市民公開講座Q&A

体外受精関連Q&A(13題) [旭川医大 千石一雄医師回答]

  • 体外受精の施行回数が増えるごとに妊娠率が減少する原因は?

    一般に3~4回で妊娠する方が多いと言えます。従って、それまでに妊娠にいたらない方は、難治性不妊といわれ、なかなか治療困難な卵子、精子または子宮側に問題がある可能性があるため、その後の妊娠率も低くなります。

  • AIHや胚盤胞移植で数回良好胚を移植しても着床しない場合リンパ球の免疫療法で着床率は上昇しますか?

    着床がうまくいかない理由は良く分かっていません。また、なんらかの免疫異常をもっている方は別として、リンパ球の免疫療法により着床率が向上する可能性は少ないと思います。

  • 卵管障害だと胚盤胞になった受精卵でなければ妊娠しないのですか?

    卵管障害例には通常の体外受精で十分だと思います。胚盤胞移植は必ずしも必要ありません。

  • ヒトの手が加わると流産しやすくなると聞きますが、人工授精と体外受精の流産率の差は?

    体外受精の流産率は20%程度あり、確かに多少高率に起こる印象がありますが、人工授精の流産率と大きな差はないとされています。また、自然妊娠でも15%近くに流産が起こるとされています。体外受精では胚移植2週間後に尿中の妊娠ホルモンを測定するなど、厳重に管理することが多いこと、また、体外受精を受ける患者さんは、一般に高齢であることなどが流産が高い印象を受ける理由と考えられていますが、ヒトの手が加わると流産しやすいと言ったことはあまり考えなくて良いと思います。

  • 体外受精で胚を2個、3個移植した場合赤ちゃんに障害が出たりしませんか?

    胚を2~3個移植したために赤ちゃんに障害が多くなることはありません。ただ、多胎妊娠とくに3つ子以上になりますと、早産が多くなり、従って、未熟児出産が多くなる可能性があります。

  • 妊娠率は卵の質に依存すると聞きますが、採卵の時に良好の卵を選択することが可能ですか?

    卵の質が良好である場合、妊娠する可能性が高くなることは事実です。しかし、残念ながら顕微鏡で観察するだけで卵の質が良いかどうかを正確に判断することはできません。

  • 年齢が進むと(40歳以上)妊娠率が下がると聞きますが、子宮その他にも問題がおきますか?

    40歳以上で妊娠率が低い理由としては、卵の質の低下が主な原因と考えられています。子宮側が問題になることは少ないと思います。

  • 体外受精の施行回数が増えると何か問題がおきますか?

    施行回数が増えても問題が起きる可能性は少ないと思います。ただ、回数が増えるにつれて、成功率も低下することが考えられます。

  • 顕微授精でも、元気な赤ちゃんが生まれますか?

    現在のところ、特殊な場合を除き、顕微授精により出産した赤ちゃんに異常が多く認められるとする報告はありませんので心配ありません。ただし、無精子症の場合は精子を作る遺伝子に異常をもっている例もあり、この場合、男の子ができた時には伝搬する可能性があります。

  • 卵子の若返り法で、第3者のミトコンドリアが入る問題があると聞きました。台湾で本人のミトコンドリアを入れる事に成功したと聞きました。老化した卵を若返らせる事で何歳まで妊娠する事が可能ですか?

    理論的には卵子の若返りにより、卵子を採取可能であれば何歳でも妊娠可能です。ただ卵細胞質移植、核移植などの卵子の若返り法は安全性が十分確立されていないため、日本では許可されていません。

  • 無精子症の治療法を教えて下さい。

    無精子症の場合、精巣内に成熟した精子を発見できればTESE-ICSIにより妊娠が可能です。外国では、もっと未熟な精子(円形精子細胞)による妊娠例があります。しかし、日本では安全性が確立されていないため、成熟した精子以外は許可されていませんので、精巣内に精子が見つからない場合は治療法がないのが現状です。今後、提供精子を用いた体外受精などが許可される可能性があります。

  • 自然妊娠を2回し、いずれも初期流産しました。人工授精をくり返しましたが、妊娠せず、体外受精をすることになっています。何か気をつけることがありますか?

    反復流産(連続した2回の流産)例では、母体側に流産する原因となるものがないのかどうか一度検査することも選択肢の一つだと思います。

  • 採卵後直後より卵巣腫大があり、縮小しません。今後の治療法がありますか?(チョコレート嚢胞、子宮腺筋症があり前回帝王切開をしてます)

    採卵後の卵巣腫大には時間が立つと自然に縮小する例が多いのですが、縮小しない場合はチョコレート嚢腫の再発、卵巣嚢腫を考慮しなければなりません。この場合には、なんらかの手術(内視鏡による嚢腫核出術、エタノール固定など)が必要になる可能性が高いといえます。