Entered: [2000.04.16] Updated: [2000.12.13] E-会報 No. 49(2000年 12月)


研究室紹介

北海道大学大学院地球環境科学研究科生態環境科学専攻生態遺伝学講座

吉田磨仁



 今年の4月に新しい研究棟が竣工し、これまで遺伝子実験施設で研究されていた高木信夫教授が学生と共に引越してきました。また、名古屋大学遺伝子実験セン ターへ転任された小保方潤一先生の後任として、東京大学大学院総合文化研究科から大原雅助教授が着任されました。これで、木村正人教授、鈴木仁助教授、吉田磨仁助手そして学生諸君、合せて36名もの大所帯が名実共にひとつの講座としてスタートすることになりました。大勢の個性豊な人達が互いに刺激しあって良い成果が得られることを期待しています。それでは、そんな個性豊な研究の様子を紹介いたしましょう。

木村正人教授グループ
 生物の種が分れていく過程(種分化)では、遺伝的な差異によって生殖隔離が生じます。この生殖隔離がどのように成立していくのについて、亜熱帯産のカザリショウジョウバエ(Drosophila elegans)を用いて、遺伝的、生化学的に解析しています。
 温帯や寒帯に生息する昆虫にとって冬を越すために様々なかたちで低温に対して適応しています。この気候適応の問題について、温帯から寒帯にかけて生息する数種のショウジョウバエを用いて、それらの耐寒性を生理学的、生化学的に調べています。さらに、低温に晒されることによって発現が上昇する遺伝子を発見、耐寒性との関係を明かにしようと試みています。
 植物の昆虫に対する食べられやすさには、遺伝的多様性があることが知られています。この遺伝的多様性は植物の進化にとっても、昆虫の進化にとっても重要な役割を果たしていると考えられます。そこで、植物と昆虫の相互関係に遺伝的多様性がどのように働いているかを知るために、石狩浜で繁殖しているカシワとその葉を利用する昆虫群の動態を、生態学的、遺伝学的に調査しています。

高木信夫教授グループ
 哺乳類では、雌が持つ2本のX染色体のうち1本を不活性化することによって、雌雄間の遺伝子量の差を補正しています。マウスの雌胚では、将来胎仔を形成する胚体組織においては、両親由来のX染色体のうちどちらが不活性化するかはランダムに決まるのに対し、胚体外組織においては、父親由来のX染色体が選択的に不活性化されるゲノムインプリンティング現象が知られています。哺乳類の初期発生における、このような遺伝機構のメカニズムを解明することを目的として、主にマウスを材料に研究を行っています。様々な染色体異常を持つ系統を用いた胚の組織学的、分子生物学的解析や、lacZ遺伝子をX染色体に導入したトランスジェニックマウスを使ったX染色体不活性化の組織学的モニタリング、さらに四倍体胚、単為発生胚、雄核発生胚を用いた解析など、種々の技術を駆使し多面的に問題に取り組んでいます。

大原 雅助教授グループ
 陸上植物の約9割、23万5000種を占めるといわれる被子植物の最大の特徴は、その花の多様性と、それに伴なう繁殖様式の多様性にあります。様々な野外植物、主にオオバナノエンレイソウやスズランを用い、野外生態調査や遺伝学的解析を通じて、被子植物の多様性の進化について研究しています。また、近年開発などにより多くの植物集団が分断され、絶滅が危惧されています。そのような植物個体群の時間的、空間的動態や遺伝的分化を調査、解析することによって、植物の保全に役立てようという試みも行っています。

鈴木 仁助教授グループ
 日本列島には約100種ほどの陸生哺乳類が生息し、小型哺乳類を中心に日本固有種が多く存在します。これは第四紀の環境変動の影響を受けた結果と考えられていますが、その起源については不明な点が多く残されています。これら哺乳類相がどのようにして形成されてきたのかを明かにするために、主に小型哺乳類を材料に、ミトコンドリアDNA遺伝子などの塩基配列を基に、分子系統学的解析を進めています。さらに、ロシアや朝鮮半島などの日本周辺に生息する近縁種との比較も加え、日本を含めたアジアの哺乳類相形成の歴史的背景を明かにしたいと考えています。

吉田磨仁助手
 昆虫には、その翅に種に固有の模様を持つものが多くいます。ところが、テントウムシのある種では、同種内でありながら様々な斑点模様(翅鞘斑紋)を示すものがいます。この斑紋を支配する遺伝子は30以上あることがこれまでに知られており、しかも、これらの遺伝子は極めて近接した遺伝子座の複対立遺伝子であると考えられています。そこで、この斑紋形成のメカニズムを分子レベルで解明し、昆虫の斑紋形成機構の進化について明らかにしたいと考え、斑紋形成遺伝子の分離同定を試みています。

 以上、バラエティーに富んだ研究内容でしたが、これらが有機的に結びつき、さらなる発展につながればと思います。もし、お暇がございましたら、稚拙ではありますが私たちのWebページをご覧いただければ幸いです(http://noah.ees.hokudai.ac.jp/e_and_g/)。


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