Division of International Exchanges/Affairs No.3 Summer 1999
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アルバータ大学とカルガリー大学との新しい交流協定に調印! 去る6月13日から18日まで、秋野学長と神保国際交流部長は、カナダを訪れ、アルバータ大学とカルガリー大学との新しい交流協定に調印をしてきました。 これは、両大学との交流提携が更新時期を向かえることを機に、昨年アルバータ大学のフレーザー学長が本学を訪れ、秋野学長との間で、将来を見据えた交流の充実に向けて話し合われて以来、交流協定の見直しを両大学の間で進めてきたものです。 [アルバータ大学との新しい交流協定のポイント]
[カルガリー大学との新しい交流協定のポイント]
これらの新しい協定をベースに、カナダとの交流も新たなフェーズを向かえました。 さっそく今年度から、学生のアルバータ大学、カルガリー大学での研修も始まります。学生同士の交流も深まり、グローバルな視野をもった人材が養成されるとともに、保健医療学部を含めて両大学の一層の研究交流が深められ、その成果が、北方圏諸国そして北海道の医療のレベルアップにつながることが期待されます。 ◆アルバータ大学への語学研修、第1期生の学生23名が出発 新しい交流協定に基づき、今年度から、アルバータ大学における学生の語学研修受入が始まり、参加の学生が7月17日、新千歳空港を出発しました。 語学研修第1期生は、医学部13名、保健医療学部9名、保健医療学部大学院生1名の合計23名。海外は初めてという学生も多く、集合場所の空港内の会議室では、真剣な表情で出入国の手続きの説明を受けるとともに、直前までスーツケースを開けたり閉めたり・・・。期待と不安を胸に元気に旅立ちました。 研修は3週間。毎日4時間にわたる英語の授業のほか、病院内見学や家庭の訪問、フェアウエルパーティ、カナディアンロッキーのツアーなども企画されており、カナダの文化や生活を満喫しているものと予想されます。 出発前の7月7日には、秋野学長や青木学務部長、神保国際交流部長の参加のもと壮行会が開催されました。先生方から、現地での積極的な姿勢を促す言葉と、「君子危うきに近寄らず」 の言葉をいただきました。第一期生の研修の成果は、次号で学生へのアンケートや投稿によりご紹介しますので楽しみにしてください。 ◆カルガリー大学では血液学の臨床研修 アルバータ大学での語学研修に引き続き、カルガリー大学では9月20日から10月27日まで、血液学の臨床研修の受入れがなされます。参加者は、面接試験を含めた厳しい選考を経て、医学部5学年2名、6学年2名の4名(男性3名、女性1名)に決定しました。参加の4名は、夏休み期間を利用して英語のテキストを熟読するなど準備に張り切っています。
◆国際交流活動報告会の開催 札幌医科大学国際交流活動報告会が6月25日(金)国際医学交流センターで開催されました。平成9年度、10年度に、北方医学交流で協定を締結しているフィンランドのタンペレ大学、カナダアルバータ大学、カルガリー大学、アメリカマサチューセッツ大学、中国医科大学において、研究活動を行った研究者の方々のうち6人が、スライドを用いながら、現地での研究内容や生活について報告を行いました。 秋野学長や外国人研究者の方々の参加もあり、みなさん熱心に報告に耳を傾けていました。 また、引き続き、国際交流懇談会が臨床棟地下1階食堂で開催されました。報告を行った研究者の他、現在本学で研究を行っている外国人研究者14名も参加し、医科大学での生活やそれぞれのお国の話などに花が咲き、楽しいひとときを過ごしました。 ◆札幌医科大学の国際協力 本学の国際交流は、北方圏諸国との交流の他に、開発途上国等から本国の技術を学ぶ技術研修員の受入など国際協力の面においても、積極的に進められています。 今年度においても、各講座の協力を得ながらこれまでに次の研修員の受入が決定しました。研修員の皆さんと学内で出会うこともあると思います。研究面だけではなく、様々な国の文化、生活、習慣などについて語りあうなど、この機会に交流を深めてはいかがでしょうか? 今年度の研修員の受入れ(予定を含む)
*この他にも、多くの訪問研究員の方々が各講座で研究を行っています。
