Entered: [1999.10.09] Updated: [1999.10.09] E-会報 No. 44(1999年 3月)
海外研究報告会

アデノウイルスの新しい癌遺伝子産物E4orf6と相互作用する細胞性蛋白の解析
Howard Hughes Medical Institute, Department of Molecular Biology, Princeton University
東野史裕 (北海道大学歯学部 口腔病理学講座)


 アデノウイルスによる細胞のトランスフォーメーションにはE1AとE1B遺伝子が必要で,これらの遺伝子から発現される蛋白はpRBやp53などの癌抑制遺伝子産物や,Cyclinなどの細胞増殖や細胞周期に重要な役割を果たす蛋白と結合し,その機能を制御することがこれまでに知られている.

 最近これらの二つの遺伝子以外にもE4orf6 ( E4 open reading frame 6 )遺伝子にトランスフォーメーション活性があることが報告された.その中でE4orf6はE1Aと協同して細胞をトランスフォーメーションできること,そしてE4orf6は細胞中でp53と結合しアポトーシス誘導や転写活性化等の機能を阻害すること,E4orf6は細胞中のp53のレベルを低く保つこと等が明らかになった.さらにE1(E1AプラスE1B)遺伝子でトランスフォームされた細胞にE4orf6を導入すると,E1遺伝子だけでトランスフォームした細胞よりもヌードマウスに腫瘍を形成しやすいことがわかり,このことはE4orf6がE1AやE1Bとは異なる機序でトランスフォーム細胞を悪性化することを示唆している.

 E4orf6の細胞中でのふるまいを解析するために,まず演者は免疫沈降法を行い,E4orf6によりトランスフォームされたラット細胞中に,E4orf6と結合している蛋白を少なくとも4種類( 73, 65, 18, 13kDa )決定した.次にE4orf6は近年新たに発見されたp53関連蛋白であるp73と結合し,その機能を阻害することを見出した.現在その他のE4orf6結合蛋白についても解析を進めている.


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