當瀬細胞生理学講座教授の新コラム「真健康論」第27回

當瀬細胞生理学講座教授の毎日新聞連載コラム真健康論:第27回「夏こそ麺類」なワケ(7月2日掲載)

當瀬細胞生理学講座教授

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真健康論:第27回 「夏こそ麺類」なワケ=當瀬規嗣

  暑くなると食欲が落ち、冷たくてあっさりした食べ物を選ぶようになります。盛りそば、ざるうどん、冷や麦、冷やし中華など、冷たいものと言えば麺類です。もともと冷やしてあるのだから、目にするだけで涼しく感じます。つるつるとしたのど越しも清涼感を誘う重要なポイントですね。「ずずっ」とすすると、麺の冷たさと空気の作用で暑さを忘れます。ただし、それだけで冷たい麺類が好まれているわけではありません。主に炭水化物を含む麺類は、他の食べ物に比べて体を温めない効果があるからです。

 人が腸から栄養を吸収する際、熱が生じます。これを特異動的作用と呼びます。3大栄養素である炭水化物、脂質、たんぱく質はすべて吸収の際に熱を生じます。その中で、最も多くの熱を生じるのがたんぱく質で、炭水化物、脂質の順で少なくなると言われています。つまり炭水化物の多い食べ物は、たんぱく質が多い食べ物より、体を温めないのです。それで、自然と麺類が選択されてきたのではないかと思われます。

 炭水化物が多くて水分も多い果物も体を冷やす食べ物として、昔から位置づけられています。体を冷やす効果のある食べ物は、他にもあります。それは辛い食べ物です。辛さが原因です。人には、辛さを強く感じると汗をかくという反射があります。食餌性発汗と呼ばれます。辛いものを我慢して食べると、びっしょりと汗をかくので、それによって体が冷やされる効果を生むのです。なので、赤道近くの暑い国々の料理は基本的に香辛料がたっぷり入っています。とすれば、冷やし中華にからしをたっぷりなんて、相当に効果がありそうです。

 一方、暑い夏を乗り切るには、体力も必要です。冷たいものばかり食べていては、肝心の体力が心配になります。やはりたんぱく質が豊富な食べ物も食べるべきでしょう。「暑い時には、スタミナがつくたんぱく質が豊富なものを食べて、それで、あえて体を温めてたくさん汗をかくのが良いのだ!」と信じている格闘家がいました。結構、参考になるかもしれません。とすれば、良質のたんぱく質で、炭水化物の代謝を助けるビタミンB類が豊富なウナギはおすすめです。が、昨今は高くて手が出しにくいですね……。(とうせ・のりつぐ=札幌医科大教授)=次回は16日に掲載

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