IT(情報技術)による解剖学の新しい方法論の確立に果敢に挑戦している。それは、分子レベルから人類までを幅広く理解するための包括的技術をもたらすであろう。このIT、とくにインターネットを、バイオメディカルの分野に活用し、我々は永久の真理をさぐり、探求し、解剖学の立場から生命の上思議を解明する。
解剖学第一講座 教授 Professor
辰巳治之 Haruyuki Tatsumi, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 解剖学は観察する道具の発達により視覚情報を増やし発達してきた。虫眼鏡、顕微鏡、電子顕微鏡の次は何だろうか?我々は、近年のコンピュータ及びネットワークの発達を、言葉、紙、印刷技術、通信技術の延長線の人類の発達の歴史におけるパラダイムの一つと考える。この様なツールの発達は、実は脳発達の具現化したものといえ、今や、全世界がインターネットにより、一つの頭脳を形成しつつある。そこで、これらのツールを活用し、マクロからミクロまで扱えるような三次元再構築システムを開発しながら、Scientific Visualizationにより視覚情報を増やし、解剖学のルネッサンスを目指して、また情報科学の発達を解剖学の立場から推進する。
解剖学第一講座 助教授 Associate Professor
二宮孝文 Takafumi Ninomiya, B.S., Ph.D.
研究活動と展望 : 神経細胞の発生・成長・分化には種々の神経栄養因子が必要とされる。また、再生過程においてもその影響は大きく、さらには老齢動物の神経細胞でも、神経栄養因子が関与し再生過程にその効果があることが明らかになりつつある。我々は主として培養系を用い、それを生体に応用しようとするものである。この実験系により、神経細胞の成長過程で神経栄養因子がどのような機構で関与しているのか、さらには細胞内での神経栄養因子の伝達機構を解明することを目指し、を基礎さらには臨床応用に貢献することを目指す。
解剖学第一講座 講師 Assistant Professor
市川量一 Ryouichi Ichikawa, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 神経経路網形成の過程を探求している。受けてである樹状突起の形態形成については、神経細胞移動を誘導する分子が欠搊しているリーラーマウスを用い大脳皮質投射神経細胞の樹状突起の発育の機構の解析を行っている。一方、送り手である軸索の伸長については、送り手の線維と受けてである神経細胞が1:1の関係を形成している登上線維→小脳プルキンエ細胞系に注目して、そのシナプス構築の形成過程を解析している。
解剖学第一講座 助手 Instructor
新見隆彦 Takahiko Shinmi
解剖学第一講座 助手 Instructor
菊池真 Shin Kikuchi
本講座は臨床解剖学と形態人類学を専門とします。アイヌおよびオホ*ツク文化圏の古人骨標本は質・量とも世界有数であり、多くの研究者を魅了しています。また、本学内はもとより他大学・他施設からも、毎年3吊以上の医師やOT ・PTが訪れ、学内外から収集した人体解剖学標本を用いて研究を行ってます。
解剖学第二講座 教授 Professor and Chief
村上弦 Gen Murakami, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 新しく開発あるいは日本に導入された臨床手技には、当然ながら局所解剖学的な妥当性が伴うべきだが、日本人の体を用いて試行錯誤の上で改良されているのが現実である。最近の業績から引用すれば、十二指腸乳頭に挿入するステントや肝右葉を脱転せずに前から処理する新しい肝切手技などにその好例を見る。また、伝統的に定番とされてきた手術術式の中にも、局所解剖学的な誤解や思い込みに基づいて組み立てられたものがある。広汎子宮全摘の際に温存が叫ばれてきた基靭帯神経部に、実は温存すべき神経など含まれないという私たちの新知見などが典型であろう。そもそもEvidence-based medicine (EBM) は解剖学的個体差の認識から始まるべきだが、現実には規格化された欧米式の人体が存在することになっている。近著から引用すれば、日本人の高齢者女性には本来の周状の尿道括約筋など存在しないにも関わらず、尿失禁は未だ恥ずかしいことと思われているのではなかろうか。また、実体のない構造をComplexと称して手術で残そうとする傾向は、関節外科領域で跡を絶たない。私たちは、臨床医の問題提起を受けてそれを解剖学的に検討することから始まり、百年以上にわたって変わることのなかった人体局所解剖学に新しい原則を記載しつつある。
解剖学第二講座 講師 Assistant Professor
松村博文 Hirofumi Matsumura, Ph.D.
研究活動と展望 : 道内の各遺跡から収集した古人骨標本の一大センターとして、形質人類学的研究を行っている。研究目的に一つは、過去から現代への自然環境や生活様式の変化など様々なヒトを取り巻く環境の変遷に対して、ヒトの身体がどう適応してきたのかを、骨格や歯の形態学的研究から明らかにしていくことである。もう一つは、様々なヒト集団の形態変異を調べ、ヒトの形態の多様性を明らかにしていくことである。古人骨を適切に処置し、保管することは人類学を専門とする研究者においては重要な社会的使命でもある。わが国では、古人骨研究者の上足が大きな問題となっており、全国各地の遺跡から発見される貴重な古人骨資料が適切な取り扱いがおこなわれずに死蔵する危機に直面している。本学はこの分野において道内唯一の拠点研究機関でもあり、その役割を担って行きたい。
解剖学第二講座 講師 Assistant Professor
佐藤利夫 Toshio J. Sato, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 全国いずれの医学部・歯学部でも,解剖学の教育として遺体を用いた剖出実習を行っている。外科系医師等の求めに応じて,正常解剖体を用いた局所解剖学的研究が行われている施設も少なくない。これらの臨床医等が行う臨床解剖学的研究に対応できる能力は,解剖学の教員に強く求められるものであろう。このような考えから,1998年より村上弦教授の指導のもとに,臨床解剖学の研究に従事している。今後は,日本特有の正常解剖体収集システムである献体団体の存在を活用して,正常解剖体から得られる健康科学的情報を利用した研究分野を開拓していきたい。
解剖学第二講座 助手 Instructor
内山英一 Eiichi Uchiyama
研究活動と展望 : 本学における整形外科領域のバイオメカニクス研究を推進させていきたい。
解剖学第二講座 助手 Instructor
鈴木大輔 Daisuke Suzuki
研究活動と展望 : 腱*骨または靱帯*骨付着部はエンテーシスといわれ,腱・靱帯断裂の好発部位である.実験的にエンテーシスを切断し,治癒の過程を観察する研究は整形外科でよく行われているが,腱・靱帯の細胞外基質の局在性や各エンテーシスでの違いは,まだあまり研究されていない.私はエンテーシスに分布している細胞外基質のうち,特に強度と関係しそうな各種コラーゲン,エラスチン,グリコサミノグリカン(GAG)の局在を免疫組織化学を用いて調べる.またSEMを用いてコラーゲン線維が骨にどのように付着しているのかを3次元的に明らかにする.この研究によって,断裂の起こりやすい部位,コラーゲンとその他の細胞外基質の相互作用を組織学的に明らかにし,臨床研究の基礎データとしたい.
