當瀬細胞生理学講座教授の新コラム「真健康論」第18回

當瀬細胞生理学講座教授の毎日新聞連載コラム「真健康論」18回:心配な若い女性のやせ=當瀬規嗣(2月19日毎日新聞掲載)

真健康論:第18回『心配な若い女性のやせ』=當瀬規嗣(札幌医科大学医学部細胞生理学講座教授)


 先日、厚生労働省から「平成22年国民健康・栄養調査結果の概要」が発表されました。「循環器疾患の状況」や「生活習慣と所得の関係」など興味深い結果が示されていました。

 そのなかで私が注目したのは、「肥満およびやせの状況」という調査です。肥満者の割合は前年と比べて変わらないというのが分析結果です。しかし、95年からの年次推移を見ると、男性肥満者は増加傾向、40~60歳代の女性肥満者は減少傾向が見て取れます。女性はダイエットに頑張っているのでしょうか。

 調査の分析でも指摘されているように、20歳代女性のやせの人の割合が、ここ2~3年で急激に増加しているのです。スタイルを気にするあまり、過度の食事制限に走ってしまっているのでしょうか。やせが体に良いとは思えません。心配なデータです。

 他の調査項目で、朝食の欠食率があります。男女とも20歳代の欠食率が他の年代に比べて高いのですが、年次推移では20歳代男性の欠食率はほぼ横ばいなのに、20歳代女性の欠食率は03年からほぼ一貫して上昇傾向なのです。やせの増加と朝食の欠食は関連がありそうです。朝食を食べなくても昼や夜にたくさん食べるとやせることにはならないはずですが、エネルギー摂取量のデータをみると、20歳代女性は前後の年代より摂取量が少なく、朝食の欠食が響いているように思えます。

 年代別の欠食率をながめると、14歳までの幼児・学童期の欠食率は5~6%にとどまるのに、15歳から19歳までの年代になると急激に増えることが見て取れます。小さい頃は、親が面倒を見てくれるので、ちゃんと朝食を取るのでしょう。15歳をすぎると、スタイルを気にしたり、面倒がったりして朝食を抜いてしまうようです。これが20歳代で自立した女性に欠食が多くなる遠因と思われます。高校生への健康教育の強化が必要だと考えています。

 前回の肥満と脂肪の関係のコラムでご指摘をいただきました。ご指摘にあったように、肥満の中心的な原因は糖分(あるいは炭水化物)の過剰摂取にあります。余分に食べたエネルギーが脂肪になることは書きましたが、脂肪のことのみを書いていたので、この点があいまいになっていました。改めて追加させていただきます。(とうせ・のりつぐ=札幌医科大教授)=次回は3月4日掲載



毎日新聞 2012年2月19日 東京朝刊

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