◇◇お知らせ◇◇ ◆国際医学交流センターの活用について 国際交流委員会では、現在の国際医学交流センターが外国人研究者の方々にとって、より使いやすく、また交流の拠点となるよう、様々な角度からそのあり方について検討を進めていくこととしています。 現在、1階研修室の一つを「談話室兼学習室」として開放する検討を進めており、準備が整い次第、お知らせしますので、是非ご活用ください。 ◆開学50周年・国際シンポジウムの企画が始まってます。 来年の開学50周年に向けて、国際交流委員会では、これまでの北方圏諸国との交流の成果と21世紀を展望した本学のビジョンを紹介する「国際シンポジウム」の企画に取り組んでいます。シンポジウムは来年6月23日、24日に開催する予定で、現在、研究発表者の調整を行っているところです。準備状況につきましては、今後、このニュースなどを活用してお知らせしていきます。
(中国医科大学 魏 敏杰(ぎ びんけつ) 氏 受入) 当薬理学講座にとって、中国医科大学医学部薬理学講座の先生(いずれも女性)を受け入れるのは魏助教授が3人目となります。最初が趙乃才教授で、国際医学交流として1986年に3ヶ月滞在されました。二人目が李智助教授(現主任教授)、国際医学交流ではありませんでしたが、1989年から1年半滞在され、無事学位を取得して帰国されました。私事で申し訳ありませんが、李先生の学位取得のための実験に関与したこともあり、私は中国医科大学医学部薬理学講座に2週間、国際医学交流として滞在しました。その時、通訳や案内をしていただいたのが魏先生だったわけです。 そして、魏先生が3人目の訪問者となるのですが、実に、魏先生は日本へは3度目、その3回の中で、札幌へは2度目の訪問になります。1度目は1993年8月に北海道大学電子科学研究所の小山教授の所に2ヶ月間滞在されましたが、その時、宿泊は本大学の国際交流センターでした。2度目は1994年3月から1年間、慶応義塾大学薬理学講座の加藤教授の所に滞在され、血管平滑筋の細胞情報伝達系に関しての研究をされました。そこで、今回が3度目の日本(2度目の札幌)ということになり、11月29日から12月27日、当薬理学講座に滞在されましたが、すっかり札幌を気に入ったと言っておられました。しかし、今回の魏先生の滞在時には、札幌では珍しく11月半ばにすでに積雪があり、そのまま根雪となりました。冬、瀋陽は気温が−15℃まで下がるので札幌の寒さには全く応えないようでしたが、瀋陽ではほとんど雪が積もりません。ですから、延々と降りしきる雪にはビックリされた様子で、雪との付き合いの大変さを体験されたのが印象的でした。 魏先生は長年、種々の平滑筋でのムスカリン受容体のサブタイプとそれらの受容体刺激による細胞内情報伝達系の解明に携わって来られました。慶応大学滞在中には降圧作用を有する漢方薬処方の効果を大動脈平滑筋を用いて研究しました。その成果を名古屋で開催された第68回日本薬理学会総会で発表されましたが、私共も生薬の有効成分の細胞内情報伝達系に対する効果を同学会で発表したので、魏先生と学会場での再会を喜び、そして、お互いに情報交換したのを鮮明に覚えております。その後、帰国してからは、魏先生は大動脈平滑筋細胞を培養し、それを用いて静脈内麻酔薬プロポフォールの効果を細胞内情報伝達系の視点からアプローチされました。彼女はその成果を国際交流セミナーのテーマとして発表されました。 今回の滞在中には、神経精神科との共同実験の一部として血小板の細胞内 Ca2+ 濃度を測定していただきました。血小板ではその機能の亢進には細胞内 Ca2+ 濃度の上昇が関与し、サイクリックAMPの上昇が逆に機能抑制を起こしますが、両者の相互作用を含め、詳細については良くわかっておりませんので、彼女にも検討を試みていただいたわけです。魏先生は何回か外来で自ら採血してもらい、自分の血小板を用いて実験しましたが、ある時、採血がうまくいかず、失敗した注射針による内出血で真っ青になった腕をしながらも精力的に実験をしていたことも印象的でした。この血小板の実験は、彼女も興味を示し、帰国してからも中国医科大学で実験を継続したいと言ってましたが、彼女が掛け橋となって札幌医科大学と中国医科大学の共同実験に発展することを期待しています。このようなことこそが有意義な国際交流活動であろうと思います。 最後に、魏先生を含め、中国の先生方に共通して驚かされることは非常に実験、研究熱心だということです。2ヶ月という短い期間の中で出来るだけ実験してデータを生み出し、吸収できる所はとことん吸収していくという熱心さを私達は学ばなければいけないと痛感させられました。今後とも、国際交流を通じて両校がますます親密になるよう期待しております。
