本日ここに、平成18年度札幌医科大学卒業式並びに大学院修了式を挙行するに
あたり、大学を代表して、式辞を申し上げます。
本日の卒業式には、北海道副知事 山本邦彦 様、北海道議会副議長 西本美嗣 様、
北海道大学医学研究科長・医学部長 本間研一 様、札幌医科大学医学部同窓会長
鈴木英軍 様、札幌医科大学保健医療学部同窓会副会長 木下浩也 様をはじめ、
ご来賓の皆様には、ご多忙のところご臨席を賜り、厚く御礼を申し上げます。
本日、札幌医科大学が送り出す卒業生は、医学部54期生103名、保健医療学部
11期生、看護学科56名、理学療法学科23名、作業療法学科23名の計102名
であります。また、大学院医学研究科博士課程修了者は28名、大学院保健医療学研
究科の博士課程前期修了者は計11名、博士課程後期修了者は4名であります。
卒業生並びに大学院修了生の諸君。ご卒業まことにおめでとうございます。本日め
でたく学士の学位を得られました諸君、また優れた研究成果を上げて大学院の課程を
修了し、修士あるいは博士(はくし)の学位を得られました諸君に、大学を挙げて心から
お祝いを申し上げます。
卒業式、修了式は大きなひと区切りであると同時に出発の時であります。諸君は、
まず、長い間、深い愛情をもって諸君を育て、暖かく支援してこられたご両親、ご家
族をはじめ、先生、先輩、友人など多くの人々に心からの感謝を捧げて下さい。諸君
の今日があるのは、これらの人々のお陰であると感謝し、諸君の新しい人生に向かって
歩みだしていただきたいと思うのであります。本日の出発の日に、私の期待と願いを
込めて、諸君に幾つかのことを申し上げ、卒業のはなむけにしたいと思います。
札幌医科大学は、北海道立の大学として、1950年に創設されました。本学の基
礎を築かれた初代学長の大野精七先生は、アメリカ医学を積極的に取り入れた、当時
としては、極めて新しい医科大学を作りあげたのであります。
全国に先駆けて、外科を専門別に設立し、麻酔科を創設するなど最先端の医療を行
う大学を北海道に作ることを目指したのであります。また、二代目学長の中川諭先生
は、病人の居るところへはどこへでも行き、どのような遠隔地で、設備のないところ
へ行っても、聴診器1本と自身の眼と手で診断できる知識と技術を磨けと、学生を教
育されました。
当時の大学には、「新しい大学を作る」という熱い息吹が、大学全体にあったとい
われております。このようにして、大学の創生期に、「進取の精神と自由闊達な気風」
ならびに「医学・医療の攻究と地域医療への貢献」という札幌医科大学の建学の精神
が培われていったのであります。
その後、この建学の精神を指針として、札幌医科大学は北海道における最先端の医
学と医療を担い、地域医療に貢献する優秀な人材を多数送り出してまいりました。
そして、現在、医学部、保健医療学部、衛生短期大学部の全卒業生の大半は、北海道
各地に根をおろし、最新の医学・保健医療学の知識、技術に基づいて、第一線で活躍
しています。その数は、これまでに約6500名であります。
このような諸君の先輩の地域最前線における活躍によって、札幌医科大学は道民の
皆様の信頼を得るにいたっているのです。それだけに、卒業生諸君へ寄せる道民の皆
様の期待は非常に大きいのであります。この大学を選んで、医学あるいは保健医療学
を学んだ諸君は、卒業にあたって、改めてこの建学の精神を心に深く刻み、新しい門
出についていただきたいと思うのであります。
この数年、日本の大学は大きな改革の潮流のただ中にあります。その契機は、我が
国が科学創造立国と高度福祉社会を目指す成熟安定社会への道を歩み出したことによ
ります。
我が国が世界と協調し、国際社会でリーダーシップの役割を果たし、また我が国の
経済再生をさらに活性化するためにも、大学が生まれ変わる必要があります。
札幌医科大学もその例外ではなく、この数年改革が進められて参りました。まず旧
来の医局を廃止し、医師派遣の窓口一元化を図りました。これにより地域への医師派
遣が透明化され、より合理的な形で実施されております。
また、本学独自の改革として臨床系の大学院生に、全国に先駆けて「診療医」とし
ての身分と経済的保証が与えられることになりました。さらに教育改革の一貫として、
文科省の補助事業であります現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)に応
募し、競争的環境の中でいくつかの新しいプログラムが採択されました。
ひとつは「地域密着型チーム医療実習」という名称の、医学部・保健医療学部の学
生による合同チームでの地域における早期体験実習であり、2年連続で、根室ならび
に釧路地区で実施されました。先日参加学生による報告会が成功裏に開催され、今後
も継続する予定であります。
このプログラムのユニークな点のひとつは、将来医療を担う学生が、「互いに地域
の中で協力することがよりよい医療のためにいかに重要か」を学ぶことであります。
ここでは医師、看護師、理学療法士、作業療法士が互いの職業を理解し、尊重する
よい機会になるものと思います。私も現地に参りましたが、本学の学生の目が生き生
きとしていた点が強く印象に残っております。
その後もこの教育改革プログラムとして、本学では4課題が新たに採択されており
ます。いずれも全国的競争の中での10〜20%の採択率ですが、このようなプログ
ラムに積極的に参加することが、大学の教育改革に連動するものと思っております。
このような改革の流れを十分にご理解いただき、高橋知事は、この4月より、本学
の公立大学法人化を決定いたしました。すでに道議会において定款ならびに中期目標
が承認されておりますが、今後は法人化に伴うメリットを最大限活用し、新しい「北
海道公立大学法人札幌医科大学」として、道民の皆様、学生、大学院生にさらに喜ん
で頂ける「最高レベルの医科大学」を目指して、教職員の総力を結集して参りたいと
思っております。
このような新しく生まれかわりつつある大学で今年の卒業生は努力を惜しむことな
くそれぞれの才能を伸ばし最終試験に合格し、本日の卒業を迎えたわけであります。
今後はそれぞれの道を選択し、人間性豊かな医療人としてさらなる研さんに努めてい
ただきたいと願っております。
本日、大学院の課程を修了する諸君は、学位を得て、研究者として、また高度医療
専門職業人として、自立されます。諸君は、大学院の研究の課程で、独創性を心がけ、
未知の世界に敢然と挑む開拓者精神を学び、身につけたと思います。諸君が、大学院
で学んだ成果を医学ならびに保健医療学研究の更なる進歩のために、また地域におけ
る医療や保健活動の場に生かして、活躍することを願っております。
最先端の研究に関しましては、幸いこの数年に札幌医科大学から極めてすぐれた研
究が、世界の超一流とされる科学誌に掲載されるようになりました。そればかりでは
なく多くの方がその研究成果を社会へ還元することを考えており、事実、再生医療や
癌ワクチンの分野に、新しい治療として期待出来る先端的研究が本学から生まれてい
ます。諸君は、先輩をさらに乗り越えるようなノーベル賞級の成果を挙げてほしいと
思います。そしてそれらの成果が病める皆様にあまねく還元されることを願っており
ます。
卒業生ならびに修了生の諸君。この母校で学んだことを心のよすがとして、北海道
のみならず、広く世界の医学、医療、保健そして福祉の向上のために、大いに活躍し
ていただきたいと願っております。
終わりに、卒業生並びに大学院修了生の諸君の輝かしい前途を祝し、今後のさらな
る飛躍を心から祈りまして、式辞とします。
平成19年3月16日