医療情報企画室開設のご挨拶

(札医大ネット 2003.9 vol.15掲載)

医療情報企画室の設立について
−縦割り組織の横糸として−

医療情報企画室 室長、放射線医学講座 藤森研司

 平成15年7月7日の良き日に、医療情報企画室が看護部長室と病院事務長室の間の小部屋に設置されました。これは全国の大学病院に設置されている医療情報部とは目的を異にしており、学問として医療情報を扱うのではなく、病院運営の実践として医療情報を取り扱っていくものです。「企画」の二文字がその意気込みを物語ります。他大学でも医療情報部は発展的な解消を告げつつあり、「戦略的」、「企画」などの文字を冠した組織に改組しつつありますが、旧来的な「医療情報部」を持たなかった当院では、新しい流れに乗る形でスタートしました。
 直属のボスは並木病院長であり、要綱上は医療情報の収集・分析、それに基づく改善等の企画立案、個別課題に応じたプロジェクト検討結果のとりまとめを主なミッションとしています。構成員は私と副室長の第二内科土橋先生、参事室の安藤主査、山口主査の四人です。全員が兼務ですので、一同が介する事はめったになく、時として電話に出る 者もいない状態ですが、徐々にホットな場所にしてゆきたいと思います。

 他の委員会組織やプロジェクトチームとの境界はあいまいではありますが、現行で取り扱っている事項は、1)医療情報統合システムの開発、2)医事課と共同で包括評価対策全般、3)業務課と共同で新物流システムの構築、4)参事室と共同で院内コストの分析です。
 1)、2)はすでに皆様にもおなじみと思われます。3)は包括評価の開始後、医療材料を特定と非特定に分けることは意味がなくなりましたが、現行システムでは非特定医療材料の使用実績を押さえることができず診療コストの算出ができませんので、これを捕捉するシステムを構築する予定です。各診療科では他科の在庫数が見えるようになりますので、「買うより借りよ」の精神で不良在庫を減少させたいと思います。
 4)は、現行では包括評価による医療費を医科点数表によるものと比較して云々していますが、これは必ずしも意味のある比較ではありません。保険点数は必ずしもコストと比例しないからですが、今はこの比較しかできないと言うのが正直なところです。各診療コストと3)の完成後に捕捉された医療材料費で、原理的にはDPC群ごとのコスト算出が可能になります。またクリニカルパス作成上の基礎データとしても使えます。難しいのは、施設、設備、人件費等をどのように診療コストに反映させるかで、精度を上げるほど脂っこい話になってきます。難しい作業ですが、今後の経営健全化に向けてコストを不明にしたまま議論をするのか、コストを明らかにして議論をするのかを考えると、この作業は避けて通れません。

 以上のように医療情報企画室では微力ながら実践的な課題を中心に、より良い病院作りに取り組んでいます。「医療情報」とは単にシステム上にあるデータだけではなく、各部署のものの考え方、仕事の仕方を含んで奥の深いものがあります。「医療情報」とは数字よりも人です。思惑の相反する縦割り組織の中で、横をつないでいくのが何よりもの我々のミッションと考えています。
(2003.8.14)

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