図は「あなたの転びやすさ」を簡便にしることができます.ここで合計点数が6点以上の方は転倒の

リスクが高めの傾向にありますので,注意してください. 

 しかし,そもそも私たちが持っているバランス機能とはどういうものなのでしょうか? 

 

3.バランス機能とは

 

  バランス機能とは,いわゆる「姿勢を制御する」ということになります.我々が地球上で生活し,

自由な身体の活動を可能にするために必要なのは「重力に抗する」ことです.どんな動物や生き物でも

共通です.特に脊椎動物(背骨がある動物)において人間のように脳の進化に伴って,大脳皮質がどん

なに大きく発達しても,姿勢を維持する機能を担う“脳幹”から“脊髄”という脳の構造はほとんど変

わりません.これは,地球上に住むあらゆる動物が活動をするために必須な機能であることを意味しま

す.そして,姿勢を制御するためには,

「定位」と「安定性」という能力が求められます.

「定位」とは,

ある課題において身体(頭・手足・体幹など)の位置関係を保持し,周囲の環境と適切な関係を維持す

ることを指します.一方,

「安定性」とは,支持基底面(左右の足裏の面と,その間の領域を囲んだ範

囲)の中で自身の重量(体重)を制御しながら,姿勢を維持し平衡を乱す力に抵抗する能力を指します. 

 加えて,姿勢を制御するためには,様々な感

覚が必要となります. 例えば,

“視覚”

“前庭

感覚(平衡感覚)

“体性感覚(足裏からの荷

重情報)

”などの感覚情報が主に関係していま

す.これらの感覚情報によって自身の身体や周

囲の状況を的確に捉えることで,安定した姿勢  

       

図2:支持基底面の例 

      が維持されています. 

 しかし,我々がどんな姿勢(構え)をとっても,身体に外力(揺れや滑り,ぶつかるなど)が加わっ

ても,転倒せずに過ごすことが出来ています.それらを可能にする姿勢の反応には,姿勢を正しい位置

に戻そうとする「立ち直り反応」や足部や股関節を使ってある程度身体を維持し(綱渡りなどを想像し

てみて下さい.

,それでも耐えられなければ,足を一歩外側に踏み出すステッピング反応などがありま

す.そのような様々な姿勢の変化に対応できる能力の指標として,足関節の背屈角度(足先を上に挙げ

る)や手をできるだけ遠くに前方へ伸ばす(リーチ)の距離などがあり,これらは転倒の発生率と深く

関係しています. 

 更に,普段の日常生活で様々な環境に合わせて手や足を動かし,時には素早く動くためには,準備的

な姿勢制御が必要になります.これは予測的姿勢制御と言われ,目的とする課題を行う前に自動的に働

きます.この予測的姿勢制御が遅れる,あるいは準備されていない状態では身体は不安定となります.

最近では予測的姿勢制御と転倒との関連についての報告が増えてきています.