活動紹介

神経再生医療学部門の研究成果や学会・論文発表など、活動内容を紹介いたします。

<メディア> 本望修教授の「脳梗塞の後遺症を改善する治療法」についての発表が3月27日の北海道新聞に掲載されました

 
 
 
*身体まひ、失語症に効果

2013/03/27 北海道新聞朝刊全道(生活・くらし) 21ページ

——今回の治験の意義は。
 「脳梗塞は脳の血管が血栓(血の塊)で詰まり、脳細胞が栄養や酸素の不足などで壊死(えし)してしまう病気で、国内で年間42万人が発症している。死亡することがあるほか、体のまひや失語症など重い後遺症に悩まされる。現在は後遺症に対して有効な治療法がないので、実用化すれば助かる人も多い。幹細胞を使った脳梗塞治療に向けた本格的な治験は、世界的にもまだ例がない」
 ——脳梗塞の後遺症の改善に骨髄幹細胞が働くしくみは。
 「脳梗塞の患者に投与した本人の骨髄幹細胞は、ダメージを受けた場所に集まる性質がある。集まった直後から、死にかけた神経細胞を助ける物質を放出し、細胞の機能を復活させる。約1週間後には血管が再生され、さらに約2週間後には神経細胞が再生される。その結果、体の機能も改善する。いずれも、1990年代から進めてきた私たちの研究で分かったことだ」
 ——これまでの研究で投与された患者への効果は。
 「2007年から3年間に、41~73歳の男女12人に初期の臨床研究を行った。半身まひで手がほとんど動かなくなった人が、翌日から動くようになった。失語症で人の話を理解したり言葉を発したりすることができなくなった人が、会話できるようになった。患者によって異なるが、投与後おおむね数カ月から1年間は改善が進行する。また、改善後に再び悪化した人はいない」
 ——感染症や拒絶反応の心配もないというが。
 「患者本人から採取したのだから、他人のものを投与するのと比べて安全性は高い。これまで数多くの動物実験をしてきたが、問題は起きていない。今回の治験では、さらに高い安全性の実証を目指している。今後2年間をめどに110人の症例データを集める。その後医薬品としての承認申請を出す。その1年後には承認が下りると期待している」
 ——脳梗塞以外への将来的な発展性は。
 「これまでに行った動物実験では、脊髄損傷、パーキンソン病、ヤコブ病などで効果が確認された。時間はかかるが、一つ一つ実用化を目指したい」
                  

 札医大は治験の参加者を募集している。対象者は20~64歳で、発症後20日をめどに札医大病院に転院できる人といった多くの条件がある。問い合わせは専用コールセンター、フリーダイヤル0120・265・016(平日の午前9時~午後5時)へ。

◇札医大が進めている脳梗塞治療法の開発研究の概要◇
 脳梗塞の患者本人から骨髄液を採取し、骨髄幹細胞を抽出して培養。増殖した骨髄幹細胞から細胞製剤をつくり、発症からおおむね2カ月の患者に投与する。採取は局所麻酔で10分ほどで済み、投与も静脈点滴のため患者への負担は少ない。患者本人の骨髄幹細胞を使うため拒絶反応や感染症などの問題も低いという。
 

2013/04/16