札幌医科大学 第一内科学講座
札幌医大第一内科の研究室は,札幌医大教育研究棟の4階にある.札幌医大は札幌市の中心部付近にあり,また,4階であることも手伝って,研究室からの眺望はかなり殺伐としたものとなっている.しかも,大学院や研究生の多くは夕方から研究をスタートするので眺望にはいささかの期待もできないのが現状である.しかしながら,夕方から深夜,ときには明け方まで明るい雰囲気で研究が続けられている.平成6年に今井浩三教授が当科の第3代教授に就任,これまで以上の質の高い研究を目指すと共に,臨床医学講座での研究は疾患の診断および治療への応用が展望できる研究を行うようにとのモットーのもと全体の研究が進められている.スタッフとしては,まず,日野田裕治助教授が,癌に関連するムチン遺伝子の研究を行っている.これには,新規ムチン遺伝子のクローニング,ムチン分子を標的とした遺伝子治療法の開発,上皮性ムチンの腫瘍進展に及ぼす影響の検討などがなされている.
安達正晃講師のもとでは,主として免疫を担当する細胞のシグナル伝達機構とアポトーシスについての研究がおこなわれている.当科で遺伝子クローニングしたSHP-2, LC-PTPというチロシン脱リン酸化酵素およびbcl-2, BAG-1などアポトーシスを抑制する分子をターゲットにした研究を展開している.さらに,細胞の分化と癌化の機序に関連して癌抑制遺伝子であるWT遺伝子の研究を行っている.
また,伊東文生講師が癌細胞の浸潤・転移のメカニズムの検討,さらにはその治療応用の研究を行っている.浸潤に関連する酵素マトリライシン,細胞接着調節因子などについての検討がなされている.また,癌抑制遺伝子を用いた遺伝子診断,血清中超微量抗原の検出を可能にする新手法の開発,近年注目されている陥凹性の早期大腸癌の遺伝子研究なども行われている.
高橋徹助手は,ヒト腫瘍に対するムチン分子反応性CTLの誘導に成果をあげている.また,高橋裕樹助手などにより細胞接着分子I-CAM-1と自己免疫疾患,アポトーシスを誘導するモノクローナル抗体を用いた新しい免疫学的治療の研究が進められている.
これらのスタッフの指導のもと,現在,名の大学院生と約20名の研究生がなかなか出ないデータとの格闘を繰り広げている.また,現在10名程が国内外の研究室に留学中であり,共同研究をはじめとする交流が活発に行われている.