新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下における炎症性腸疾患(IBD)患者さんへのお願い


はじめに

  現在,新型コロナウイルス感染症(COVID-19:コビット-19)が流行しています.このパンフレットをお読みになる炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の患者さんは,何らかの炎症を抑える薬または免疫を抑える薬を 使用中の方が多いと思います.そのため,今お持ちの腸の病気と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関連について不安に感じることや,実際に感染してしまったらどうしたらよいか疑問に思われる方も多くいらっしゃるでしょう.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は新規の感染症であり,まだ十分わかっていないことも多いですが,現在わかっている最新の情報を皆さんに公開いたします. このWEBサイトは厚生労働省「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班 COVID-19 IBD Taskforceが企画・運営しています. 今後,新しい情報がわかった場合は適宜更新されます.

お知らせ

 

2020.08.26
WEBページの公開を開始しました

公開開始しました

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発病・重症化リスクについて

 日本を含め世界中で複数の報告がありますが, 現時点では,炎症性腸疾患の患者さんと一般の方との間で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染または発症するリスクに差は「ありません」. 但し,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症した場合,炎症性腸疾患が落ち着いていない患者さん,ステロイド投与中の患者さん,ご高齢の患者さんでは,重症化率が高い傾向にあるため,注意が必要です.

そのため,炎症の落ち着いている患者さんは一般の方と同じ感染防護対策をお勧めします.つまり,

・手洗い(手洗いができない場合は手指の消毒)
・マスクの着用
・大声を出すのを避ける
・十分に換気する
・3密(密閉・密接・密集)を回避する
ことが重要です.

 ご高齢の方は,炎症性腸疾患の有無に関わらず新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が重症化しやすいため,より一層これらの感染防護に気を配る必要があります.また炎症性腸疾患が落ち着いていない患者さんは, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が重症化しやすいため,かかりつけの医師と相談のうえ,速やかに炎症性腸疾患を落ち着かせることが望ましいと考えられます.

外来通院の間隔と治療について

 まず炎症性腸疾患が落ち着いていることが,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対策としても重要と考えられます.そのため,炎症性腸疾患が落ち着いていない患者さんは,かかりつけ医で十分な治療を受けることが必要です.一方で,症状が落ち着いている方は,外出機会を減らすために通院間隔を延長することが可能なことがあります.かかりつけ医と十分にご相談ください.

通院や治療の自己中断は決してしないでください. その理由は,(1)炎症性腸疾患の症状悪化,(2)症状悪化に伴う新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染のリスクが高くなるからです.

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の陽性患者さんと濃厚接触した場合

現在,日本では検査で陽性が確定した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者さんと一定の接触があった方を濃厚接触者と保健所が判定する仕組みです.濃厚接触者と判定された方は保健所からの指示で,全員PCR検査が実施されます.しかしPCR検査で陰性であっても,絶対に感染していないという証明ではなく,最終接触日から最低14 日間は健康状態に注意を払うことが求められており,検査後も保健所から定期的な調査・連絡が実施されます.したがってPCR検査が陰性であっても,感染の可能性は残ることから,炎症性腸疾患の治療を調整することがあります.

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)陽性の患者さんと濃厚接触し保健所のPCR検査を受けた場合,
検査結果に関わらず,炎症性腸疾患のかかりつけ医に連絡をし,指示に従ってください.
治療やお薬の自己中断は絶対にしないでください.

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患してしまった場合
(無症状での感染を含む)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患してしまった場合,地域や流行状況によって異なりますが,入院または軽症者用のホテルに収容されることが予想されます. この場合は,入院病院の主治医またはホテルの担当医が皆さんの体調を管理しますので,炎症性腸疾患の治療もその担当医師とご相談ください.
 問題となるのは入院前またはホテルに収容前等の理由で,自宅で療養する場合です.

自宅での療養中は症状の状態に関わらず,炎症性腸疾患のかかりつけ医に連絡し,指示をもらってください.
炎症性腸疾患の悪化をもたらす可能性があるため,治療やお薬の自己中断は絶対にしないでください.