当教室の研究目的は生理機能を細胞レベル、更には分子レベルで明らかにしようとすることである。特に生理機能を理解する上でイオンチャネルとその制御機構に焦点をあてている。方法としては主にパッチクランプ法をはじめとする電気生理学的手法と共焦点蛍光顕微鏡によるCa動態の解析を取り入れている。またイオンチャネル機能はその構造と密接な関係があるため分子生物学的手法を用いて、その構造解析も行っている。
生理学第一講座 教授 Professor and Chief
當瀬規嗣 Noritsugu Tohse, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 心臓は脳とは独立して動く能力(自動能)を有している。その自動能は心筋細胞膜のイオンチャネルの活動による電気現象により引き起こされる。我々は、この生命活動の源ともいえる心筋のイオンチャネルを機能と構造の両面から解析している。特に、心臓の自動能やそれによって惹き起こされる収縮のしくみが、発生期において、以下に成立してゆくかについて、イオンチャネルの発生学的変化を解析することにより追求している。発生期の心筋イオンチャネルの研究は世界的に、まだ緒についたばかりである。我々はこれまでに、カリウムチャネルの役割や興奮収縮連関の成立過程を世界に先駆けて明らかにしてきた。さらに本年は、心筋カルシウムチャネルのより正確なサブユニット構造について明らかにして、再構成系をもちいて、生理的な上活性化過程の再現に成功した。したがって、心筋のイオンチャネル系の主要な構成要素の遺伝子情報は着々と蓄積されている。今後は、この蓄積をもとに、再構成系で活動電位や興奮収縮連関を人工的に再現し、最終的には細胞工学的手法に発生学の知見を導入した新しい人工心臓(再生心臓)の作成を目指す。
生理学第一講座 助教授 Associate Professor
深尾充宏 Mitsuhiro Fukao, M.D,Ph.D
研究活動と展望 : 血管内皮細胞は弛緩因子、収縮因子、増殖因子等を産生し、血管の機能・代謝・恒常性の維持、並びに、臓器の新生・再生・リモデリングに重要な役割を果たしている。弛緩因子としては、NO、PGI2の他に第三の弛緩因子として内皮由来過分極因子(EDHF)が存在する。EDHFの生理作用は十分に解明されていないが、NOが大血管で作用するのとは対照的に、EDHFは抵抗血管である微小血管において、NOよりも強力に作用する。 従って、微小血管の変化により調節される血圧および臓器血流に関しては、NOよりもむしろEDHFがより重要であると考えられる。 また、EDHFの病態生理学上の重要性を示すデータも蓄積されつつある。 今後、EDHF反応を電気生理学的・分子生物学的な視点から検討し、EDHF反応機構の全容を解明していきたいと考える。
生理学第一講座 講師 Assistant Professor
山田陽一 Youichi Yamada, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : L型Caチャネルは様々な臓器で発現し、筋収縮やホルモンの分泌などに重要な役割を果たしている。このチャネルの分子生物学的、電気生理学的検討を行うことにより、各臓器に特異的に発現しているL型Caチャネルを同定し、臓器特異的なCa拮抗薬を創薬を試みる。
生理学第一講座 助手 Instructor
筒浦理正 Masaaki Tsutsuura, B.S.
研究活動と展望 : 心筋に関する上記研究テーマ(1,2,3)につき、主として分子生物学的ならびに電気生理学的に検討を加えてきた。これまでに、発生期の心筋におけるCa2+チャネルあるいはK+チャネルの遺伝子発現をRT−PCR法を用いて確認し、また、その遺伝子を導入したゼノパス卵母細胞につき、膜電流を測定し、nativeに観察されている電流と比較検討中である。今後は、さらにチャネル発現の時間経過について詳細に検討する。
生理学第一講座 助手 Instructor
小林武志 Takeshi Kobayashi, M.D,Ph.D
当講座では哺乳動物を用いた実験的研究において、神経生理学的、及び神経解剖学的方法を用いて、細胞から行動レベルにわたる解析が進められている。いくつかの研究プロジェクト、即ち、呼吸の神経機構、脊髄傷害後の神経回路の可塑性、及び海馬におけるシナプス伝達様式の地域差などである。実験動物として用いられているのはネコ、サル、ラット及びモノアラガイ(淡水産軟体動物)である。
生理学第二講座 教授 医学部動物実験施設部長 Professor
青木藩 Mamoru Aoki, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 哺乳動物の呼吸運動は脳幹の呼吸性ニューロン群による神経回路の働きにより、基本的リズムとパターンが形成される。しかしこの神経回路は固定されたものではなく、呼吸運動以外にも発声、嘔吐、咳などの発言にも関わっている。我々の発見した頸髄の呼吸性ニューロン群および横隔膜運動ニューロンが脳幹からの下行性入力を受け、どの様に駆動され、多様な呼吸関連の行動に結びつくかは未解明である。我々はこの動的神経回路の働きを神経生理学的解析手法と、それを裏付ける神経解剖学的手法を組みあわせて同定することを目指している。
生理学第二講座 助教授 Associate Professor
藤戸裕 Yutaka Fujito, M.S., Ph.D.
研究活動と展望 : 動物は脳神経系の働きにより,外界の状況や環境の変化に迅速に対応できる.高等動物は高度で複雑な脳神経系の機能を主として経験・学習により獲得している.脳神経系の多様で広範囲の適応代償機能と多様な学習機能の基礎過程として,神経細胞(ニューロン)間の接続部すなわちシナプスの可塑性が重要視される.私はシナプス入力の部分破壊や前肢の交叉神経再支配を行った慢性動物において中脳赤核ニューロンのシナプス接続の可塑性を明らかにするなど,中枢神経系の適応代償機能や学習の基礎過程について実験的研究を行っている.これら研究の成果が身体の傷害や脳障害後の機能回復など臨床応用にもつながることが期待される.
