Books 1995

データベースソフトを用いた業務管理プログラムの開発と運用

Development and operation of a management program using the data base software in our department of radiology

北海道社会保険中央病院　放射線部

秋元　聰、中島　詳、村上茂樹

石ケ森　修、江本　貴、萩原康司

SUMMARY

We developed a management program using the data base software(dBASE Ⅲ PLUS)inour department of radiology. A lot of the information on the ordering charts from doctors was transformed into our original code numbers.This program made it much easier to evaluate daily working than by doing it ourselves. We think that ,by using, "LAN", other departments' management programs could also be made more effective.

Key words:
management program,
data base software,
code-number

１．はじめに

　病院情報システムの第一段階として、レセプト請求業務を中心とする医事会計システムは現在広く普及している1)。しかし、第二段階としての各部門のシステム化とそれらと結合するオーダリングシステムについては、大学病院や新築する病院で導入されつつあるが、システムの構築や維持に膨大なコストがかかる為、既存の施設ではなかなか普及しないのが現状である。
　当院においても第一段階にとどまっており、日常の業務管理は各部門で行っている状態である。当院放射線部の一般撮影部門でも、毎日のフィルム使用枚数や科別の撮影件数等の集計は、業務終了後に照射録を１枚１枚、処理をしていた。しかもそのほとんどは、手計算に負うところが大きく、非能率的であった。
　今回、既設のパソコンにハードディスクを接続することができたのを機会に、業務管理の省力化を目的として、データベースソフトを用いて2)3)、名前シール印刷機能も含めた業務管理プログラムの作成4)5)6)を試みた。
　データファイルに変更を加えれば、他の施設での応用も可能であると思われる。

２．使用機器

ＯＳ　　　　　：MICROSOFT MS-DOS　3.3D

パソコン　　　：NEC PC9801LX21

ハードディスク：NEC 40MB

増設メモリ　　：MELCO 6MB

プリンター　　：EPSON VP950

プログラム言語：BORLAND dBASEⅢPLUS

３．方法

　プログラミングを始める前に、まず開発言語およびソフトの選択を行った。その選定条件は、我々の欲する情報は全て数値で表されること、それら互いの数値にはある関連性をもっていること、情報の入力時は同種の作業が何度も繰り返されること、またこれらの情報の保存性と処理速度および能力が重要であることなど多岐にわたったが、このほとんどの要求を満たし、さらに開発言語の基本ともいえる”ＢＡＳＩＣ言語”程度の知識でプログラム可能なツールとして、データベースソフト”ｄＢＡＳＥⅢPLUS＊２”を選択した。なお現在市販では”ｄＢＡＳＥⅣ＊３”や”ｄＢＡＳＥⅤ＊４”という上位後継ソフトが存在しているが、我々の使用するパソコン、およびその周辺ハードの処理能力も加味した上で前述の決定となった。
　プログラミングに際しては、以下の事を目標とした。

データ入力時は、打鍵数をできるだけ少なくし独自のコード入力を採用するなど、患者氏名以外は数値入力だけとすること
業務終了時には、全てのデータは自動的に集計され、かつ整理されて保存されていること
データ処理速度は、インデックスファイルやＲＡＭを用いるなど可能な限り早くすること
得られる出力結果は、整理された見やすいものとすること
わかりやすいプログラムであること

　以上の点を踏まえてプログラミングを行った。
　Fig.1は、プログラム起動時のメインメニューである。シール印刷機能の他に、一般撮影と造影検査の使用フィルム枚数や科別の件数等の項目に関する、月別集計、年度集計の機能も作成した。

