當瀬細胞生理学講座教授の新コラム「真健康論」

當瀬細胞生理学講座教授の連載コラム「真健康論」:第3回「1日3食」の大切さ(7月17日毎日新聞掲載)

真健康論:第3回真健康論:第3回 「1日3食」の大切さ=當瀬規嗣(札幌医科大学医学部細胞生理学講座教授)

 健康と食に密接な関係があることは、誰でも知っています。食べなければ健康を損ない、最悪の場合は生命の危機に陥ります。でも、1食や2食抜いたとしても、大丈夫なことも明らかです。とすれば、なぜ大多数の人は1日3食、毎日食べているのでしょうか。

 たくさんの理由を挙げることができます。一つは、細胞のためです。細胞はその構造を維持するために相当なエネルギーを使っています。もしエネルギーの供給が途絶えてしまうと、細胞は構造が維持できずに崩壊、つまり死んでしまうのです。細胞がエネルギーを取り出す燃料が栄養素です。さらに細胞は壊れやすいので、作り直したり、修復したりする必要があります。そのための材料は栄養素そのものなので、常に補給されないといけないことになります。

 というわけで、私たちの体は栄養素を常に消費しています。ですから、栄養素の絶えざる補給が必要なのです。それなら必要な栄養を一気にとってしまえばよいのですが、それではうまくいきません。ビタミンやミネラルなどためられない栄養素があるからです。

 また単に栄養素の補給ができればいいのかというと、そんなに簡単な話ではないのです。

 少々厳しい話ですが、意識がなく寝たきりの患者さんに、栄養補給のために必要な栄養素をすべて加えた高カロリー栄養液を点滴で血管内に投与することがあります。理屈上、栄養素は充分なはずですが、こうした患者さんは徐々にやせていきます。血管でなく胃に直接穴を開けて食べ物を入れるようにしても、点滴よりはましですが、血色良くとはなりません。

 一方、おかゆだけでも、わずかずつ患者さんが口にできるようになると、段々元気になっていきます。医学的な詳しい因果関係は不明ですが、口から食べるという行為が、体の調子を維持するのに必要不可欠だということです。

 また、食べ物の消化吸収は胃や腸など消化器の働きですが、これを動かすには自律神経の作用が必要です。自律神経は体全体の調子を整える働きもあり、規則正しく食事をすることは、体を快適な状態に維持するのに必要だと考えられます。1日3度の食事が健康を維持する基本と心得てください。(とうせ・のりつぐ=札幌医科大教授)

毎日新聞 2011年7月17日 東京朝刊(毎日新聞社許諾)

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