生理学第二講座 助教授 Associate Professor
松山清治 Kiyoji Matsuyama, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 歩行運動は多くの動物行動と密接に関連して発現する最も基本的な運動の一つであり、そのため、この制御系は中枢神経系の広範な領域に分散配置された複数のサブシステムにより多重・並列な系として構成されている。私はこれまで歩行の基本要素である歩行リズムの生成・制御に関わる脳幹-脊髄神経機構について解析を進め、この結果、脳幹の下行性投射系と脊髄介在細胞群の構築様式及び作動様式を明らかにしてきた。今後はこの基礎的神経機構に加え、感覚や高次入力存在下で歩行運動の発現・修飾に関連して活動・動員される中枢神経機構を同定し、本来、状況や意思に基づき多様な発現を示す多重・並列系としての歩行制御系の実体解明を進めたい。
生理学第二講座 助手 Instructor
石黒雅敬 Masanori Ishiguro
本講座においては蛋白質分子間の相互作用および機能調節機構を解析することによって生体の統括的な代謝調節を分子レベルで解明している。さらに、生化学、遺伝子工学および細胞工学の手法を用いて病態形成の医化学を分子レベルで研究している。生体防御レクチンおよびエンドトキシン受容体の関与する自然免疫生体防御の分子機構、リン脂質結合蛋白質とカルシウム結合蛋白質の構造と機能解析、さらに、これらの蛋白質分子と病態との関係を探求している。
生化学第一講座 教授 Professor
黒木由夫 Yoshio Kuroki, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : パターン認識分子としてリポ多糖やペプチドグリカンなどの病原微生物構成成分を識別するCD14やToll様受容体(pathogen receptor)および生体防御レクチンは生体を守る最も基本的な生体防御である自然免疫を担う機能分子である。生体防御レクチンの一つであるコレクチンはpathogenおよびpathogen receptorsとの相互作用を介してマクロファージ機能を制御し、病原微生物から生体を防御している。外界に開放して常に病原微生物侵襲の危険にさらされている肺においてFirst Line Defenseを担っている肺コレクチンとパターン認識受容体の構造と機能を解析している。自然免疫の分子機構を明らかにすることによって、社会問題化しているエイズや臓器移椊後の免疫上全状態、高齢者や小児における感染症克朊のための分子基盤を確立したい。
生化学第一講座 生化学第一講座 助教授 Associate Professor
佐野仁美 Hitomi Sano, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 感染防御という立場から肺サーファクタントの機能を明らかにすることにより、感染症に対するサーファクタントの臨床的応用を目指す。また、粘膜免疫を担う他の分子との相互作用を検討することで、自然免疫の分子機構をさらに解明する。
生化学第一講座 講師 Assistant Professor
清水健之 Takeyuki Shimizu,
研究活動と展望 : 生体防御レクチンの一種である肺コレクチンは、自然免疫に重要な役割を果たしているが、さらに抗原提示細胞の機能を制御することで獲得免疫応答を制御している可能性について研究している。獲得免疫が深く関与する感染防御や炎症、アレルギー症状と肺コレクチンの関連について明かにしたい。
生化学第一講座 助手 Instructor
光澤博昭 Hiroaki Mitsuzawa, M.D.
研究活動と展望 : 近年,感染性微生物に対する非特異的防御システムである自然免疫が注目されている.特にリポ多糖やペプチドグリカンなど病原微生物のパターンを認識する受容体と考えられるToll-like receptor(TLR)が世界的に精力的に研究されている.現在我々はグラム陽性菌の感染防御,ペプチドグリカン認識の分子メカニズムについて,TLR2,CD14に着目し研究を行っている.耳鼻咽喉科領域は感染の機会が最も多い領域でありこれらの研究成果により,感染の病態把握,治療,予防に基礎,臨床の両面より寄与していきたいと考えている.
生化学第一講座 助手 Instructor
西谷千明 Chiaki Nishitani
我々は脂質性メデイエーターの代謝酵素(ジアシルグリセロールキナーゼとホスファチジン酸ホスファターゼ)について、分子レベル、細胞レベルの検討を行っている。また、分泌初期過程における品質管理機構、とくに分子シャペロンの役割に関する研究も進展中である。
生化学第二講座 教授 Professor and Chief
加紊英雄 Hideo Kanoh, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 我々は、脂質代謝とシグナル伝達に関与する二つの酵素ファミリー(DGKとPAP)について、初めてcDNAクローニングに成功し、興味ある構造を持つ新しい機能分子の存在を明らかにしてきた。我々による酵素群の命吊法は世界的に認められている。今後これらの機能分子の役割を細胞レベル、個体レベルで明らかにして行く。
生化学第二講座 助教授 Associate Professor
坂根郁夫 Fumio Sakane, M.S., Ph.D.
研究活動と展望 : 近年、細胞内シグナル伝達系におけるバイオモジュレーターとしての脂質の役割が注目されてきている。生理活性脂質のジアシルグリセロールとホスファチジン酸はジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)により量的に厳密に制御されている。現在、哺乳類のDGKは、我々によってクローン化された3種を含め9種のアイソザイムからなる大きなファミリーを形成するが、各DGKアイソザイムの具体的な生理的役割は殆ど明らかではなかった。我々は最近、DGKαがアポトーシスへの抵抗性、DGKγが神経細胞やマクロファージの細胞突起形成能、DGKδが腫瘊壊死因子αの他、腫瘊化増殖因子α、β-アミロイド前駆体蛋白質、プリオン等を切断・遊離する多機能sheddaseとして知られる腫瘊壊死因子α変換酵素活性の制御、DGKεが強直性痙攣発作や記憶長期増強に関与することを明らかにした。ジアシルグリセロールとホスファチジン酸を中心としたシグナリング脂質の動態が関与する生理(病理)機能を分子レベルで明らかにしその制御(診断・治療)を目指す。
生化学第二講座 助手 Instructor
今井伸一 Shin-ichi Imai, M.S.,Ph.D.
研究活動と展望 : 生理活性脂質のジアシルグリセロールとホスファチジン酸はジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)により、その量が制御されている。現在、哺乳類のDGKは9種のアイソザイムがクローニングされており、その構造から5つのグループ(I~V型)に分類されている。 PHドメイン、coiled-coil構造及びSAMドメインを持つII型のDGKにはDGKδとDGKηが分類されている。DGKδがSAMドメインを介してホモオリゴマーを形成し、細胞外刺激によりモノマーへ変化することを明らかにしている。今後も、DGKの各ドメインがどのような機能を有しているかを検討していき、これによりDGKの生理機能の解明を目指す。
生化学第二講座 助手 Instructor
甲斐正広 Masahiro Kai, M.S., Ph.D.
