Entered: [1999.10.09] Updated: [1999.10.09] E-会報 No. 44(1999年 3月)
海外研究報告会

Bcl-2結合タンパク質BNIP3のapoptosis誘導能
Institute for Molecular Virology, St Louis University Medical Center
安田元昭 (北海道大学歯学部 歯科放射線学講座)


 BNIP3(NIP3を改名)はE1B-19K, BCL-2,BCL-XLおよびEBV-BHRF1と結合し,BH3ドメインに類似した配列を持つタンパク質である(Cell 1994, Boyd et al.).このBH3類似ドメインの削除によりBNIP3のE1B-19K および BCL-XLに対する結合能は失われた.またBAXのBH3ドメインをBNIP3のBH3類似ドメインをと置き換えた変異型BAXは細胞死誘導能およびheterodimer形成能を保持していた.一方,BNIP3単独でもやや遅れた細胞死誘導能を示し,また,BNIP3のBH3類似ドメインの削除によりこの細胞死誘導能の一部は阻害された.さらに,BCL-XLの細胞死抑制能はBNIP3によりBH3ドメイン依存的に阻害された.BNIP3のC末端領域には膜貫通ドメインが存在するが,このドメインは単独でGFPをミトコンドリアに局在させることが可能であった.以上よりBNIP3はBH3ドメインを持つBCL-2ファミリータンパク質でありミトコンドリア上で何らかの細胞死促進機能を果たしていることが示唆された( J Biol Chem 1998, Yasuda et al.).

 線虫のアポトーシス機構は単純であり,二つの細胞死誘導タンパク質,CED-3とCED-4が,そして細胞死抑制タンパク質としてCED-9が存在している.データベース検索により,線虫のC14F5.1にコードされている遺伝子(ceBNIP3)がヒトBNIP3のホモローグであることが予想された.哺乳類細胞へのtransient transfectionによりceBNIP3はBCL-2の線虫ホモローグであるCED-9と複合体を形成した.また,ceBNIP3はCED-3ともそのプロドメインを介して直接結合した.さらに,ceBNIP3とCED-3のco-transfectionはCED-3のタンパク質分解による活性化を促進し,協調的に細胞死を誘導した.一方,CED-9の共発現によりceBNIP3とCED-3による細胞死誘導は阻害された.また,coimmunoprecipitationによりこれらのタンパク質の三量体形成が確認され,CED-9はceBNIP3とCED-3による強調的細胞死誘導をこれらと複合体を形成することにより抑制していることが示唆された.以上によりceBNIP3は線虫のアポトーシス機構における第4のタンパク質であり,CED-3をミトコンドリアにrecruitすることにより細胞死を開始することが示唆された(Oncogene 1998, Yasuda et al.).


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