(カルガリー大学 ピーター・フォーサイス氏 受入) 平成11年3月22日から4月3日までの2週間、カルガリー大学神経内科副教授のPeter Forsyth氏を迎えた。Forsyth氏の専門は脳腫瘍、特にグリオーマの化学療法と新治療の開発である。グリオーマは日本では脳外科医が治療の主体を担っており、手術以外の化学療法、免疫療法、最近の遺伝子療法までも脳外科医の手によって行われていいる。これが臨床だけではなく、基礎研究の分野においてもグリオーマは脳外科医の研究分野となっている。Forsyth氏は外科医ではないが、外科切除後の患者を自分が主治医としてその後の全経過を見ていく神経腫瘍専門医であり、彼を中心に経過中の外科、放射線療法の適応が決定されていく。すなわち、グリオーマ治療に関してForsyth氏と我々日本の脳外科医との違いはメスを持つか持たないかの違いだけで、手術後の患者への係わり方、興味、関心、悩みはすべて共通する。おそらくそのような訳で、外科医ではないForsyth氏が我々脳神経外科の教室を訪れることになったのだと思う。 実はこの一年前の3月に私が国際交流でカルガリー大学を訪れた際、その間のホスト役を勤めてくれたのがこのForsyth氏なのである。留学の目的は主に基礎研究分野での交流であったので、脳腫瘍基礎研究グループのリーダーである彼が私を受け入れてくれたことにさほど違和感はなく、年も同い年、興味の中心はグリオーマで話題は共通、なぜか意見もよく合って意気投合し、非常にスムーズ、有意義な交流を持つことが出来た。カルガリーのシステムは非常によく整理されていて、患者数も多く、脳腫瘍を中心に診ていきたい医者ならばほとんど理想的と言っていいと思う。事実Forsyth氏がNew YorkのMemorial Sloan Kettering癌センターからカルガリーにpostを求めたのもその理由からだという。その彼が、一年後札幌を訪れることになったのだが、彼の訪問の目的は癌研究分野での幅広い人物交流とのことだった。事前に連絡はなし。突然彼を脳外科で受け入れることを知らされ、まさかの再会に喜んだ。 滞在の2週間は彼の研究内容に多少なりとも関連がありそうな人物、癌研究者に出来るだけ会って、話をして、交流してもらう、将来的な共同研究の可能性を探ってもらう、そんなメニューを組ませてもらった。実際彼と面談をしてもらったのは当教室員を除いては、第1内科伊東文生講師、第4内科山内尚文講師、照井健先生、整形外科和田卓郎講師、病理部池田健先生、第1病理鳥越俊彦講師、第2病理澤田典均助教授、癌研分子生物時野隆至教授、北大大学院薬学井ノ口仁一助教授であった。みなそれぞれに面談が有意義で良かったと言ってくれていたが、特に癌研の時野教授と第4内科の山内講師の研究に強い興味を示し、私にも是非共同研究すべきだと勧めてくれた。第2週目の水曜日には国際交流セミナーで「グリオーマの掛け橋的研究:酵素とウイルス」とのタイトルで講演を行ってもらった。昨年暮れにSCIENCEに載った、彼のグループの新しい治療の試みであるReovirustherapyの現時点での臨床応用の可能性など興味津々の話題であった。姉妹校である札幌医大を非常に気に入ってくれたのか、新ウイルス療法の実現に向けて今年の秋から研究者を派遣してほしいとの要請が来ており、カルガリーと札幌のさらなる交流が期待される。 派遣期間:平成11年3月8日〜3月15日 ケニア国感染症研究対策プロジェクトと小児科学教室 1 これまでの経緯と要請背景 ケニア国ナイロビにわが国の無償資金協力(1982〜83年度)により建設されたケニア中央医学研究所(Kenya Medical Research Institute, KEMRI)では、下痢症研究を中心とした中央医学研究所プロジェクト(第2期プロジェクト)が1985年5月から5年間実施され、引き続き各種感染症の総合的研究のため、感染症研究対策プロジェクト(第3期プロジェクト)が実施された。