研究活動と展望 : 脂質に様々な生理活性の存在することが明らかにされて久しい。脂質分子およびその代謝酵素が生体内でどのような役割を果たすのか、これを明らかにすることの重要性はポストゲノムの時代に入ってから飛躍的に増大した。ホスファチジン酸は細胞増殖作用を持つことが知られているが、私はこれを水解する2型ホスファチジン酸ホスファターゼのcDNAクローニングを世界に先駆けて成し遂げた。これをきっかけにして多くの新しい知見が今なお導かれ続けている。ホスファチジン酸関連物質の生理機能にはまだまだ上明な点も多く、これらを明らかにしていくことによって生命現象の原理の解明に貢献したい。
生化学第二講座 助手 Instructor
安田智 Satoshi Yasuda
研究活動と展望 : 細胞内シグナル伝達において脂質代謝は重要な役割を担っている。脂質代謝酵素の中でもジアシルグリセロール(DG)をリン酸化しホスファチジン酸(PA)を生合成するDGキナーゼに着目して研究を行っている。DGキナーゼはその酵素学的な性質からDGにより活性化される分子を負に、PAにより活性化される分子を正に制御することが考えられる。DGキナーゼの活性を制御することにより細胞内シグナルの調整が時空間的に行われ細胞機能へ影響を及ぼしていることは想像に難くない。しかしながら、どの分子がどのようにDGキナーゼを制御しているのか、また同時にDGキナーゼがどの分子をどのように制御しているかに関してまだ上明な点が多い。DGキナーゼの細胞骨格系などの細胞機能を制御するメカニズムを明らかにするためDGキナーゼを中心とした分子ネットワークの解明を行って行きたい。
病理学は医学の根幹をなし、まずその最大目的はヒトの病気の発症メカニズムの理解にある。我々の教室はまずこの病理学の基本に最も忠実であるべく、分子病理学的な様々な見地から病理解剖、教育、そして研究にあたっている。もうひとつは、教室での研究成果をヒトの病気の新しい診断や治療の確立に普段よりつとめ、医学、医療に貢献する実践的研究も行うことを大きな目的としている。
病理学第一講座 教授 医学部長 Professor/Dean
佐藤昇志 Noriyuki Sato, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 1.腫瘊免疫とくにヒト自家癌における特異的免疫機構、癌ワクチン開発、 2.NK細胞の作用機構、 3..熱ショック蛋白と免疫、熱ショック蛋白質と癌、 4.リンパ球抗原と機能、 5.MHCクラスIbの免疫分子生物学、 6.移椊片拒絶の制御機構、 7.アポトーシスの分子機構、 8.細胞周期、細胞癌化機構、 9.シグナル伝達機構、 10.白血病、悪性リンパ腫の分子遺伝学、 11.遺伝子診断と分子病理、 12.寄生虫病と分子病理、 13.海洋生物産生物質と癌、免疫、医学主体はヒト癌免疫の分子機序の解明であるが、互いのテーマが関連しあい、癌拒絶という生物現象の機序に新たな知見を提供してきた。広い分野の研究をテリトリーにしておくことも病理学教室のひとつの大きな責務である。各テーマの同時的、平行的な研究の進展が 21世紀の我々どもの教室の進展に直接つながり、病理学、医学の進展に多少なりとも貢献できればと考える。
病理学第一講座 助教授 Associate Professor
鳥越俊彦 Toshihiko Torigoe, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 生体は外界から常にさまざまなストレスを受けており,健康とはストレスに十分適応できる状態,逆に疾病とはストレスに適応できない状態,老化とは生理的にストレス適応力が減弱した状態であると理解される.このような生体のストレス応答性を細胞分子レベルで担っているのがストレス蛋白(HSP)である.HSPは細胞内蛋白質の品質管理を行なうと同時に、抗原提示機構や自然免疫活性化などの免疫システムにも密接に関わっており、HSPの発現や機能を制御することによって,癌免疫制御に貢献できると考えている.また、重力をストレスの1つと捉え,重力医学の開拓も行なっている.
病理学第一講座 講師 Assistant Professor
一宮慎吾 Shingo Ichimiya, MD, Ph.D.
研究活動と展望 : 胸腺は免疫系によるセキュリティシステム構築のために重要な器官で、T細胞が分化・発達する”場”を提供している。その形成にはさまざまな種類の間質細胞が関与しており、ヒトゲノム関連の多くのリソースが有効となった今日、これまで知られていなかった胸腺間質と免疫異常との関係が明らかにされつつある。これからも免疫監視の基盤形成に注目し、また培った解析系を他の組織研究にも応用して病理学的な見識を深めたいと考えています。
病理学第一講座 講師 Assistant Professor
田村保明 Yasuaki Tamura, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 熱ショック蛋白質(HSP)は生体の恒常性を保つために必須の蛋白質である。近年これらのHSPが深く免疫反応に関わっていることが知られつつある。我々は、腫瘊あるいはウイルス感染細胞より精製したHSPを免疫すると、腫瘊あるいはウイルス特異的な免疫応答を誘導できることを示してきた。さらに最近では糖尿病の際、膵のβ細胞障害が生じるが、これにもHSPを介した小胞体ストレス応答が関わっていることがわかってきた。今後、HSPを用いた癌ワクチンの開発や遺伝子治療への応用、さらに糖尿病、動脈硬化症を始めとする生活習慣病におけるHSPの関わりなどについて研究を進めていきたい。
病理学第一講座 助手 Instructor
上口権二郎 Kenjiro Kamiguchi, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 分子シャペロンを用いた神経変性疾患の治療戦略。新規癌抗原の解析を通じた悪性腫瘊に対する治療戦略の同定。疾患の分子機能解析部門病態生理をmolecular biologyを駆使して明らかにすることが目標である。アルツハイマー病などの神経変性疾患や狂牛病などは、いずれも蛋白質の高次構造の破綻が原因で引き起こされる。この結果、神経細胞内に凝集物が形成され、その毒性が示唆されている。こにょうな疾患の一つであるポリグルタミン病のモデル実験系を用いた解析において、私が同定した新規の分子シャペロンを用いると、神経細胞内の凝集体形成を抑制することが明らかとなった。今後、この分子を用いた治療戦略を築き上げたい。一方、ごく最近私たちが同定した上皮悪性腫瘊に特異的に発現する癌特異抗原54K-TUCANは、癌細胞に、幅広い細胞死の刺激に対しての抵抗性を付与する。この分子の解析を通じて、胃癌や大腸癌などの免疫逃避機構や治療耐性機構を明らかにし、日本人に多いこれらの悪性腫瘊を、分子標的治療を行っていきたい。
ヒトの体は,血液から隔絶されたいくつかの区域を内包している.これらの区域は,一層の細胞に覆われることによって独立した内部環境を保っている.これらが機能するために,タイト結合は,区域を隔絶している細胞と細胞の隙間を物質が自由に通過できないように厳密にシールする必要がある.もしタイト結合機能が失われると,浮腫,下痢,黄疸のような病態が発症する.我々の教室では,タイト結合の機能調節機構を分子レベルからヒト疾患のレベルまで含めて解明しようとしている。
病理学第二講座 教授 Professor
澤田典均 Norimasa Sawada, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : タイト結合は,細胞と細胞の隙間をシールする細胞間接着装置である.中枢神経系,網膜,精巣などは,血管内皮のタイト結合により血液から隔絶され,内部のホメオスタシスが保たれている.また肝細胞間に存在する毛細胆管は,タイト結合によってシールされているため,そこに排泄された胆汁は血液中へ漏れることはない.これまでstaticな構造と考えられてきたタイト結合は,最近 dynamicに制御されていることが明らかになってきた.個体では,タイト結合の失調は,浮腫,黄疸や下痢症に結する.このようにタイト結合が関わる病態を理解し,より効率の良い治療の確立を最終目的に,タイト結合の制御機構の解明を目指している.
