第11回春季シンポジウム抄録



乳房の画像検査 −より良い画像を求めて−

                 座長 石岡  亮(北海道対がん協会)


 乳腺疾患の検査には,乳腺が体表臓器である事から触診が基本的かつ重要な方法であった。しかしこの方法では客観性に欠けるばかりか,非触知性の癌,早期癌の発見は困難である。そこでより精度の高い診断を目的として,近年画像検査の導入が積極的に行われるようになってきた。

 乳房画像検査としては,古くからマンモグラフィ(MMG)で代表されるようにX線による撮影が一般的である。しかしその画像を検討したときに情報量の多い適正な画像が得られているかどうかは,各施設ともまだまだ問題が残るところである。

 よりよい画像の追求は放射線技師に課せられた永遠のテーマであり,またそれを実現するためには日頃の努力が重要と考える。何が良い画像かを統一した判断基準に基づいて検討する必要があり,この確立こそが良質の画像を得る為の基本と考える。

 今回のシンポジウムでは,こうした現状を考慮し「より良い画像とは何か一「どうすれば良い画像を得る事ができるか」をメインテーマにその技術的ノウハウを品質管理,フイルムMMG,CR−MMG,エコー技術について発表・討論して行きたいと考えている。

 北海道ではこれからますます乳腺画像検査の需要が高まるだろうと予想される事から,これからスタートする施設も既に実施している施設も一枚の乳腺画像を通し「よりよい画像を求めて一括発な討論が出来るように進めて行きたい。


1.MMGの品質管理について

                   北海道対がん協会釧路がん検診センター
                            丹野律子


 良質のMMGを得る為には,撮影機器,感材,撮影技術等を総合的に管理する必要がある。米国では,ACRが発行したマニュアルに基づいて管理が行われているが,日本に於いても,日本医学放射線学会が中心となり,1992年に乳房撮影ガイドライン委員会を発足,本年春頃には刊行される見込みである。

 そこで,当施設3センター及び検診車1台計4台の乳房X線撮影装置について,品質管理プログラムに従し額り定を試みた。

 今回,品質管理の項目と実行方法及び測定結果につて,また,自動現像機やカセッテの点検等,日常的な管理の必要性も加えて報告する。


2.フィルム/スクリーン系のマンモグラフィ

                   市立旭川病院 中央放射線科
                            畑中康裕


 マンモグラフィは乳腺疾患の画像診断において,重要な検査法の一つであり,他のX線検査に比べ特殊な撮影技術が要求されると同時に,適切な器材の選択がされなければならない。

 以前よりマンモグラフィの標準化が提言され,現在も関係団体により検討がなされているが,各施設間での技術的格差の解消のためにも,現状の撮影技術の見直しが必要と考える。

 より良いフィルム/スクリーン系のマンモグラフィを得るための因子は数多く存在するが,今回我々は,それらの中でも特に画質を大きく左右すると考えられるものとして,適切なフィルムの選択,散乱X線の影響,乳房の圧迫,適切なポジショニングに着目し,以下の項目の通り検討した。

  1. 低・中・高ガンマの3種のフィルムについて,RMI製156ファントムの模擬繊維像,石灰化像,腫樋像の描出能をそれぞれ測定し,臨床写真でも比較した。

  2. 散乱X線の画像に与える影響,及びグリッドの効果と有用性ついて,前述と同様に測定比較を行った。

  3. 乳房の圧迫技術とその有用性について検討し,臨床写真の比較により確認した。

  4. マンモグラフィの基本撮影法における描出領域,ブラインドエリアについて検討し,さらに臨床写真を基に適切なポジショニングについて技術的要点をまとめた。


3.CR技術

                   日鋼記念病院 放射線科
                            加簾由妃子


 X線乳房撮影はフィルムノスクリーン系によるものが主体でありますが,コンピューテッドラジオグラフィ(CR)装置の普及に伴って,CR画像を用いて診断する施設が増えてきています。

 CR画像は得られた画像情報に対し,デジタル画像処理を施さなければならず,そのための各種パラメーターを決定しなくてはなりません。つまり,CR画像にはコントラストや濃度をコントロールする階調処理(階調タイプ,回転中心,回転量,階調シフト)と,鮮鉾度をコントロールする周波数処理(周波数ランク,周波数タイプ,周波数強調度)があり,これらのパラメーターを撮影部位や診断目的に応じて設定し,画像を作成しています。しかし,その決定要素はあくまでも視覚的なものによることが多いと思われます。

 今回のシンポジウムでは,これらの事を踏まえ,乳癌診断の直接的な所見となりうる微細石灰化,腫層陰影ならびに腫癌の辺緑像の描出能にいて,RMI製156型ファントームを用いてフィルム/スクリーン法と比較しながら評価を行います。

 これらの評価をもとにして,乳房におけるCR画像の最適な処理条件を検討するとともに,CR化によりどの程度被曝線量の低減がはかれるのかという点についても検討し,報告します。


4.乳房超音波検査技術

                   手稲渓仁会病院 診療技術部
                            遊佐 亨


 食生活の欧米化に伴い,日本人女性の乳ガン患者は急速に増え,そのピークも30代後半から60代後半までと,幅広くなってきているのが現状である。それにつれ乳房検診の重要性がさけばれ乳房超音波検査はマンモグラフィと共に必須の検査として定着しつつある。昭和63年度第5次悪性新生物実態報告,平成3年度日本対ガン協会の報告によると,視触診に加えて超音波検査を行っている施設が多くなってきている報告がある。腫福を触知できる乳ガンの多くは浸潤ガンであり,触診による腫福検出を主体としている乳ガン検診のあり方には限界があるといわざるを得ない。今回,過去3年間(平成4年〜平成6年)における当院での乳房超音波検査の成績を踏まえて,乳房超音波検査技術ならびに臨床的有用性を報告します。



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