札幌医科大学 医学部 麻酔科学講座 │ 安全で質の高い麻酔科医療の提供、世界に通用する麻酔科医の育成

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集中治療医学 │ 札幌医科大学 医学部 麻酔科学講座

医療の進歩に伴い、複雑で難しい手術をはじめ、様々な治療法を選択し、受けることができるようになりました。
また、他に治療中の病気があったり、高齢であるといった理由で、これまで治療ができないといわれていた疾患に対しても、積極的に治療が行われるようになってきています。
しかし、医療は万能ではなく、全ての治療法が安全で順調にいくとは限りません。
複雑な大手術や化学療法などの治療に伴い合併症を生じた場合、もともとの病気があまりにも重症である場合、治療が病状の悪化に追いつけない場合などで生命を脅かされることがあります。
このような万が一の不幸な状況を想定し、予想外の状況に対応が遅れたということがないよう、最大限努力しなければなりません。
それを支えるのが集中治療医学です。
生命を維持するのに最低限必要なのは、呼吸と心拍や血圧です。
これは、臓器でいえば肺と心臓です。
それ以外に、肝臓や腎臓といった臓器は、生命維持のために必要不可欠な物質を作り、老廃物を代謝・排泄する点で非常に重要な臓器です。
また、人間らしさを維持するのは、脳や脊髄といった中枢神経といわれる臓器です。
集中治療医学が得意な領域は、このような重要臓器(一つでも、複数でも)の機能が危機的に低下した場合です。
つまり、人工呼吸療法や血液浄化療法、薬物療法などを組み合わせて生命維持を可能とし、回復するまでの橋渡しをするのが役目です。
集中治療室は病院の中でも『最後の砦』といわれますが、そうした役割があるためです。

集中治療室 (Intensive care unit:ICU)

イメージICUは、全ベッドに生体情報モニター(呼吸や心拍・血圧、体温などを測定表示する)が設置され、変化があればすぐに警報音などで周囲のスタッフに伝わるようになっています。
また、他の病棟と比べ、患者さまに対する看護師数が圧倒的に多くなっています。
この特殊性は、それだけ注意深く看護する必要があり、患者さまのちょっとした変化にもすぐ反応し対応できる体制にするためです。
日本における人口10万人あたりのICUベッド数は4床といわれています。
札幌医科大学付属病院には25の診療科があり、病床数は900床あまりで、そのうち集中治療部門はわずか6床です。
こちらで治療をうける患者さまは、先に述べたように生命の危機が迫っている患者さまだけではありません。
体に大きな負担・ストレスが加わる手術や検査・処置をうけた場合は、その後数時間〜数日間は注意深い観察・管理が求められます。
そのような患者さまも対象となり、経過が良好であることを確認して一般病棟へお戻りいただきます。
万全の態勢で患者さまの状態を監視し、対応できるよう、夜間・休日を問わず24時間体制で医師・看護師・臨床工学技士ら集中治療専門の医療スタッフが常駐しています。

主な治療

人工呼吸

イメージ ICUで治療が必要となる理由の中で多いのは、呼吸困難、呼吸不全といわれる状態です。
ある程度症状が悪化し、危機的状況となれば人工呼吸が必要です。
ICUで行われる人工呼吸は、口から、喉のさらに奥にある気管へ人差し指ほどの太いチューブを入れて行われます。
このチューブが入っていると、意識が完全にある状態では、咳が強く出て、とても耐えられるものではないので、チューブの刺激を抑えるよう鎮痛(ちんつう)薬を投与したり、少し眠っていただけるよう鎮静(ちんせい)薬を投与します。
そのため、基本的に意識はほぼ眠っているような状態で、声は出せません。
人工呼吸器と接続し病状に合わせた設定にします。
人工呼吸器は、呼吸不全を治す治療のように感じられるかもしれませんが、あくまで生命維持が目的です。
口から気管へチューブを入れて行われる人工呼吸管理が数日〜数週間にわたると、呼吸器症状はさらに悪化することもあります。
そのような場合は、のどぼとけ付近を外科的に切って短いチューブを入れる、『気管切開』を勧める場合があります。

血液浄化療法

イメージ 人工呼吸と並んで多い治療法に、血液浄化療法があります。
その名の通り、血液中に増加した老廃物や、病態を悪化させるような物質を取り除く治療法です。
そのためには、首や足の付け根にある太い静脈(血管)にカテーテルを入れます。
血液を体外へ吸引し、フィルターを通して、体内へ戻すという一連の工程をローラーポンプで同時に行います。
この治療が行われるのは、急性腎不全といわれる状態です。この状態は、尿が出ない場合もそうですが、出ていても血液検査などで診断される場合もあります。
細菌などに感染し、炎症があまりにも強い場合は、全身に様々な影響を及ぼしますが、特に血圧が低下する(ショック状態)ような場合にも、血液浄化療法が行われることがあります。

薬物療法

ICUで用いられる薬物は、血圧や心拍数を適正に保つための循環作動薬といわれるもの、一部の呼吸不全では、肺の炎症を抑えるために投与される、ステロイド剤や好中球エラスターゼ阻害薬といわれるもの、尿を増加させるための利尿薬といわれるものなど多種多様です。
いずれも病状が急に変化しないように微量を持続的に投与する必要があります。
それには、シリンジポンプと呼ばれる精密持続注射機器を用います。
患者さまの頭側で、細い点滴の管を何本か見かけるかもしれませんが、それらは、投与量が厳密に管理され、確実に投与されるようになっています。
また、薬物を投与するカテーテルは、ほとんどが首や鎖骨付近、足の付け根の太い静脈(血管)に入れます。

栄養管理

イメージこのように、さまざまな治療を一度に行われている場合、お食事をとることは不可能です。
近年は、代わりに点滴で栄養をとればそれでよい(経静脈栄養)という考え方から、胃へ細い管を入れて、流動食を投与する方法(経腸栄養)の有効性が知られるようになりました。
胃への管は、鼻から入れています。
もし、胃の機能が悪ければ、内視鏡を用いて胃のさらに奥、小腸にまで管を進めて流動食を投与することもあります。
栄養を摂るということは基本的なことではありますが、免疫力や障害された臓器などに強く影響し、集中治療において重要な治療法の一つとなっています。

集中治療を受けるにあたって

集中治療を受けるということは、マスコミなどで見聞きすることはあっても、そのような機会はあまり身近にないことです。
時にはご本人もご家族も、身体的・精神的にかなりの負担となることもあります。
それでもどうか希望をもって、手をさわったり、声をかけたりしてください。
ご面会時間に制限はありません(小さなお子様や体調を崩されている方がご面会を希望される場合はご相談ください)。
不明な点は遠慮なくスタッフにお尋ねください。