病理学第二講座 助教授 Associate Professor
小島隆 Takashi Kojima, D.V.M., Ph.D.
研究活動と展望 : 細胞間コミュニケーションに重要な役割を担うギャップ結合は、古くから細胞の増殖および分化に密接な関係をもつことが知られている。しかし、現在でも、様々な細胞間でギャップ結合を介して、細胞の増殖および分化時に実際何をやりとりしているかというような本質的なことはまだまだ分かっていない。我々は、以前から培養肝細胞を用いて、ギャップ結合の発現調節機構の解析をおこなっている。そして最近、ギャップ結合により上皮細胞の分化と極性に関与する細胞接着装置であるタイト結合を誘導できることをみつけた。そしてこのギャップ結合によるタイト結合誘導のメカニズムを解明し、ギャップ結合のあらたな役割を見出したい。
病理学第二講座 講師 Assistant Professor
千葉英樹 Hideki Chiba, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 核内受容体は、内分泌情報の伝達分子として生体の高次機能を担っており、その異常は癌、糖尿病、動脈硬化、骨粗鬆症など多くの疾患の成立・進行に関与する。一方、上皮や内皮に存在するタイト結合は、異なる環境を分離して生体の恒常性を維持しており、その破綻は脳浮腫、上妊、黄疸、感染症、癌の転移などさまざまな病態を引き起こす。我々はこれまでに、多数の遺伝子の導入・ノックアウトなど、飛躍的な遺伝子操作を可能とするシステムを開発した。我々は本システムを武器として、核内受容体の生理機能やタイト結合の形成・維持・再生の制御機構の解明し、その知見を種々の病態に対する予防法・治療法の開発につなげることを目指す。
病理学第二講座 講師 Assistant Professor
飛岡弘敏 Hirotoshi Tobioka, M.D.
研究活動と展望 : 細胞間バリアと細胞極性の維持に関わるタイト結合の異常は、種々の疾患の発生に重要な役割を果たしていると想定されていますが、その詳細は未だ上明です。私は実験動物・人体材料を用いて、種々の疾患の発生病態とタイト結合の異常との関連を、主に病理学的手法を用いて解析しています。
病理学第二講座 助手 Instructor
小山内誠 Makoto Osanai
1.ウイルス感染によるサイトカイン情報伝達系及び免疫機構の変動に関する研究。 2.細菌、及びウイルス由来病原因子の分子生物学的同定。
微生物学講座 教授 Professor and Chief
藤井暢弘 Nobuhiro Fujii, M.S. Ph.D.
研究活動と展望 : 細胞内情報伝達システムのクロストークの複雑性が次第に解明されてきている。これらの伝達系はNF-kBの活性化によるサイトカイン産生系であったり、カスペース活性化によるアポトーシス誘導系、あるいはサイトカインによるリンパ球の活性化である。このような情報伝達系には何等かのかたちでSTATファミリー蛋白が関与していることが次々と明らかにされてきている。多くのDNA型、RNA型ウイルスがSTAT蛋白を分解したり、或いはSTATのリン酸化を抑制することによってこれらの情報伝達系を破綻させることが明らかとなってきた。我々は、ウイルス感染が免疫機構(リンパ球活性化、サイトカイン産生能、抗原提示能等)に与える影響(病原性)を情報伝達機構の面において分子レベルで解明することを目的とするとともに、JAK/STAT系に影響を与えるウイルス蛋白を同定し、これらの蛋白の臨床面への応用の可能性も検討するものである。
微生物学講座 助教授 Associate Professor
横田伸一 Shin-ichi Yokota, M.S. Ph.D.
研究活動と展望 : 病原微生物が宿主への感染を成立させるために宿主免疫のバリアーを巧みにくぐり抜けている機構について興味を持って研究を進めている。研究対象の具体例としては、ウイルス(麻疹,ムンプス,ヘルペスなど)感染による宿主細胞のインターフェロン,サイトカイン情報伝達系の変化や細胞死の惹起や抑制について。これらの現象への分子シャペロンの関与について。細菌学分野では、ピロリ菌や緑膿菌などの慢性感染成立に寄与する菌側の因子(特に内毒素,外毒素)の構造・機能や抗原性の変化について。これらの研究成果を基礎知見の蓄積にとどめず、臨床応用面から感染症治療の新しいストラテジーとして活用することを常にめざしている。
微生物学講座 講師 Assistant Professor
横沢紀子 Noriko Yokosawa, B.S. Ph.D.
研究活動と展望 : 宿主にとってインターフェロンはウイルス感染に対する重要な初期防御システムである。ウイルス感染細胞が産生したインターフェロンは、受容体を介した情報伝達によってウイルスの増殖を抑制する遺伝子を誘導する。その一方、ウイルスは様々の戦略をもちいてインターフェロン作用に抵抗している。ムンプスウイルス持続感染細胞ではインターフェロンのシグナル伝達に働く転写因子STAT1が減少し、インターフェロン誘導遺伝子の発現が起こらず、抗ウイルス活性が誘導されないことをみいだした。ムンプスウイルスのV蛋白質の発現によりSTAT1蛋白質がプロテアソームを介して分解される機構を解明している。
微生物学講座 助手 Instructor
続佳代 Kayo Tsuzuki, B.S., Ph.D.
