,その下流の分子であるIRS-1のリン酸化を抑制し,IGF signalingのnegative regulatorとしての作用を持つことが明らかとなった.