第4号  平成16年10月18日


 学長室だより第4号をお届けします。大学周辺の木々も色づき、すっかり秋といった
季節になりました。台風の影響で、9月8日には札幌では観測史上初めてという風速
50メートルを超える暴風が吹き荒れました。

 本学でも病院の玄関付近の損壊、保育所や駐車場周辺の木々の倒壊など多くの被害
を受けました。災害の後始末を一生懸命されていた職員の皆さんに感謝いたします。

 また、台風の際、特に感心させられたのが、職員の皆さんの患者様への心遣いです。
風で身動きがとれなくなっている方の手をつなぎ、身体をはって助けている姿、玄関を
出て車に向かおうとする方を抱きかかえ、めがねや名札を風に飛ばされながら誘導
している姿など、私も目の当たりにして、皆さんに頭の下がる思いでした。本当に感謝
申し上げます。

  国立大学も法人化して6ヶ月が経過し、国の概算要求の内容からもわかるように
大学間競争がますます激化していくことが予想されます。今回はそういった関係の本学
を取り巻く話題について皆さんにお知らせします。

  
1 高橋知事が来学しました。

   8月5日に、知事が就任以来はじめて来学しました。本学が積極的に取り組んでいる
 女性外来を訪問し、担当されている先生との懇談や保健医療学部小児看護実習室で
 母子技術演習の視察をしました。その後、私や佐藤医学部長、丸山保健医療学部長、
 當瀬法人化問題ワーキンググループ部会長、石埜知的財産管理室長、山本事務局長
 と意見交換を行いました。

   視察などを通して知事が医療現場や教育の取り組みについて感じた印象を述べ
 られた後、それを支える研究の重要性や知的財産の管理、活用まで話題が及び
 ました。また、激化する大学間競争の中で、大学改革の必要性や法人化問題について
 意見交換を行い、知事は本学に対する期待を再三、お話しされました。
  

2 新しい時代の札幌医大の進路を考える懇談会を開催しました。

   大学改革の荒波は、公立大学にも押し寄せています。政府の三位一体改革が地方
 財政の悪化に追い打ちをかける形で自治体の経営を圧迫していることや、また、国立
 大学が法人化したことに伴い、公立大学のあり方を問う声が高まっています。

   全入時代が迫る中、自治体が税金を投入して大学を運営する意義は何かが
 問われており、大学としても住民にどういった役割を果たすべきかを真剣に考えて
 いかなければなりません。

   国立大学は法人化する際に、中期計画を策定し、その中で具体的に教育や研究、
 社会貢献といった大学の取り組みについて目標を定め、広く公開しています。一人
 ひとりが大学の進路を考えるということは、大学間競争を生き抜くための必要条件とも
 いえます。

   私としては、教員のみならず事務局の方にも参加していただき、将来の大学の
 あり方について全学的な議論をしていく必要があると考え、今回の懇談会を企画しま
 した。
  
   今回のテーマは建学の精神に則り、「地域医療」と「知的財産」を取り上げて
 みました。地域医療は丸山保健医療学部長に課題提起していただきました。

   その中で、チーム医療の取り組みを通して、どのように地域医療に関心をもつ医療人
 を育てていけばよいのかといった話題に触れていただき、意見交換でも
  「チーム医療というまだ、確立されていない分野をどう学問として育てていくか」
   「地域医療は地域レベルではまちおこしの一環としても重要な要素である」
   「札医大の特徴を生かすため、学部間交流事業としても全国モデルとして考える必要
   がある」
 などといった提言もありました。

   次の知的財産については、濱田教授(知的財産管理体制等検討委員会委員長)から
 大学の研究成果を社会還元していく意味でも特許の機関帰属や産学連携体制の
 重要性、運営するための財源の必要性などについて課題提起していただきました。
  
   両方のテーマを通して、私としても将来を担う若手研究者や地域医療を支える医療人
 の育成を重要な課題として具体的な道筋をつけなければならないということを痛感して
 おり、これが大学改革の重要なキーワードの一つと考えています。

    なお、今回は両学部教授と事務局を参集範囲として開催しましたが、10月19日
 (火)午後3時から講堂において同様のテーマにより、助教授、講師、助手の方々を対象
 として懇談会を開催しますので、是非、参加いただければと思います。
  

3 現代的教育ニーズ取組支援プログラムに本学の提案が採択され
 ました。


   前号でお知らせした16年度文部科学省事業の本プログラムに本学の提案した「地域
 密着型チーム医療実習」が採択になりました。文部科学省のこういった事業は特色ある
 大学教育改革に対し、コンペにより支援を行おうというもので今後、この
  傾向はますます強まるものと考えられます。

   今回のこの取組は「地域活性化への貢献」のテーマ枠で申請したもので、医学部、
 保健医療学部合同で地域密着型の実習を行おうというものです。モデル地区における
 医療機関や保健所、役場など多様な施設で住民生活に主眼を置いて取り組むもので、
 実施に向けての作業を進めておりますので関係の方々のご協力をよろしくお願い
 します。
  

 4 大学の法人化問題について道議会で議論されました。

   本学の法人化問題については、設置者である総務部に設置した「札幌医科大学の
 あり方検討チーム」において検討が進められているところですが、そのメンバーに本学
 の法人化問題ワーキンググループ部会の部会長である當瀬教授と副部会長である
 吉尾教授に参加していただいているところです。

   全国の公立医科系大学8大学のうち、5大学が移行時期を17年度または18年度と
 して法人化の準備を進めているところで、設置者としても大学間競争の激化など周辺
 状況を考慮し、できる限り早い判断をしていきたいと議会で表明しました。

   私としても今後、法人化問題については学長室だよりなどを活用して、皆さんに各種
 の情報をお知らせしていきたいと思っています。

  
5 海外先進教育研究実践支援プログラムに全員が採択になりました。

   前号でお知らせした新しい国の事業である本プログラムに本学から5人が応募し、
 全員が採択になりました。概要については本学ホームページに掲載しておりますので、
 ご覧ください。
  
    アドレス http://web.sapmed.ac.jp/kokusai/kaigaisenshin.htm

  
6 平成16年度解剖体慰霊式・遺骨返還式を執り行いました。

   9月15日に大学講堂でこの1年間医学・医療の発展のため尊いご遺体を捧げられた
 159名の御霊のご冥福をお祈りする慰霊式を執り行いました。私も故人の医学教育、
 研究、医療への貢献に対して、改めて敬意と感謝の念を捧げる次第です。