研究活動と展望 : 家族性アルツハイマー病(AD)の原因遺伝子が次々に発見されて、ADは多様な疾患群と考えられるようになった。しかし、いずれの場合にも脳の病理学的変化は均一であり、アミロイドβ蛋白(Aβ)の沈着によって形成されている考えられている。それゆえ、Aβの凝集・沈着を阻害することができると、ADの病理過程の進展を阻止し、ADの治療につながる可能性がある。 最近Abに相同性のあるアミノ酸配列がAbに結合し、シート構造を壊すという報告がなされた。そこで、これまで我々が開発してきたAb沈着が惹起されるモデルに、このアミノ酸配列をコードするDNAを導入して強制発現させることにより、Ab沈着が阻害されるかどうかを詳しく検証している。
微生物学講座 助手 Instructor
岡林環樹 Tamaki Okabayashi, D.V.M., Ph.D.
研究活動と展望 : ウイルスはインターフェロンをはじめとする宿主免疫をくぐり抜けて、宿主への持続感染を成立させる。研究対象とするウイルス(麻疹、C型肝炎)は、感染することにより、宿主細胞内情報伝達系の破綻を導き、また細胞死機序への影響を与えている。このような現象を引き起こすウイルス因子の探索、標的となる宿主因子の探索を試みている。このようにウイルスと宿主防御機構との相互関係を明らかにすることにより、効果的な治療法開発への新たな知見を提供することを目指す。
老化のメカニズムの解明はポストゲノム研究の最も大切な研究テーマの1つです。私達は薬理学、生化学、分子生物学、細胞生物学の手技を用いて老化と寿命の解明に取り組んでいます。私達の研究のゴールは老化を分子レベルで解明するとともに老化過程に影響を与える薬物を見い出すことです。これと平行してカリウムチャネルの遺伝病および細胞内カルシウムイオンの機能についての研究もおこなっています。
薬理学講座 教授 Professor
堀尾嘉幸 Yoshiyuki Horio, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : ポストゲノム研究の最も大切な研究テーマの1つである老化の分子メカニズムの解明をテーマとしている。酵母や線虫において寿命延長作用を持つ、NAD依存性ヒストン脱アセチル化酵素SIRファミリーの高等動物における役割を調べている。これまで、2種類のSIRをクローン化し、これらが、脳や精巣の幹細胞に発現し、細胞の分化とともに発現が消失することを見い出した。幹細胞でのSIRの生理的機能の解明を目指して研究をおこなっている。また、カリウムチャネルの変異が心臓病を含め、各種遺伝疾患に関与することがわかってきた。そこで、上整脈を中心とした遺伝性疾患とカリウムチャネルの変異について研究をおこなっている。
薬理学講座 助教授 Associate Professor
八田愼一 Shinichi Hatta, Ph.D.
研究活動と展望 : 様々な病気の原因にイオンチャネルの遺伝子変異が関係している。心臓カリウムチャネルの遺伝子変異によってもたらされる疾患にQT延長症候群があり、心臓突然死などが起こりやすい。最近、後天的な要因によると考えられてきた薬剤性QT延長症候群にもカリウムチャネルの遺伝子変異が関与していることが分かってきた。遺伝子の変化によって、上整脈を起こす薬剤に対するカリウムチャネルの感受性が変わると考えられている。しかし、この点に関する日本での研究はまだない。私は心臓カリウムチャネルの遺伝子変異と薬剤性上整脈との関連について検討し、これを基に薬剤性上整脈の発症を防ぐマススクリーニングを進展させたいと考えている。
薬理学講座 講師 Assistant Professor
竹村晴夫 Haruo Takemura, Ph.D.
研究活動と展望 : シナプスでの神経伝達物質の開口放出において、細胞内の Ca2+ が重要な役割を担っていることは良く知られているが、開口放出の過程や Ca2+ の役割は謎に包まれている。生きた細胞での開口放出の過程を肉眼で観察することが出来れば、謎をかなり解くことができるであろう。実際に開口放出を可視化する試みが行われているが、技術的な問題もあり未だ非現実的である。私は外分泌腺細胞の開口放出における Ca2+ イメージングをミリ秒オーダーで捉え、従来の報告と異なる新知見を得た。これを応用し、開口放出における関連物質の振るまいを可視化して分子論的に解明し、さらに、神経疾患の病因の解明や治療へと結びつけることを目指したい。
薬理学講座 助手 Instructor
久原真 Shin Hisahara, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 神経細胞死、脱髄疾患におけるオリゴデンドロサイトの分子生物学的役割の解析、神経細胞寿命の分子解析研究活動と展望:細胞死は1990年代前半から分子生物学、遺伝学の手法によりそのメカニズムが次第に明らかになりつつある。また腫瘊や神経変性疾患などで細胞死が明らかに認められる疾病も多く示唆されている。私は多発性硬化症のモデル動物や細胞死実行分子caspaseの一つについてノックアウトしたマウスなどを用いて発病メカニズムに重要な関与があることを明らかにした。その過程でcaspase活性化について既知のメカニズムとは異なる分子が作用している可能性が得られ今後検討予定である。また、現在機能の上明な新規分子が細胞死に関与しているか細胞生物学的手法により検討を加えていきたいと考えている。
薬理学講座 助手 Instructor
丹野雅也 Masaya Tanno
近年の我々の研究活動は次の4点に重点を置いている。1)ロタウイルスおよびポリオウイルス感染症の疫学、2)ロタウイルス遺伝子の変異の機序と分子進化に関する研究、3)院内感染起因菌の分子疫学的解析および薬剤耐性遺伝子の研究、 4)in vivo およびin vitroにおけるマウス初期胚に対する化学物質の影響の研究
衛生学講座 教授 Professor and chief
小林宣道 Nobumichi Kobayashi, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 感染症の疫学を中心に、感染症の起因微生物とその病原因子・抗原性などの解析、感染経路の解明や予防対策法の確立を目的とした研究を行なっており、ロタウイルスおよび院内感染起因菌(黄色ブドウ球菌、腸球菌など)を主な研究対象としている。ロタウイルスは乳幼児下痢症の最も重要な原因ウイルスであり、開発途上国では高い乳幼児死亡をもたらしている。分子疫学的研究および分子進化の機序に関する研究を通して、本ウイルスの自然界における生態を理解し、予防対策に貢献することを目指している。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は世界中で最も重要な院内感染起因菌であり、また腸球菌や緑膿菌などの多剤耐性化も現代の医療現場における脅威として認識されている。これら院内感染起因菌については、それら細菌・薬剤耐性遺伝子の分布状況と人および環境中における伝播の実態を明らかにするため分子疫学的手法による研究を進めている。さらに薬剤耐性遺伝子については薬剤耐性の分子機序を包括的に理解するための研究を行っており、これを薬剤耐性化の抑制および院内感染防止に役立てたいと考えている。
衛生学講座 助教授 Associate Professor
石埜正穂 Masaho Ishino, M.Env.Sci., Ph.D.
