研究会の概要

研究会主催のセミナーは夏季と冬季の年2回開催され、機関誌は原則年1回発行している。2012年度は、夏季セミナーでの講演:粟屋剛「生命倫理とは何か―文明論的生命倫理の試み―」において、「生命科学・先端医療テクノロジー」をコントロールすべき文明の方向性が問われた。冬季セミナーでの講演:丸山英二「臨床研究に関する倫理指針改正に関して〜疫学研究倫理指針改正と合わせて」は、札幌医科大学付属病院の倫理研修会としての役割を果たした。機関誌創刊号における論稿:船木祝「自律とパターナリズムの狭間にある生命・医療倫理学」は、欧州連合における「バルセロナ宣言」(1998年)に見られる、「傷つきやすさ」を基軸におく関係主義の生命倫理の観点から、自律とパターナリズムの問題を考察したものである。2013年度からは、文部科学省科学研究費助成事業基盤研究(C)Nr.25500008により、北海道の独居高齢者のインタビュー調査研究の報告もされている。夏季セミナーでの講演:長島隆「地域医療」において、地域の再建は古き良き共同体に戻ることではなく、新しい段階で行われなくてはならないと提言された。当講演を基に機関誌「北海道生命倫理研究」vol.2 (ISSN 2187-834X)において、長島隆「地域医療とターミナルケア――『介護保険制度』と『地域』」という論稿がまとめられた。当機関誌は、資料:旗手俊彦「終末期医療に関する各種ガイドラインの比較・検討」や、日本生命倫理学会、日本医事法学会、日本医学哲学・倫理学会の各全国大会のレポートなども掲載し、日本の生命倫理研究全体を視野に収めようと試みている。2014年度夏季セミナーでは、講演:小出泰士「フランスにおける終末期の状況―『死の喪失』から『死を生きること』へ―」において、医療化の中で死が奪われた現状に対して、死を自然なプロセスと考え、周囲の者との絆の中で死を取り戻すことの必要性が説かれた。このフランスの終末期医療と、独居高齢者の置かれている状況に関する論稿は「北海道生命倫理研究」vol.3に収められている。今後とも、研究会および機関誌を通して多くの研究者が交流できる場となることを期待している。