右プロジェクトでは、ウイルス肝炎、ウイルス性下痢症、細菌性下痢症、住血吸中症、フィラリア症の5分野における基礎研究の協力を1990年から1996年4月まで実施した。 ケニア国政府は第7次国家3カ年計画(1994〜1997)において、エイズ・人口問題を重点分野としている。エイズ対策として、その感染予防、研究開発、啓蒙教育を基本政策とし、中央医学研究所はその中心的研究期間として期待されている。かかる経緯からケニア政府はHIV/AIDS及び小児の死因の1/4から1/3を占める急性呼吸器疾患(ARI)を新たな研究分野とし、さらに肝炎対策の充実のため肝炎研究の継続を要請してきた。 これを受けてわが国は、本プロジェクト第2フェーズへの協力継続を検討するため、1996年3月に実施協議調査団(千葉団長)を派遣した。その結果、HIV/AIDS、ウイルス性肝炎の基礎研究を発展させ、技術移転を充実させるとともに小児のARIによる死亡率低下に資するべく検査技術及び臨床技術の向上を図る技術移転を実施することが妥当であると判断され、1996年5月から感染症研究対策プロジェクト・第2フェーズ(第4期プロジェクト)がスタートした。 2 本学ならびに小児科学教室とのかかわり 上述のKEMRI/JICAプロジェクトと当教室とのかかわりは、1980年初頭の第1期プロジェクトに当時の中尾亨教授(現名誉教授)が国内委員として加わった頃にさかのぼる。中尾教授停年退職後の第2期プロジェクトの途中から私が国内委員に加わってからでも12年以上になる。現在進行中の第4期プロジェクトでは国内委員長としてプロジェクト全体の日本側での責任を担っている。この間に本学からチームリーダーとして赴任された中尾名誉教授をはじめとして当教室から十余名が長期あるいは短期専門家として派遣されてきた。当教室以外でも衛生学教室とがん研分子生物学部門からの派遣も依頼してきた。 またこの間にケニアからの研修者約10名の受け入れも行ってきた。受け入れについては、本学の衛生学教室、がん研分子生物部門、内科学各講座、機器診断部等のご協力を得ることができた。 3 主な成果 ケニア側に対する技術移転のほかに、研究プロジェクトとして以下のような成果がある。 1)ウイルス性下痢症:ロタウイルスの血清型疫学と分子疫学、札幌ウイルスによる下痢症の 確認、細菌との重複感染の実態など。 2)細菌性下痢症:起炎菌の同定とフローラとの関係 3)寄生虫症:住血吸中症の罹病調査、汚染水域調査と予防対策 4)ウイルス性肝炎:B型肝炎の母子感染と水平感染の疫学、B型肝炎関連肝硬変、肝がんの発生頻度、B型肝炎診断キットの作成と普及。(C型肝炎の発生は極めて少ない) 5)呼吸器感染症:ペニシリン耐性肺炎球菌の増加、RSウイルスをはじめとする病原ウイルスの検索。 6)エイズ:ケニア西部のビクトリア湖畔における妊婦のHIVに感染調査(20〜40%が感染)とAZTによる母子感染の予防ならびに児のフォロー・アップ、HIV感染診断ならびにキットの作成、抗HIV活性を有する植物の検索。 機器診断部 訪問研究員 孫 心 平 氏 自己紹介をさせていただきます。 私は孫心平と申します。1964年中国河北省東部の小さい町で生まれました。1983年から1988年にかけて、河北医科大学医学部で勉強しました。大学を出た後、小さい病院に勤めました。専門は外科でした。1990年から1993年まで、研究生として、さらに河北医科大学で勉強しました。専門は超音波に変更しました。1993年以降、現在まで河北医科大学第四病院超音波室に勤めています。今まで、論文を約15篇書き、2回受賞しました。日本に来る前に助教授になりました。河北医科大学第四病院の別の名前は河北省腫瘤病院です。病院の中で、いろいろな腫瘤の患者さんがいます。特に、胃ガン、食管ガンの患者さんが一番多いです。超音波内視鏡は、胃ガンと食管ガンの深達度の診断にとても役に立ちますので、私は超音波内視鏡を勉強するために、札幌医科大学附属病院へ参りました。 日本について、一番深い印象は、科学技術が進んでいて、国民は勤勉なことです。国民はみんな努力して、短い時間で経済大国になりました。そして、礼儀正しく、親切で暖かく感じることができます。日本できっといい勉強をすることができると思います。日本に来てよかったです。
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