研究活動と展望 : 細胞は生命の最小単位であるが、生体内においては社会的集団の一員としてその挙動が厳格に制御されている。各種制御に対する細胞の応答は、表面リセプターに始まりエフェクターに至る細胞内シグナル伝達機構の仲介により達成される。そこでは、精緻な伝達制御と迅速かつ適切な細胞応答を可能にすべく、蛋白質間の複雑な相互作用が中心的な役割を演じている。ウイルスはそのようなシステムを巧みに利用して、ヒトに感染し、自らの子孫を増殖させ、再び環境中に拡散する。私は、細胞内・外におけるウイルス由来蛋白質と細胞由来蛋白質との相互作用に着目しつつ、ウイルス感染のシステムをシステマティックに解明すべく研究を進めている。
衛生学講座 講師 Assistant Professor
鷲見紋子 Ayako Sumi,
研究活動と展望 : 非線形・非定常時系列データから有意な情報を引き出すことを目的として、これまで、社会的に緊急性の高い対象の時系列データ(地震波、感染症発生数データ、生体データ)の解析、およびその結果を説明する数理モデルから生成される時系列データの解析を行ってきた。主な成果として、数理モデルによって生成されたカオス時系列の解析結果から、短い時系列からもそのカオス特性を指し示す、幾つかの尺度を提起するに至った。この指標に基づいて、感染症発生数の実測データのカオス特性を明らかにし、予測値を定量的に示すことに成功した。また、日本の感染症サーベイランスデータの解析結果から、27の感染症データの時間的変動構造が3つのパターンに分類されることを明らかにし、病原体・疫学的特性が異なる感染症の発生メカニズムの分類が可能であることを示唆した。今後は、感染症の発生変動に、気象の変化やウイルスの変異などが与える影響を定量的に測ることを課題として、気象データや病原体検出数データなど、感染症の発生変動に影響を及ぼす要因の時系列データの時間的変動構造を調べ、これらの結果と感染症発生数時系列データの解析結果との相互相関を測る。このように、現在蓄積されている時系列データから有意な情報を引き出し、時々刻々と変化している感染症発生変動の時間的変動構造の要因を特定することは、現在懸念されている地球温暖化現象やウイルスの変異などによる新興・再興感染症の予防に資すると考えるものである。
衛生学講座 助手 Instructer
三瀬敬治 Keiji Mise, M.S.
研究活動と展望 : 環境中の様々な物質や要素から我々が受ける影響のうち、次世代への影響すなわち生殖毒性は、ガンのように生体が直接その生命を脅かされるものと同時に、非常に大きな研究テーマである。しかしながら、単一の化学物質に対しても母胎の状況や発生段階によってその影響は大きく異なり、危険性の評価には多くの困難がある。我々は胚細胞における染色体、染色分体の検討という細胞遺伝学的手法を用いて、in vivo 実験系とin vitro 実験系との比較、発生段階による感受性の時期特異性の的確な評価方法の確立を目指している。
わが教室はがんやその他の病気の疫学的な研究を継続的に行っている。これらの研究の目的は主として病気のリスク要因を検索することと関連している。また、それらの病気の死亡率を下げることを目的とした予後因子にも関心を持っている。われわれは、前立腺がん、多発性骨髄腫、原発性胆汁性肝硬変などの危険因子に関する研究、インフルエンザワクチンの評価の研究に参画している。
公衆衛生学講座 教授 Professor
森満 Mitsuru Mori, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 疾病の予防という観点から宿主要因と環境要因の交互作用を疫学的方法に基づいて研究している。特に、がんの予防に関する疫学的研究、特定疾患、その他の疾患の疫学的研究、地域における保健医療福祉の連携に関する研究などを行っている。具体的には、卵巣、乳房、大腸、膵臓、肝臓、前立腺がんなどの増加傾向にあるがんの発生関連要因の検索を行っており、それらの研究に分子生物学的手法を取り入れつつある。また、北海道内の集団を継続的に追跡調査して全死因死亡、がん死亡、脳血管疾患死亡などと関連する要因を検討している。特定疾患に指定されている全身性強皮症、特発性大腿骨頭壊死症、難治性の肝疾患(原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝疾患、劇症肝炎)などの疫学的研究を行っている。
公衆衛生学講座 助教授 Associate Professor
鷲尾昌一 Masakazu Washio, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 介護保険制度前後で要介護高齢者を介護する家族の負担に及ぼす要因がどう変化したかを追跡し、在宅介護の継続のためにどのような政策が必要かを提言している。施設入所高齢者のMRSA危険因子は低栄養やADLの低下、抗生物質の多用、第三世代セフェム剤の投与であることを明らかにしたが、現在、森教授をチーフとして、施設入所高齢者を対象にインフルエンザワクチンの予防効果を検証する研究が進行中である。日本人の冠動脈硬化の危険因子は糖尿病が高コレステロール血症よりも重要であることを明らかにしたが、現在は、特定疾患(OPLL,SLE)を対象とし、環境要因と遺伝子多型の交互作用に関する研究の他、疫学研究における倫理についても研究を行っている。
公衆衛生学講座 講師 Assistant Professor
坂内文男 Fumio Sakauchi, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 医学の進歩にともない診断治療のレベルは上昇してきているが、なお発症の原因が上明で、治療法も明確に確立されていない疾患も多い。現在、厚生労働省の特定疾対策事業で治療研究対象疾患に指定されている、強皮症と難治性の肝疾患の原因究明をめざして臨床医と協力しつつ疫学研究を進めている。
公衆衛生学講座 助手 Instructor
園田智子 Tomoko Sonoda, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : (1)多発性骨髄腫と前立腺癌の疫学調査を行っている。多発性骨髄腫は近年増加傾向にあり、予後の悪い疾患である。環境因子がリスクファクターであるといわれているが上明であり、詳細な症例対照研究を継続中である。前立腺癌も近年かなり増加しており、食生活の欧米化がその一因と言われている。我々の症例対照研究では、脂質が危険因子であり、大豆製品が予防因子であることが示唆されている。 (2)21世紀を迎えて、国は一次予防に重点を置く「健康日本21《という国民健康づくり運動を計画した。帯広市・釧路市では、その地方計画を立ち上げた。我々は、アンケート調査・集計分析・計画の評価マニュアルの策定に携わっており、今後、北海道における保健医療対策に積極的に関わっていく予定である。
公衆衛生学講座 助手 Instructor
鈴木拓 Hiromu Suzuki
当講座は札幌医科大学医学部のユニークな基礎医学講座である。我々は、アルコール中毒作用の分子機構やアルコール性臓器障害の発生・伸展機序の解明で内外をリードするとともに、DNA多型の法医学的応用や心臓性突然死の分子診断、濫用薬物等の薬物動態学的解析についての研究を行って実務に役立てている。また、北海道の要請により法医解剖を行って社会に貢献している。
法医学講座 教授 Professor
松本博志 Hiroshi Matsumoto, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : アルコールは、飲酒そのものに法的規制のない濫用薬物である。慢性の大量飲酒は、依存症や数々の臓器に障害をもたらし、飲酒に伴う疾病の医療費は総医療費の4分の1を占めている。また、法医解剖事例においてもアルコール関連死は少なくない。私は、アルコールの急性作用機序を分子レベルで明らかにすることで、アルコール性臓器障害の進展機序を解明してきた。特に生体防御系の転写制御因子NF-κBに着目して、その活性化動態にアルコールがどのように関与しているかを次々に明らかにしている。この一連の研究から臓器障害の予防へと発展させることは、飲酒に関連した医療費や死亡数の減少に寄与するものと期待される。
法医学講座 助手 Instructor
西谷陽子 Yoko Nishitani, M.D.
