眼瞼下垂(がんけんかすい)とは、まぶたが垂れ下がり、上がりにくく、目が十分開きにくい状態のことです。
生まれつきまぶたが下がっている先天性眼瞼下垂では、まぶたをあげる筋肉の力が弱いか、もしくは欠損しているために起こります。
日を追うごとにだんだんとまぶたが下がってくるような後天性眼瞼下垂は、
加齢、皮膚のたるみ、コンタクトレンズの長期使用、長時間のパソコン使用、
アトピーや過剰なメイクでのまぶたのこすれ、神経麻痺・アレルギー疾患、外傷後のひきつれ、白内障の手術後
など様々な原因で発症します。
眼瞼下垂を放置すると、徐々に視野が狭くなり、視力が落ち、日常生活に不便が生じます。さらに肩こり、頭痛、めまいなどの原因にもなる可能性があります。このような場合は、手術による治療が必要です。
当科では、入院の上、治療を行っています。
治療法
手術にはいくつかの方法があり、下垂の程度を考えて選択します。
1.眼瞼余剰皮膚切除術
まぶたをあげる筋肉(上眼瞼挙筋)は機能していますが、まぶたの皮膚のたるみが強く、下垂している場合に適応になります。たれ下がった余分な皮膚と皮下組織、眼輪筋、脂肪を切除します。
2.挙筋前転術(挙筋腱膜修復術、タッキング)
まぶたをあげる筋肉(上眼瞼挙筋)と、瞼板との間にある腱膜がのびている場合に行います。のびている腱膜を折り曲げるようにして、細いナイロン糸で3箇所、縫い縮めます。
挙上効果に限界があるため、下垂の程度が強い方では適応外になります。
3.挙筋短縮術
のびてしまった腱膜を一度瞼板からはがし、一部分を切り取り、腱膜の長さを短くして瞼板に縫合することにより、まぶたをあげる手術です。
4.上眼瞼つり上げ術
まぶたをあげる筋肉(上眼瞼挙筋)の力が、かなり弱いか、全くない場合に適応になります。まぶたの筋肉は動かないため、まぶたと、おでこの筋肉(前頭筋)の間に筋膜を移植し、おでこの筋肉の力でまぶたを上げるようにします。筋膜は太ももから採取します。この手術は通常、全身麻酔下に行います。
5.経結膜的眼瞼挙筋短縮術
まぶたの皮膚に傷を付けず、まぶたの裏側から腱膜を切除し、短縮する方法です。短縮量が少ないため、適応は限られています。
6.埋没法
皮膚を切らず、まぶたにナイロン糸を通すことでまぶたをあげる手術法です。美容外科でよく行われている方法です。(当大学病院では行っていません)
治療の経過
まぶたの手術では、目の開き具合や、二重の位置、左右対称性などを確認しながら行うため、通常は局所麻酔(部分麻酔)で行います。まぶたの皮膚に、細い針で、局所麻酔薬(リドカイン)を注射します。注射の際には痛みを感じます。
手術直後よりまぶたがはれます。はれの程度は手術方法により違います。個人差もあります。また、手術翌日頃から、まぶたにあざ(皮下出血)も出現します。あざが引けるまで約2−3週間かかります。
まぶたの圧迫や安静が必要であるため、基本的には1週間程度の入院が必要になります。手術から約1週間で抜糸を行います。抜糸後の傷の赤みは数ヶ月続く場合もありますが、多くは徐々に色が消え、目立たなくなります。
眼瞼下垂治療にかかる費用
当院で行っている眼瞼下垂の治療は基本的には保険適応となり、費用は3割負担です。(70才以上の高齢者は1割負担です)詳細は外来受診時に問い合わせていただくか、または当院の患者サービスセンター(外来棟2階)にてお問い合わせください。おおよその費用が試算できます。
☆眼瞼下垂の自己診断法
まず、鏡に対して顔をまっすぐに向けて眼を軽く閉じます。眼を普通に開けたとき、まぶたが黒目の中心部分(瞳孔)にかぶさった状態であり、無理に開いたり、まゆ毛を持ち上げなければきちんと開かない場合は、眼瞼下垂症の可能性があります。
また、同じように鏡に向いて両眼を閉じ、まゆ毛の上を軽く指で押さえて、眼を開けます。無理なく両眼が開けられる場合は、眼瞼下垂の可能性はありません。逆に、開かなかったり、または額に力が入ってしまう場合には眼瞼下垂の可能性があります。
まぶたが重苦しい、額や眉間のしわが深い、まゆ毛と眼の間が広い、いつもアゴを上げてものを見る、なども眼瞼下垂が疑われる症状です。
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