當瀬細胞生理学講座教授の新コラム「真健康論」第5回

當瀬細胞生理学講座教授の毎日新聞連載コラム「真健康論」第5回 水分とって「ごみ」を出す(8月14日毎日新聞掲載)

真健康論:第5回 水分とって「ごみ」を出す=當瀬規嗣(札幌医科大学医学部細胞生理学講座教授)

 おしっこが順調なのは健康な証拠と誰でも考えていると思います。1日におしっこが4~6回ぐらいあるのが一般的でしょうか。では、そもそもおしっこがどのような役割を持っているのか、お分かりでしょうか。

 おしっこの原料は血液です。腎臓は血液の中から水分を取り出して、それをおしっことします。目的は、血液の中に溶けている老廃物を、おしっこに混ぜて捨てるためです。

 私たちの体は60兆個もの細胞でできています。細胞は生きていくために代謝、つまり栄養素を分解してエネルギーに変えて消費します。その過程で、老廃物、いわゆるごみが出ます。

 細胞はごみを抱えていると、働きが弱ってしまったり、壊れてしまったりするので、血液に常にごみ出しをするのです。体中の細胞がごみを出すので、放っておけば血液はごみでいっぱいになります。そこで、血液中のごみを腎臓で取り出し、おしっことして捨てているのです。

 ですから、もしも、おしっこが全く出なくなると、体中ごみだらけになって、細胞は次々と壊れてしまい、人は1日程度しか生きられないとされています。なので、おしっこはドンドン出すべきですが、そのおしっこの量は、摂取する水分量に左右されます。水分量が少なければ、腎臓は体の水分不足を防ぐためにおしっこの量を減らします。

 でも、ごみはそんなことに関係なくドンドン出てくるので、外に出さなければなりません。そこで、腎臓はごみがたくさん溶けた「濃いおしっこ」を出します。暑いさなか、大汗をかいた後に出てくるおしっこは色が濃く、量は少ないものですが、これが濃いおしっこの正体です。一方、水分の摂取が多すぎると、今度は、血液が薄まるのを避けるため、腎臓は積極的に水分をおしっこに出します。ごみの量はあまり変わらないので、「うすいおしっこ」が大量に出てきます。

 最近、夜中にトイレに立ちたくなくて、水分を控えるお年寄りが多いと聞きました。おしっこが少なくても、すぐに害はないかもしれませんが、濃いおしっこを作るために腎臓に負担をかけています。やはり水分は多めにとり、たくさんおしっこを出す方が健康的だと思います。(とうせ・のりつぐ=札幌医科大教授)

毎日新聞 2011年8月14日 東京朝刊(毎日新聞社許諾)

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