４．結　果

1．ファイルの構成 Fig.2は使用ファイルの概要である。 『IDファイル』（ID.DBF)は、患者氏名のファイルであり（Fig.3）、IDナンバーでインデックスソートされている。一度新規登録されると二度目からはIDナンバーの入力で氏名が瞬時に検索される。 『BUIファイル』(BUI.DBF)は、Fig.3のような構造を持ったファイルでコード入力によって集計用データが読みこまれる。 このコードは、業務内容に基づいて作成したコードであって、一般撮影用のものである。 コード作成にあたり、煩雑な業務の中で入力する事を考え、１つのコードで印刷枚数、フィルム枚数、点数、撮影部位等の情報を入力できるようにした。コードの数字の配列に関しては、４桁の数字を用いて最初の２桁は部位別の固有番号とし、次の１桁は撮影方向（枚数）、末尾の１桁でフィルムの種類を表すこととした。（Fig.4）　入力が終了すると、シールが必要枚数印刷され、一人分のデータとして、『XRAYTMPファイル』(X_RAYTMP.DBF)に登録される。ここまでの作業は、ラムディスク上のファイルで行っているため、常に追加されていく[ID.DBF]は、業務終了時にハードディスクにコピーされる。また、[XRAYTMP.DBF]は、停電時やパソコン暴走時の事を考慮して、20人ごとにハードディスクの『XRAYファイル』(X_RAY.DBF)に追加され一日分の集計に利用される。Fig.5は　[X_RAY.DBF]のファイル構造である。（内科外来、胸部正面、大角１枚の場合はその該当フィールドにデータが登録される。）
2．印刷業務 Fig.6は、シール印刷業務のフローチャートである。以下に簡単にまとめる。 IDナンバーを入力すると、前述のとおり『IDファイル』から名前を検索し、印刷用のデータとする。見つからない場合は、新たに入力し『IDファイル』に登録される。 科別コードを入力する。（内科外来、内科入院等） 撮影部位に応じたコードを『BUIファイル』から選択して入力する。複数の部位コードが必要な時は５回まで繰り返し入力可能。 必要枚数のシールが印刷され、1)の処理にもどる。
3．集計業務 １日分の集計は、メニュー終了時に行われる。ラムディスクから追加された[X_RAY.DBF]を用いて各項目を合計し、月別ファイル（たとえば４月の場合は、X_RAY04.DBF）の該当レコード（日付とレコード№が対応している）に書き込まれる。一度集計に利用された[X_RAY.DBF]内のデータは削除マークがつけられ、通常は次回に集計されることはない。 １ヶ月分の集計は、メインメニューから選択する。集計する月を指定すると、その月別ファイルが集計され、年度ファイル（平成６年度の場合：X_RAYH6.DBF)の月に対応したレコードに書き込まれる。さらに１年分の合計が最終レコードに登録される。
4．出力結果 Fig.7は、集計表出力のメニューである。 どの集計表を出力するかを選択することができる。又、画面にのみ出力するのか、プリンターにも印刷するのかも選択可能である。 以下に、一般撮影における集計表の一例をしめす。(Table.1) フィルム枚数の集計表は、フィルムサイズ別に分類し、月別に集計される。 科別の集計表は、外来と入院に区別され、各月の上段は件数、下段は点数である 。　撮影部位別の集計表は、単純撮影と断層撮影に分けられ、それぞれについて項目別に集計される。各月の上段は撮影件数、下段は撮影枚数である。