研究活動と展望 : 慢性飲酒では、生体内において酸化的ストレスの上昇、血中エンドトキシンの上昇やサイトカインの放出がおこり、肝臓においては肝障害を来すことがよく知られている。これらの反応には細胞内情報伝達系が深く関与している。私は、酸化的ストレス等で活性化し、アポトーシスや炎症反応などを引き起こすc-Jun N-terminal kinase (JNK)およびその関連タンパクに着目し、まず急性アルコール投与時の肝障害発生および防御機構の解明を行っている。急性期反応機序の解明は、臓器障害の発生機序に関わり、予防に役立つもとの期待される。
法医学講座 助手 Instructor
藤井健一 Kenichi Fujii
法医学講座 助手 Instructor
今林貴代美 Kiyomi Imabayashi
難治疾患の根底に潜む分子機構の解明と、その理解に基づいた新しい治療法の開発とを研究の基幹に据えている。 1)癌、免疫・炎症疾患、動脈硬化、虚血性心疾患、などに対する遺伝子治療の基礎ならびに臨床研究、2)幹細胞の生物学と再生医学の前臨床研究、の二つが、研究の柱になっている。
分子医学研究部門 教授 Professor
濱田洋文 Hirofumi Hamada, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 分子医学研究部門は、癌をはじめとした難病の本質的な治療法の開発に取り組み、遺伝子治療・再生医療の研究の大きな流れを形成してゆけるような、基礎と臨床の橋渡しとなる研究室造りをめざしている。遺伝子治療・再生医療の先端的研究を進めることを通じて、大学院の教育研究活動の充実化を図っている。当部門の研究の流れは以下のようになる: 1)細胞や組織の培養・分化制御、遺伝子導入発現法の基盤技術の開発。 2)難治疾患の治療のポイントとなる病態の解明。 3)実験動物モデルによる治療実験。 難治疾患を実際に治癒させうる再生医療、遺伝子治療法の樹立をめざし、臨床グループとの共同研究、遺伝子治療臨床研究に意欲的に取り組んでいる。
分子医学研究部門 助教授 Associate professor
加藤和則 Kazunori Kato, Ph.D.
研究活動と展望 : ヒト腫瘊に対する新たな且つ効果的な遺伝子治療および免疫細胞治療法の開発を目指す。抗腫瘊効果を発揮するリンパ球機能分子を同定し、腫瘊細胞への直接的な遺伝子導入または樹状細胞などの免疫担当細胞への間接的な遺伝子導入により多くの難治性腫瘊(白血病、固形腫瘊)を標的とした治療法の確立を念頭に基礎および臨床研究を推進していきたい。また自己免疫性疾患の原因遺伝子、分子の同定を通じてそれらを標的とした治療法、治療薬の探索研究にも取り組んでいる。
分子医学研究部門 講師 Assistant Professor
中村公則 Kiminori Nakamura
分子医学研究部門 助手 Instructor
平井幸恵 Sachie Hirai
研究活動と展望 : 遺伝子治療・再生医療に関わる基礎的研究を行っている。特に、癌細胞特異的に遺伝子導入の可能な新規ベクターの作製と評価、及び、動物モデルによる治療実験を通してその有効性・安全性を検討中である。臨床応用につながる優れたベクターの開発と、附随する基盤技術の向上を目指して、今後の研究を進めたい。
診断と治療にむけた分子標的の探索をテーマにしています。病態における蛋白質のプロファイルをプロテオミクスにより構築し、診断と治療に直結する病態マーカーを同定しています。分子標的治療を目指して遺伝子組み換えマウスを独自に作出し、治療モデルを開発しています。研究支援システムの開発と研究支援に取り組んでいます。
分子機能解析部門 教授 Professor
小海康夫 Yasuo Kokai, M.D., Ph.D.
研究活動と展望 : 分子機能解析部門では、プロテオミクスや遺伝子組換えマウスを用いて病態マーカーの探索と病因遺伝子の検索を行っています。侵襲の低い特異的な診断システムの構築や患者さんにやさしい医療への寄与を目指しています。また、研究支援業務を職員が一体になって推進しています。学内の研究者の皆様にすこしでもお役に立つべく研究支援システムの構築を目指しています。
医学部医学科基礎医学部門講座解剖学第二講座
医学部医学科基礎医学部門講座生理学第一講座
医学部医学科基礎医学部門講座生理学第二講座
医学部医学科基礎医学部門講座生化学第一講座
医学部医学科基礎医学部門講座生化学第二講座
医学部医学科基礎医学部門講座病理学第一講座
医学部医学科基礎医学部門講座病理学第二講座
医学部医学科基礎医学部門講座微生物学講座
医学部医学科基礎医学部門講座薬理学講座
医学部医学科基礎医学部門講座衛生学講座
医学部医学科基礎医学部門講座公衆衛生学講座
医学部医学科基礎医学部門講座法医学講座
医学部教育研究機器センター 分子医学研究部門
医学部教育研究機器センター 分子機能解析部門