性分化の分子メカニズム


諸橋憲一郎
岡崎国立共同研究機構
基礎生物学研究所、細胞分化研究部門、教授


 動物個体の遺伝的「性」は受精時に決定されるが,その遺伝情報が個体全体の「性」
を支配するまでには,生殖腺(精巣と卵巣)の形成が不可欠である。すなわち,生殖
腺は性ステロイドホルモンを産生することで,既に胎児期より個体の「性」を支配す
るのである。従って,個体としての「性」を考える上で,生殖腺の「性決定」は極め
て重要なステップであるといえる。近年,生殖腺の分化,及び性分化の分子メカニズ
ムが明らかにされつつあるが,本セミナーではこの過程に関与する転写因子や細胞増
殖因子の機能を中心に議論したい。