カブトガニ生体防御レクチンの異物認識機構
                    川畑俊一郎(九州大学大学院理学研究科)
      
無脊椎動物では、獲得免疫が欠除しているため、自然免疫が感染防御の主役である。自然免疫においては、感染微生物表面の特有の分子パターン、すなわち、リポ多糖(LPS)、ペプチドグリカン、リポテイコ酸、β-グルカン等がパターン認識蛋白質の標的物質である。カブトガニ体液中の顆粒細胞内には大、小2種の顆粒があって、体液凝固因子、レクチン、抗菌物質などの生体防御因子が貯蔵されている。この細胞は、LPSに鋭敏に反応して生体防御因子を分泌し、瞬時に体液凝固反応を引き起こすとともに、侵入した微生物はレクチン(タキレクチン)により凝集される。本研究の目的は、パターン認識蛋白質の構造と機能の解明により、パターン認識の分子基盤へ迫ることにある。これまでに、異なったリガンド特異性を示すタキレクチンを顆粒細胞から4種、血漿から2種、精製した。例えば、タキレクチン-2は、生物に普遍的にみられるGlcNAcを認識し、タキレクチン-5は、さらに構造的に単純なアセチル基を標的としている。なぜ自己にも存在する物質を標的にして非自己を認識でぁw@wLるのだろうか。タキレクチン-2の立体構造から考察すると、糖結合の多価性と近接した結合部位の距離が重要な要素であるらしい。本講演では、タキレクチン-2の構造と機能を中心に討論を進めるが、最新のタキレクチン-5に関する研究成果についても言及する予定である。