５．考　察

　本システムの導入により、１日の業務の終了時にその日の集計業務も終わらせることができるようになり、省力化につながった。さらに、そのデータを用いて、使用フィルム枚数、科別件数・点数、部位別件数・フィルム枚数についての月別集計、年度集計をすることができるようになった。
　情報の入力方法をコード入力に決定する前には、１つ１つのデータを対話式に入力する方式も考えた。しかしこの方式では、例えば救急撮影時などの通常ルーチンで使用していないフィルムサイズの入力には、簡単に対応できるという利点はあるが、業務が忙しい時の入力は、時間がかかることが予想された。それ故、数桁の数値ですべてを入力できるコード化を採用した。
　部位コードの入力方法は、その数がかなり多くなるため、全てのコードを覚えきることはできず、選択に時間がかかり、業務の流れに支障をきたすことも当初予想された。だが前述のコードの規則性により解決され、実際に使ってみると問題はなさそうで、初心者でも短期間のうちにコード入力をマスターすることができる。
　使用したパソコンに関しても、すでに設置されている施設においてはそのまま（あるいは若干の設備投資で）利用することができ、通常のデータ入力に関しては専門的な知識がなくても誰でも使用可能である。コードファイルの内容に変更を加えれば、他の施設への応用も、可能である。
　これからの課題としてあげられるものは、誤入力された場合の修正方法である。キー操作をできるだけ少なくするため、入力した数値をシール印刷直前に確認・修正する機能は省略されている。従って、間違ったデータも登録されることになり、あとでデータファイルを開いて直接修正する作業が必要になる。この作業には、ある程度の、「MS-DOS」と「dBASEⅢ」の知識が要求される。この修正機能をプログラムの中に追加することによりある程度解決可能である。
　造影検査の集計業務に関しては省略したが、現在の入力は一般撮影の集計に用いているパソコンを使う為、空き時間に照射録から入力している。従って、省力化という点からはあまり改善されてはおらず、試験的運用の段階にとどまっている。
　又、「dBASEⅢPLUS」にはグラフ作成機能を持たない為、データコンバート等によって、他のソフトを用いて作成しなければならない。今後、パソコンのグレードアップにより「WINDOWS*5」が利用できる環境になれば、ウインドウズ対応データベースソフトの利用によりさらに使いやすい環境が得られると思われる。
　現在のシステムは、一般撮影部門のみで使用しており、パソコンはスタンドアロンの状態あるが、ＣＴ・ＲＩ等の他部門の管理もＬＡＮを構築することによって効率的に行えると考えられる。それには、ホストとしてのサーバーマシンの導入やクライアントの充実（ハードディスク・メモリの増設）、ネットワークＯＳの購入などが必要になり今後のテーマとして残された。
　今回のデータベースプログラムの作成、運用の経験は、今後予想されるＬＡＮ構築時に生かされるものと思われる。

６．結　語

データベースソフトを用いて、一般撮影部門の業務管理プログラムを作成した。
１日の業務終了時に集計業務を終わらせることができるようになり、省力化につながった。
集計データを用いて、月別集計、年度集計もできるようになり、手計算が不要になった。
ＬＡＮ構築によって、他部門（ＣＴ・ＲＩ・Ｘ線ＴＶ等）の管理も含めた効率的運用が望まれる。

文献

特集　病院情報システム最新事情，新医療 20,7,26-94,(1993)
Borland International：ｄＢＡＳＥⅢＰＬＵＳリファレンス．1,April,(1991)
Borland International：ｄＢＡＳＥⅢＰＬＵＳプログラミング.1,April,(1991)
鈴木良美，近藤佐由美：いちばんやさしいdBASEⅢPLUSプログラミング入門，ナツメ社
西尾忠彦：dBASEⅢ構造化プログラミング，日刊工業新聞社
安達良彦，鈴木孝昭　他：データベース入門から活用まで，LAN TIMES,Vol.4,No.8, SOFTBANK,(1994)

要旨

　データベースソフト（ｄＢＡＳＥⅢPLUS）を用いて放射線部業務管理プログラムを作成した。数多くある診療情報を我々が独自に考案したコードに変換した。
非能率的な手計算にかわり、業務の省力化が行えた。得られた集計データを用いて、業務量の算出が容易になった。ＬＡＮ構築による他部門の管理も含めた効率的運用が可能と考えている。

図表の説明 Fig.１　　Ｘ線データベース管理メインメニュー Fig.２　　Ｘ線データベース（一般撮影）使用ファイル概要 Fig.３　　ＩＤファイル，ＢＵＩファイルの構造 Fig.４　　部位コードの内容 Fig.５　　ＸＲＡＹファイルの構造 Fig.６　　名前シール印刷フローチャート Fig.７　　Ｘ線データベース管理　印刷メニュー Table.１　印刷出力結果例

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日本放射線技術学会北海道部会

データベースソフトを用いた業務管理プログラムの開発と運用

Development and operation of a management program using the data base software in our department of radiology

北海道社会保険中央病院 放射線部

秋元 聰、中島 詳、村上 茂樹

石ケ森 修、江本 貴、萩原 康司

SUMMARY

Key words: management program, data base software, code-number

１．はじめに

２．使用機器

３．方 法

４．結 果

1．ファイルの構成

2．印刷業務

3．集計業務

4．出力結果

５．考 察

６．結 語

文 献

要旨